肝臓の病気は何が原因?肝臓の病気の原因を知って早めに対処しよう
胃の調子が悪い、お腹が痛いなどと感じることはあっても、「肝臓が痛い」「肝臓が調子悪い」とは感じないかと思います。
肝臓は沈黙の臓器とも呼ばれ、病気になっても気がつきにくいことで知られています。しかし肝臓は最大の臓器であり、病気になると全身的に様々な影響を及ぼすようになります。そこで今回は肝臓についての基本的な知識と、肝臓の病気を引き起こす原因などについて漢方的な視点も織り交ぜながらお話していきます。
肝臓のはたらき
肝臓は右側の肋骨の下で骨に守られているように存在する、体の中で最大の臓器です。
そんな肝臓の主なはたらきは3つあります。
- 身体に必要なタンパク質や糖、脂質などの栄養素の合成・貯蔵
- 有害物質や毒などの解毒・分解
- 食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌
肝臓には体にある血液の4分の1が集まっていて、主に体の栄養吸収や代謝・解毒などに関わっています。例えば、食べ物から摂取した糖分が余った場合には万が一の飢餓状態に備えて肝臓にてグリコーゲンとして貯蔵されて夜間や空腹時などに放出します。
また、タンパク質などを含む食べ物を消化吸収しエネルギーとして利用し、残りの老廃物は肝臓にて解毒されます。人間にとって有害な毒物、有害物質、添加物、そしてアルコールや薬物なども肝臓で代謝されて解毒されることで身体に蓄積しないようになっています。さらに老廃物の一部は再び吸収されて肝臓で再利用されます。
肝臓と漢方の「肝」の関係
漢方においては「肝」は西洋医学の肝臓と似たような「血」を蔵する働きを担っています。一方漢方では「血」だけでなく、「気」の巡りを司るなどの働きもあると考えます。「肝」は気の巡りと関係が深いためイライラしたり、ストレスがたまると「肝」が乱れて不調が現れやすくなります。特に月経のある女性は「血」と関係が深いため、「血」を貯蔵する「肝」の不調が起こりやすいとも言われています。
西洋医学における肝臓の病気
肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれたり、「サイレントキラー」と呼ばれることもありますが、それは肝臓疾患はなかなか症状に気がつきにくい場合が多いからです。慢性肝炎では症状がほとんどないケースもありますが、進行して肝がんを引き起こすタイプの肝炎もあるため注意が必要です。
西洋医学における肝臓の病気の主な原因は「アルコール」と考えがちですが、実はウイルスが原因による「ウイルス性肝炎」が大半を占めています。肝炎ウイルスとしては、A、B、C、D、E型の5種類が確認され、A型・B型ウイルスは慢性化しにくいタイプです。
一方、C型肝炎ウイルスのように慢性化しやすいタイプもあり、肝炎といっても種類により症状の経過が異なります。
その他にも肝臓の病気には次のような種類があります。
脂肪肝、アルコール肝炎、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、薬剤性肝炎、肝硬変、自己免疫性肝炎、肝がん など
アルコール性肝炎、脂肪肝、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)などは、飲酒や生活習慣の乱れによる肥満などが原因で起こることが知られています。
また肝硬変は、こうした肝臓病による炎症が数十年にわたって持続し肝細胞が線維化して硬くなる病気です。進行すると肝がんになる危険性もあるため、適切な治療が必要です。
東洋医学における肝の病
東洋医学でいうところの「肝が悪い」とは、西洋医学における代謝や血液調節以外にも、情緒などに関係する自律神経や中枢神経、筋肉などの運動神経、そのほか眼などの機能性の病も指し、必ずしも肝臓という臓器が悪くないものも含まれます。
「肝」は主に「気」の流れを促す疏泄(そせつ)作用と「血」を蔵する作用があるため、それらが不調になると「気」「血」「水」の異常となって以下のような病証がみられるようになります。
「気」の異常
「気滞」(きたい)
肝は全身の「気」を隅々まで行きわたらせ、調節する機能があります。また「気」は滞りなく流れることで「血」や「水」の流れもよくしてくれます。さらに「肝」は「怒り」の感情やストレスなどの影響を受けやすい臓腑でもあるため、「肝」の働きが乱れると「気」の巡りが停滞した「気滞」(きたい)の状態となり、情緒不安定、ゆううつ感、胸脇部や乳房が張って苦しいなどの症状を引き起こします。
「気逆」(きぎゃく)
「気」は全身をバランスよく巡ることで正常な生理機能が営まれています。しかしストレスや怒り、不摂生などによって逆上するようになると「気逆」(きぎゃく)の状態となり、顔や眼が赤い、いらいらする、怒りっぽい、めまい、耳鳴り、頭痛などの症状を訴えるようになります。
「血」の異常
「血瘀」(けつお)
「気」の異常は「血」にも影響を与えるため、血の流れが悪くなって滞ると「血瘀」(けつお)となり、顔色がどす黒い、しみやあざ、くまができやすい、肩凝りなどの痛みの症状が見られるようになります。
「水」の異常
「陰虚」(いんきょ)
肝の液体成分である「陰液(いんえき)」が不足した状態です。潤し冷やす働きのある「水」が不足するため、眼の渇き、眼のかすみ、視力減退、手足の痙攣、口やのどの渇き、ほてり、熱感、のぼせ、寝汗などの「熱」の症状を示すようになります。
また肝は「血」を蔵す働きがあるため、陰液の一つである「血」が不足すると、視力低下、爪がもろい、脱毛、皮膚につやがない、筋肉がひきつるなどの症状が見られるようになります。
「湿熱」(しつねつ)
体内に生じた湿と熱が「肝胆」の臓腑に停滞して起こる状態です。「肝炎」も含まれます。胸脇部の痛み、口が苦い、食欲不振、吐き気や嘔吐、下痢や便秘、倦怠感、黄疸などの症状が出現します。
肝臓の病気は早めに気づくことが大切
肝臓の病気はなかなか症状となって現れないことが多く、症状が出た時には病気が進行してしまっていることも。そのため風邪をひいているわけでもないのに「だるい」「発熱」「食欲が低下」などの症状が続くようであれば、肝機能低下の可能性もあるため早めに医療機関を受診しましょう。
ただし漢方における「肝」の機能は西洋医学とは異なる部分もあり、また、まだ本格的な病気になっていない一歩手前の「未病」という状態でも自律神経や視力・筋の異常、イライラするなど情緒面の不調となって現れてくることがあります。漢方薬はこのような不調も改善し、本格的な病気に進行することを防ぐ働きもあるので試してみることをおすすめします。