げっぷが多いのはなぜ?げっぷのメカニズムと関連のある病気

口を覆う女性
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げっぷの多くは特に気にする必要のない生理現象です。しかし、げっぷの頻度があまりにも多いと不安に感じるのではないでしょうか。

げっぷはどのようにして生じるのか、どのようなげっぷに注意が必要なのか、そして、げっぷに関連する病気にはどのようなものがあるのかを見てみましょう。

げっぷが出るメカニズム

口を覆う女性

げっぷは、胃の中に溜まった空気が食道から出てくることで起こる生理現象です。

食道と胃のつなぎ目には下部と上部の食道括約筋という筋肉があります。飲み込んだ空気が胃に溜まると、胃の上部(胃底部)が広がり、胃と食道の間をつなぐ下部食道括約筋が開いて、空気が胃から食道に上がります。

そして、上がってきた空気によって食道が膨れて上部食道括約筋も開き、げっぷとして排出されるというメカニズムです。

心配しなくてもよいげっぷ

笑顔の女性医師

げっぷが出ることは自然現象のようなものなので、通常であれば心配することはありません。

げっぷは誰にでも起こる現象で、身体に異変が生じているわけではない場合がほとんどです。

ただし、頻繁にげっぷが出たり、ものが飲み込みにくかったりする場合は要注意です。げっぷの症状が長引いている、あるいはげっぷに伴って胃もたれや胸焼けがするケースでは、関連のある病気が隠れている可能性がありますので、専門医療機関を受診しましょう。

げっぷと関連のある病気

げっぷと関連のある病気としては次のようなものが挙げられます。

逆流性食道炎

逆流性食道炎は、従来では日本人に少ない病気でしたが、近年の食生活の変化などに伴い患者数が増加しています。逆流性食道炎になると強い酸性を呈する胃液や胃で消化される段階の食べ物が食道に逆流し、炎症を引き起こすことによって、げっぷ、胸やけなど色々な症状を自覚します。

逆流性食道炎とストレスには密接な関係があり、過剰なストレスがかかることで自律神経障害が引き起こされて胃酸の分泌量や胃酸分泌の時期を変動させることで逆流性食道炎の発症につながると考えられています。

また、逆流性食道炎になりやすい背景である下部食道括約筋が緩む原因は、加齢のみならず食べ過ぎや早食いなどによる胃部内圧の上昇、あるいは肥満体形や衣服による締め付けなどに伴う腹圧上昇などが挙げられます。

肥満体型の人は、普段から脂肪分や炭酸飲料を大量に摂取していることが多い傾向が見受けられ、特に脂肪の多い食べ物の摂り過ぎは下部食道括約筋が緩む原因になります。

呑気症

呑気症は、別名で空気嚥下症とも呼ばれる病気で、げっぷの回数が増える、ガスが溜まっておならの回数が増える、お腹が張った感じがする、吐き気や腹痛がするなどの症状が認められます。

呑気症は10代で発症することもあり、症状に悩んでいる方の多くが20代や30代の女性であるといわれています。原因ははっきりとは分かっていませんが、ストレスなどが溜まっている状態の時に発症しやすいともいわれています。

その他にも食べるのが早い・口呼吸・姿勢の悪さ・奥歯を噛みしめる癖などが発症の原因になっている可能性もあります。 

胃潰瘍

胃潰瘍では、胃液中に含まれる塩酸やペプシンといった物質が、過剰に産生されて胃を保護している消化管粘膜を消化してしまう、あるいは胃粘膜を防御している因子が減弱することによって胃壁に潰瘍性病変を形成します。

胃潰瘍における自覚される症状の約9割は腹痛で、そのほとんどは上腹部のみぞおち周囲に感じる腹痛です。基本的には食後に痛みが出現しやすく、食事を過多に摂取しすぎると長時間に渡って腹痛が継続します。

胃潰瘍の70%以上においてピロリ菌が原因であると考えられていて、このピロリ菌に仮に感染したからといって胃潰瘍や胃癌が必ず発症するわけではありませんが、感染した人のほとんどに萎縮性胃炎が引き起こされると言われています。

根治的に除菌しない限りピロリ菌は胃内に生息し続けると考えられています。

また、胃潰瘍は通常では痛み止めとして処方されるNSAIDsと呼ばれる非ステロイド性抗炎症薬の長期服用している人でも発症しやすいと考えられています。

普段の食生活や食事習慣も胃潰瘍発症に大きくかかわっていて、暴飲暴食、寝る直前に食事を摂取する、よく噛まないで早食いする、刺激の強い香辛料などを始めとして胃を刺激するものを過剰摂取するなど、不規則な食生活を行うと胃潰瘍の原因となることがあります。

胃酸の分泌を促進する食べ物として焼肉、コーヒー、濃い紅茶や緑茶、アルコール、強い香辛料などが知られており、それ以外にも脂肪性の食品を好んで摂取していると胃潰瘍発症につながり、けっぷの症状が起こりやすいと考えられます。

食道裂孔ヘルニア

食道裂孔ヘルニアは、食道の上部が腹腔内に突出する状態を指します。

通常、食道は食べ物を胃に送るために胸部を貫通しますが、食道裂孔ヘルニアでは食道が食道裂孔を通り抜けて腹腔内に進出します。主な原因は食道裂孔の筋肉の弱さや開口部の拡大です。

食道裂孔ヘルニアでは、胸の中心に痛みや灼熱感が生じ、胃酸や消化物が食道に逆流することで起こるげっぷ、胸やけなどの症状がよく見られます。

食後に膨満感や満腹感を感じ、食べ物が胸や腹部に戻る感覚がありますし、食べ物や液体を嚥下する際に苦痛や窒息感を感じることがあります。

食道裂孔ヘルニアが進行すると、呼吸困難や喘息の発作を引き起こすことがありますし、胸部や上腹部に圧迫感や痛みが生じることがあります。

胃がん

胃がんの原因はさまざまであり、正常な胃の粘膜の細胞が変化することで発症します。

胃がんの特徴として、早期には自覚症状が現れにくいということが挙げられますが、げっぷや胃もたれなどの症状を認めることもあります。

進行した場合でも、目立った症状が現れないことも少なくありませんので、胃がんを予防的に早期発見および早期治療するためには、少なくとも年に1回程度は胃カメラ検査などを受けることが大切です。

胃がんの発生要因としては、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)の感染、過剰な飲酒歴、喫煙歴、食塩や高塩分食品の摂取などが挙げられます。

まとめ

これまで、げっぷが多いのはなぜなのか、げっぷのメカニズムと関連のある病気などを中心に解説してきました。

仕事中や授業中、人と話している時など、急にゲップが出そうになったり、お腹が張ってガスが出そうになったりして慌てたという経験をした人もいるでしょう。

食後にゲップが出ることはあっても、急にゲップが出そうになる、ゲップが止まらない等の症状がある場合は、逆流性食道炎、呑気症、胃潰瘍、食道裂孔ヘルニア、胃がんなど何らかの病気が潜んでいる可能性があります。

げっぷ症状が改善せずに心配な方は消化器内科など専門医療機関を受診して相談しましょう。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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