体に静電気をためない方法を紹介…冬場の肌の乾燥に注意

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冬になると静電気がよく発生します。ドアノブを触っただけでビリッとくることも多く、特に静電気体質の人は大変な思いをしているでしょう。ここでは、静電気をなるべく避けるためにはどうしたらいいのかについて、解説します。

静電気で痛みを感じる理由

まず静電気でどうして痛みを感じるのかについて解説しましょう。

そもそも静電気というのは、物質の中に溜まった電気のことを言います。私たちの体を含めて、身の回りのものには全て、プラスとマイナスの電気が含まれています。

通常であれば、この2種類の電気はどちらかに偏ることなくバランスが取れているため、電気は帯びていない状態です。ところが、服が擦れるなどの摩擦によって、プラスとマイナスのバランスが崩れます。このバランスが崩れた状態を静電気というのです。

このように、物質がプラスやマイナスに帯電している状態で近づくと、偏ったバランスを整えようとして電気を放出します。この時に電流が流れることによって人は痛みを感じるのです。

なお、人間はプラスに帯電しやすい性質を持っていると言われています。ドアノブなど金属はマイナスに帯電しやすくなっていますから、摩擦によって人の体にプラスの帯電が起こり、静電気を感じることが多いのです。

静電気と肌の乾燥の関係

肌が乾燥していると、静電気が起こりやすいと言われています。なぜなのでしょうか。

肌の構造と水分量の話

まずは肌の構造と水分量について解説します。

肌は、表皮、真皮、皮下組織の3層に分かれています。表皮はさらに、複数の層に分かれています。最も表面にあるのが角質という層で、この角層の部分では細胞と細胞の間を、セラミドという脂肪が占めています。セラミドは水分を吸着する役割も果たしていて角層全体で水分を蓄えています。

さらに、表皮よりもさらに表面の層には、汗と皮脂が混ざりあってできた皮脂膜という薄い膜があります。この膜は水分を弾く特徴があり、角層の中の水分をそこに留めるような役割をしているのです。

このように、肌は皮脂膜とセラミドによって肌の水分を保つ構造になっているのです。

しかし、皮脂膜は加齢など様々な理由で少なくなってきます。そうすると肌の水分が蒸発しやすくなり、セラミドに蓄えていた水分も失われてしまいます。このような状況を乾燥肌といいます。

肌が乾燥すると静電気が発生しやすい

水は電気を通します。そのため、水分が物質の表面に多くある湿度の高い状況では、静電気が発生しても素早く水が電気を分散させてしまうため、静電気による症状が起こることはありません。

しかし、肌を含めて環境が乾燥して湿度が低くなると、静電気が発生して周囲に放電しますから、静電気による症状をよく感じることになります。

また、空気中の水分が少ない状態が続くと、静電気が放電されにくいということもあります。放電されない電気はどんどん体の中に溜まってきますから、その状態で金属製のドアノブなど電気が流れやすいものを触ると、体に溜まっていた静電気がドアに向かって一気に電流として流れることによって、静電気を感じるようになるのです。

一般に、静電気は湿度20%以下、気温20°c以下になると発生しやすくなると言われています。冬場は静電気ができやすいというものももちろんですが、肌も乾燥しやすく、より静電気ができやすい環境です。

もともと肌が乾燥していなくても冬の乾燥した時期は静電気が起こりやすいですが、肌の乾燥が起こってくると余計に静電気が起こりやすくなってきます。

体に静電気をためない方法

静電気は誰しもが避けたいものです。ではどのような方法で静電気を避けることができるようになるのでしょうか。

肌の乾燥を防ぐ

まずは自分自身の体を調節するのが第一歩です。前述のように、肌の乾燥は静電気を発生させる大きな要因になります。保湿剤を使用するなどして、肌の乾燥を防ぐことが大切です。保湿剤を使用することは、不足している水分を補うだけではなく、肌を保護するためにも有効な方法です。

足首や手首、首筋などの、外気に触れやすい部分だけではなく、洋服に隠されているお腹周りや腰なども乾燥しやすい部分になります。またこれらの場所は、洋服との摩擦がよく起こる場所ですから、静電気が発生しやすい場所にもなります。しっかりと忘れずに保湿剤を塗るようにしましょう。塗るタイミングは、水分の気化によって乾燥がよりひどくなりやすいお風呂上がりに塗るのがいいです。

保湿剤の種類については薬局なので市販されている乳液やクリームなどでも十分効果があります。もし塗ってみて、それでも乾燥していると感じる場合には皮膚科を受診して、必要に応じて処方をしてもらうといいでしょう。

部屋を加湿する

こちらも前述の通り、環境の湿度が下がるほど静電気は発生しやすくなります。加湿器を使用して空気中の水分を増やすことで、静電気が生じても自然に放電しやすくなるようにするといいでしょう。

加湿器がない場合には、洗濯物を室内に干したり、水の入ったコップを部屋の中に置くなどの方法で、部屋の湿度を調節すると良いでしょう。

肌のためには、概ね湿度が50から60%ぐらいが適切と言われています。

柔軟剤を入れて洗濯する

柔軟剤を使うことによって、服の繊維による摩擦が少なくなり、繊維の表面に電気を逃がす層もできるので、衣類が帯電することを防ぐことができます。

柔軟剤の効果を十分に発揮するために、洗濯の際にはポイントがあります。

1つ目は、洗濯機の中に洗濯物を詰め込みすぎないことです。洗濯物があまりに多いと、柔軟剤が十分に行き渡らず、ムラができてしまいます。しっかりと細部まで柔軟剤が行き渡るように、やや少なめの洗濯物の量で洗濯をすることを心がけましょう。

2つ目のポイントは、柔軟剤を柔軟剤投入口にしっかり入れることです。柔軟剤は最初から洗濯槽の中に入れてしまうと、洗い流されてしまって十分に効果を発揮できなくなります。

柔軟剤投入口を使用して洗濯をすると、最後のすすぎの時に自動的に柔軟剤が投入されます。これによって、洗った後の衣類に柔軟剤の効果を付与することができますから、より効果的に静電気対策をすることができます。

ときどき放電する

溜まった静電気を一度に放電すると痛みを感じる原因となります。体に溜まった静電気を逃がすため、コンクリートの壁や木製のドアなど金属以外を先に触れてから、ドアノブなどを触れることによって静電気による衝撃を抑えることができます。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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