蕁麻疹の薬の話…抗ヒスタミン薬の働きと効かない場合の対処法
蕁麻疹が出ると非常に痒く、 何かの薬を使いたいと思われる方も多いことでしょう。 特に一過性のものではなく長い 期間に渡って蕁麻疹が続く慢性蕁麻疹の場合には何らかの薬が必要になることが多いです。 ここでは蕁麻疹に対してどのような薬が使われるのか解説します。
抗ヒスタミン薬とは
蕁麻疹をはじめとした アレルギー疾患に対しては 抗ヒスタミン薬が使用されます。 では 抗ヒスタミン薬とはどのようなものなのでしょうか。
ヒスタミンと蕁麻疹の症状
人の皮膚は表皮層、真皮層、皮下組織という三相構造をしています。真皮層という層には、様々な器官が揃っています。 その中に肥満細胞という細胞があります。肥満細胞というのはアレルギーなどの時に作用する細胞で、何らかの刺激があると細胞の中にあるヒスタミンという物質を放出するのです。
ここで言う刺激というのは、アレルゲンが直接作用することもありますし、 皮膚に外的な刺激が与えられる場合でも刺激として感知されます。
ヒスタミンが放出されると、ヒスタミンは血管に作用します。ヒスタミンが作用した血管は 拡張し、また血管の中から水分が漏出しやすくなります。水分が血管の外に漏出してしまうと、皮膚の真皮層に多くの水分が貯留することになります。これによってぷっくりと皮膚が腫れてくる蕁麻疹ができるのです。
また、 蕁麻疹が起こると、ヒスタミンの刺激で真皮層にあるセンサーが刺激され、かゆみを感じるようになります。これが 蕁麻疹が起こった時に体の中で起こっている出来事です。
このヒスタミンというのは、血管に作用する時に受容体に結合します。 受容体というのは、細胞の表面にある鍵穴のような存在です。その受容体に結合する特異的な物質が結合すると、受容体自体が様々な機能を発揮して、細胞の働きを決めてくるのです。
ヒスタミンの受容体は、ヒスタミンのみが結合することができる構造をしています。そして ヒスタミンが結合すると、血管を拡張や水分が漏出しやすくなる などの作用が出てくるというわけです。
抗ヒスタミン薬の働き
このように受容体に物質が結合すると作用が起こってきますので様々な薬はその機能を利用します。
例えば受容体に作用する薬を作ることもあります。そうすると体の中で産生される物質だけではあまり細胞が働かないような時に、薬が細胞を働かせることで作用を得るという薬になるのです。これを作動薬と言います。
一方で受容体に物質が結合しないようにする薬もあります。物質が結合してしまうと作用が起こってしまうので先回りして受容体に結合し、物質が受容体に結合できなくする薬です。 このような薬を拮抗薬と言います。
アレルギーではヒスタミンが受容体に結合してしまうことでいろいろな症状が出てきますから、 ヒスタミンが受容体に結合しないようにするのが目的の薬が作られます。 それが抗ヒスタミン薬なのです。
抗ヒスタミン薬が用いられる疾患
抗ヒスタミン薬は、ヒスタミンが悪影響を及ぼすような様々なアレルギー疾患に使用されます。 蕁麻疹はもちろん、花粉症や気管支喘息、食べ物によるアレルギーなどにも使用されます。
これらの疾患はいずれも、 ヒスタミンが作用することによって症状が起こっています。 ヒスタミンをブロックしてやることで症状の改善が期待できるのです。
第1世代と第2世代の違い
抗ヒスタミン薬は、前述の通りヒスタミンをブロックして作用を減弱させるものでした。
確かにそれはアレルギーを抑えるのに必要なことではありますが、実はヒスタミンはアレルギーの作用だけを持ってるのではありません。
ヒスタミンは脳において意識を保つ、覚醒状態を保つために使用されている物質でもあります。ヒスタミンが作用しなくなると眠気が強く出てくるのです。
そのため抗ヒスタミン薬を使用すると眠気が出てしまうという問題がありました。
このような眠気がよく出てくるような抗ヒスタミン薬を第1世代の抗ヒスタミン薬と言います。
眠気を解決するように開発されたのが 第2世代の抗ヒスタミン薬です。
ヒスタミンの受容体は2種類あります。 アレルギーを起こすようなヒスタミンの受容体をH1受容体と言います。脳で覚醒状態を維持するために使用されているヒスタミンの受容体をH2受容体と言います。
いずれもヒスタミンが結合すると作用が起こってくるのですが、 構造に微妙な違いがあります。この違いを区別して、H1受容体にのみ結合するように作られたのが第2世代の抗ヒスタミン薬なのです。
H2受容体に結合して、覚醒のために必要なヒスタミンの刺激をブロックするということがないですから、第2世代の 抗ヒスタミン薬は飲んでも眠気は起こりにくいとされています。
現在では 多くの場合は第2世代の抗ヒスタミン薬が使用されることになっています。
蕁麻疹は抗ヒスタミン薬による治療が基本
蕁麻疹の場合、ほとんどの場合は抗ヒスタミン薬を内服するだけで症状が改善します。そのため蕁麻疹が起こったとなれば、まずは抗ヒスタミン薬が使用されます。第2世代が使用されることが多いです。
薬局で購入することもできるので、蕁麻疹が起こったとなれば受診をしなくても薬局で薬を購入して治療をするということも可能ではあります。
市販の抗ヒ スタミン薬としてはアレグラやアレジオンがあり、医療用と同じ量の成分が配合されています。 ただし、これらの薬の適用は花粉症などのアレルギー性鼻炎のみであることが難点です。すなわち蕁麻疹には適用がないということになります。
ですので蕁麻疹が出現した場合には自己判断で治療せずに皮膚科に相談するのが基本です。 夜間や休日などすぐに病院を受診できない場合には、薬剤師に相談して一時的に市販の抗ヒスタミン薬を内服することは考慮してもいいでしょう。
抗ヒスタミン薬が効かないときは?
抗ヒスタミン薬が効果がない場合には、まずは蕁麻疹の治療の第一歩を考えます。 蕁麻疹の治療の第一歩は、原因の除去です。何かに触れた後に蕁麻疹が起こったのであれば、触れないようにしましょう。
またストレスや疲労 なども蕁麻疹をひどくする原因となりますからなるべく安静にするようにします。
その上で 薬について考えていきます。抗ヒスタミン薬は1種類だけしかないわけではなく いくつも種類がありますから、種類を変えてみることで効果が見られる場合もあります。
薬を増量することも考慮されます。また、他の薬を追加することもあります。例えばH2受容体拮抗薬や抗ロイコトリエン薬などが考慮されます。全身に蕁麻疹が広く出て症状が強い場合にはステロイドを使用することも稀ながらあります。
2017年3月から、ランチ製の慢性蕁麻疹に対してゾレアという薬が使用可能になりました。 それまでは難治性の喘息のみにしか使用できなかったのですが、適用が拡大されたのです。