アニサキス症の胃痛に効く?正露丸の効果と副作用
正露丸は100年以上前から使用されている常備薬です。
正露丸の主成分は防腐作用のあるクレオソートで、日露戦争のころから下痢止めなどに使われてきました。最近では、激しい胃痛を引き起こすアニサキス症に対して有効ではないかと期待されてもいます。
ここでは、正露丸の効果と副作用について見てみましょう。
目次
正露丸はどんな薬?
正露丸は腸の正常な運動を止めることなく、腸内の水分バランスを調整し、おなかを正常な状態に戻します。
特に、食あたり、水あたり、消化不良といった食べ物、飲み物が原因で起こる軟便、下痢およびストレス、かぜなどの原因で起こる軟便、下痢にすぐれた効き目を発揮します。
正露丸は、木(もく)クレオソートをはじめアセンヤク末、オウバク末、カンゾウ末、チンピ末などの生薬を配合し、水分を含んだやわらかい丸剤です。
添付文書には、軟便、下痢、食あたり、水あたり、はき下し、くだり腹、消化不良による下痢、むし歯痛などの症状に対して、効能を発揮すると記載されています。
正露丸の成分「クレオソート」とは
正露丸の主成分であるクレオソートについて詳しく見てみましょう。
木クレオソートと石炭クレオソート
正露丸の主成分である木クレオソートは、ブナやマツなどの原木を乾留して得られる木タールを精製した微黄色透明な液体です。
主に、医薬品として使用されており、正露丸・セイロガン糖衣Aの主成分として含まれており、グアヤコール、クレオソール、フェノールなどのフェノール系の化合物を含む生薬です。
日本薬局方(医薬品の規格基準書)には、「クレオソート」として収載されていましたが、「木(もく)クレオソート」に名称変更されました。
一方で、石炭クレオソートは、石炭を乾留する際に副生成物として得られるコールタールを蒸留した黒褐色の液体です。
カーボンブラックの原料、枕木や電柱などへの木材の防腐剤として使用されていて、工業用クレオソート、クレオソート油ともいい、日本工業規格で規定されています。
一部の石炭クレオソートには、ベンゾピレンが含まれているため、家庭用品規制法で使用が規定されています。
クレオソートに期待される効果
木クレオソートは紀元前にミイラの保存に使用されたように、殺菌作用があり、食品の防腐剤や外用の消毒薬として用いられていたこともあります。
かつては木クレオソートの殺菌作用により、お腹にいる悪い菌が殺菌され、お腹の調子を整えると考えられていたこともありました。最近の研究では、木クレオソートは服用後に胃から吸収され、腸に届くのはごく微量で腸の細菌を殺すことはないといわれています。
そのため、木クレオソートを含む正露丸が、殺菌効果によってお腹の調子を整えるというわけではなく、腸管内の水分量を調節して体調の過剰なぜん動運動を正常に戻す作用によって、便中の水分を減らし軟便や下痢などの腸のトラブルを改善するものと考えられます。
クレオソートの副作用
クレオソートは、薬である以上副作用やリスクはあります。
下痢が続くからといって、長期にわたって飲むことはおすすめできませんし、用法・用量を守ることが重要です。
必要なときに薬を飲むことは一定の効果を期待できますが、必要ではないときに薬を飲むと悪影響を及ぼすこともあります。
急性の下痢症状の場合などは早く症状を改善させるために、本来の体の防御反応である「ウイルス・細菌を体外に排出する」ことが重要です。クレオソートの下痢止めを安易に服用すると治りが遅くなり、症状が悪化してしまうことがあります。
下痢症状が悪化する場合には、早めに専門医療機関を受診し、医師に相談しながら、指示に従って服用するようにしましょう。
正露丸はアニサキス症の胃痛に効く?
アニサキス症とは、イカやサバなどの魚介類の寄生虫であるアニサキスを摂取することで発症する病気です。
アニサキスは加熱や冷凍に弱いため加熱した食品や冷凍した食品であればアニサキスが寄生していても問題となることはありませんが、生きたアニサキスが寄生した食品を生食すると、さまざまな症状が引き起こされます。
代表的な症状は、アニサキスが胃の壁に侵入しようとすることによって引き起こされる強い上腹部痛、吐き気、嘔吐などの症状です。
正確な症例数を確認することは難しいですが、日本国内でも1年間に少なくとも2,000~3,000件のアニサキス症が発症しているとする報告もあり、主に胃で発生すると言われています。
アニサキスが胃を通って腸に流れ落ちた場合は腸の壁に侵入しようとすることで腹痛、吐き気、嘔吐などの症状以外にも、重症な場合には腸に穴が開く、あるいは腸閉塞を引き起こす場合があります。
正露丸に期待される効果
アニサキス症の対処法としては、消化管粘膜上の虫体を確認したうえで鉗子を用いてアニサキスを摘出(内視鏡検査をおこなって内視鏡下に鉗子で摘出)するしかなく、アニサキスに特異的で、かつ効果的な治療薬(薬剤)は今のところ存在していないと言われています。
そうした中、アニサキスの予防に正露丸が効果的だと言われています。
正露丸の内服によるアニサキス症治療例では、アニサキス症患者が正露丸を経口摂取したところ、わずか数分で強度の上腹部痛を改善させることができたと報告されています。
胃アニサキス症の発症が懸念される場合、一般家庭の常備薬である木クレオソートを有効成分とする組成物(正露丸)を服用することで、原因となるアニサキスの運動を抑制するとともに、代表的な消化器症状などを軽減させることが期待できると考えられています。
正露丸を利用するときの注意点
正露丸を服用する際には、他の下痢止め薬、特に腸の正常な運動を抑制する薬剤と一緒に服用しないようにしましょう。
その他の薬やサプリメントについては、これまで問題となった報告はありませんが、使用の際に医師や薬剤師に相談すれば安心です。
今までに正露丸によるアレルギー症状(発疹・発赤、かゆみなど)を起こしたことがある方、5才未満の乳児・幼児は服用できません。
また、正露丸が皮膚に接触すると皮膚炎などを起こす危険性があることから、正露丸の添付文書には、「本剤が誤って皮膚に付着した場合は、せっけん及び湯を使ってよく洗って下さい」と記載されています。皮膚との接触には注意が必要です。
まとめ
これまで、正露丸の成分や期待される効果、副作用などを中心に解説してきました。
正露丸に含まれる木クレオソートは、常用してもよい量と害になる量(中毒量)との差が少ないという問題があります。症状が改善しないからといって連続服用すれば、中毒量に容易に達することになるので十分注意しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。