病院は何科?血管迷走神経反射になりやすい人の特徴と治療法

貧血やめまいを起こした女性
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立ち上がった時に急にめまいが起こったり、緊張すると意識が遠のいたりするようなことはないでしょうか。このようなことは、多くの場合、血管迷走神経反射という反射によって起こってきます。血管迷走神経反射とはどのようなもので、どのように対処したらいいのでしょうか。

迷走神経は副交感神経のひとつ

神経には、手や足を動かすために指令を伝える運動神経、皮膚や骨、筋肉などから痛みや触った感じなどを伝える感覚神経、そして、体の様々なバランスを整える自律神経系があります。

自律神経は交感神経と副交感神経からなり、交感神経が活性化されると、血圧が上昇したり、脈拍が早くなったり、瞳孔が開いたりなど、簡単に言えば戦闘態勢を整えるような神経刺激になります。一方で、副交感神経が活性化されると、脈は遅くなり、血圧も落ち着き、体全体がリラックスしたモードに入ります。

交感神経と副交感神経には、その走行に特徴があります。

交感神経は、脊髄から出ています。脊髄から神経が出て内臓に至り、内臓の機能をコントロールしています。

一方で、副交感神経は、骨盤の中に限って言えば脊髄から神経が出ていますが、骨盤よりも上の内臓やその他全身については、脳から神経が出ています。脳からは、13種類の神経がそれぞれ左右1対ずつ出ていて、その中には唾液を分泌したり、瞳孔の大きさを調節したりする副交感神経が含まれている神経もあります。

それらの脳神経のうちの一つが迷走神経です。迷走神経は、脳の中でも最も脊髄に近い延髄から出ています。延髄から出た迷走神経は、そのまま首を下の方に走行し、食道の周りを走行しながら、お腹へと至ります。その途中で様々な内臓にも神経の枝を伸ばし、お腹の中に入れば、様々な内臓へと枝を伸ばします。

このようにして、迷走神経は様々な内臓の動きを調節しているのです。

血管迷走神経反射とは

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血管迷走神経反射というのは、何らかの原因で、交感神経である迷走神経が強く活性化され、活動が優位になることです。

血管迷走神経反射の症状

迷走神経の活動が活発になると、先に解説したように脈拍が遅くなったり、血圧が下がったりします。少し脈が遅くなったり、血圧が下がったりしただけであれば特に症状は出ないことがありますが、多くの場合にはこのような反射が起こると、脳への血液の供給が不十分となります。

これにより、血の気が引くような感じを感じたり、冷や汗が出たり、目の前が暗くなったりといった症状が起こってきます。立ちくらみを起こしたり、ひどい時には意識を失ってしまったりするのです。

迷走神経は内臓にも分布していますから、迷走神経反射が起こった時には立ちくらみの症状だけではなく、吐き気や腹痛をはじめとした内臓が原因である症状も起こってくることがあります。

血管迷走神経反射のメカニズム

ではどのような原因で迷走神経が刺激されるのでしょうか。迷走神経反射の原因は、主に身体的要因や精神的要因、または環境的な要因があります。

身体的要因や精神的な要因としては、長時間立っていたり座っていたりするような姿勢、急に強い痛みを感じるような場合、疲れを感じていたり生理の時期であったり、不眠疲労恐怖などのストレスが加わるような場合、これらのことがきっかけとなって、迷走神経は刺激されます。

また環境的な要因としては、人混みや閉鎖的空間があります。このような環境下にあると、ストレスを強く感じ、迷走神経反射が起こることが多いです。

血管迷走神経反射になりやすい人の特徴

迷走神経反射は身体的な条件だけではなく、精神的な負担によっても起こってきます。精神的に負担を感じやすいような人が、迷走神経反射を起こしやすい人といえます。

例えば、もともと性格的に几帳面であったり、真面目であったりすると、予期しない出来事が起きた時に対応しづらく、ストレスを強く感じてしまいます。緊張しやすい人も血管迷走神経反射を起こしやすい人と言えます。

また体質的なものとして、女性に起こりやすいとも言われています。10代から30代ぐらいの女性が、最も好発する年代と言えます。

病院は何科?血管迷走神経反射の治療

では迷走神経反射を起こした場合には、何科を受診したらいいのでしょうか。そして、病院ではどのような治療を行うのでしょうか。

病院は何科を受診するのがいい?

意識を失う、あるいは失いかけるという症状から、脳神経に関わる診療科を受診した方がいいのではないかと考えるかもしれません。しかし、血管迷走神経反射は、脳自体には問題がありません。脳への血流が阻害されることによって起こってくるのです。

そのため、専門の診療科としては循環器内科が専門となります。心臓自体が、自律神経系によって非常に深くコントロールされていて、迷走神経の刺激によって一番に影響が出る臓器です。そのため、循環器内科は、血管迷走神経反射について専門性を持っています。

また、循環器内科を受診するもう一つの理由としては、血管迷走神経反射以外の病気を除外する必要があるからです。意識を失う、あるいは失いかけるというのは、心臓に何らかの病気がある可能性が否定できないのです。

特に大動脈弁狭窄症と言って、心臓から血液がまさに駆出されるところにある弁が狭くなっていると、少しの血の巡りが悪くなっただけで、十分に血液が駆出されなくなり、脳への血流が滞って失神してしまいます。

他にも失神の原因は様々ありますから、特に繰り返すような場合には、早めに循環器内科を受診するのがいいでしょう。

対症療法や生活指導が中心

血管迷走神経反射と診断された場合には、根本的な治療というものはありません。基本的には生活習慣を改めることによって、血管迷走神経反射が起こりにくい生活を続けることが求められます。

具体的には、長時間立ちっぱなしにならないようにしたり、激しい運動や脱水、飲酒、過度の塩分摂取、寝不足などを避けるようにします。

もし何らかの理由で他の薬剤を内服していて、薬剤が原因で迷走神経反射が起こっていると考えられる場合には薬剤の調節も必要になるでしょう。

これらの治療を試しても、失神を繰り返し、また心臓の動きが遅くなることを繰り返している場合には、ペースメーカーを留置する場合もあります。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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