肝臓が気になりだしたら漢方?!肝機能を助ける漢方薬とは

漢方基礎知識

肝臓の病気が進行している場合や重症のときには、西洋医学の治療を受けることが主流です。でも、「ちょっと肝機能が気になりだした」「アルコールを良く飲むから肝臓が心配」などのように、まだ病気になっていない「未病」の段階では漢方薬を使う方法もあります。そもそも、漢方において「肝臓」は非常に重要な役目を担っている臓器であり、漢方薬は肝臓の機能を整えることも得意としています。

そこでこの記事では、肝臓が少し気になっているという人におすすめの漢方薬についてご紹介します。また、一歩進んだ肝臓病において漢方薬を使う場合の注意点などについてもお伝えしていきます。

西洋医学の「肝臓」と漢方における「肝」

西洋医学でいうところの「肝臓」と漢方(中医学)における「肝」は、同じ役目を持っていますが、漢方では少し異なる部分があります。

西洋医学の「肝臓」は、血液を蓄える作用があると考え、漢方でも同じように「血」を貯蔵する臓腑として考えます。

さらに、解毒作用、タンパク質や糖、脂質などの栄養素の合成、消化吸収を助ける作用(胆汁の生成・分泌)などを担っている肝臓ですが、漢方では次のような役目があると考えます。

  • 栄養素の代謝や解毒
  • 精神活動の安定
  • 血液の貯蔵および全身への供給
  • 筋肉の動きの調整
  • 視力を司る

など

漢方では「肝」は「血」だけでなく「気」の全身への巡りである「疏泄(そせつ)」も司っていると考えます。肝が乱れると「血」および「気」の巡りも悪くなって、さまざまな不調を引き起こしやすいので注意しなければいけません。

「肝」が乱れるとどんな不調が現れる?

西洋医学では、例えば「ウイルス感染」や「アルコール」「薬剤」などが肝臓疾患の主な原因として挙げられます。

一方で、漢方では「ストレス」を大きな原因の一つとして捉え、結果として「気」や「血」の巡りが悪くなると考えます。

例えば、肝で「気」が鬱滞している状態になると、イライラや落ち込み、ヒステリーなどを引き起こし、女性では生理不順などに陥ることもあります。さらに進行すると「肝」に蓄えられている「血」を消耗してしまうこともあります。

昔から「肝を冷やす」「肝っ玉」という言葉があるように、感情や精神面と肝臓には深い関係があると考えられています。

「肝臓」と「肝」について西洋医学と漢方で根本的には少し概念に異なる部分はありますが、例えば「イライラする」「ネガティブになりやすい」「すぐに疲れる」「最近怒りっぽい」などの症状は肝臓の不調のサインということもあります。

特にストレスをためている人、怒りの感情が強い人は「肝臓」にダメージを与えやすいので注意したいところです。

肝臓が気になる時の漢方薬

小柴胡湯(しょうさいことう)

肝臓の病気に用いられる漢方薬としては肝臓に良いはたらきを持つ生薬である「柴胡(さいこ)」が入っているものが多く存在します。炎症を抑え、気分を鎮める効果があります。

例えば「小柴胡湯(しょうさいことう)」は、慢性肝炎や肝機能障害のほか胃腸障害などに良く使われます。また漢方的には肝気のうっ滞を改善する働きがあるためストレスや精神面からくる不調にも効果があります。

大柴胡湯(だいさいことう)

脂肪肝がある人には「大柴胡湯」が対応します。がっちりしタイプで便秘がち、中性脂肪やコレステロールが高いという人に適しています。

茵蔯蒿湯(いんちんこうとう)

肝臓病、特に黄疸(皮膚・目が黄色く染まる)のある人に適応となる漢方薬です。体内に湿と熱を溜め込み、熱の代謝がうまくいかないタイプ(湿熱)の症状に効果があります。

桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)

慢性肝炎や肝硬変に使用されます。瘀血を改善する漢方薬です。

一方、ストレスやイライラなど「肝」が昂ぶる症状に対しては、以下の漢方薬が用いられます。

抑肝散(よくかんさん)

「肝」の気の昂ぶりを抑えて気持ちを落ち着かせるため、イライラしがちだったり、不眠の人に用いられる漢方薬です。

アルコールの飲みすぎに効く漢方薬は?

アルコールを飲みすぎた時に、肝機能を高めて二日酔いを抑えるという目的で漢方薬を選ぶ人もいるでしょう。

生薬である「ウコン」を配合したドリンクなどを飲む人も多いですが、実は「肝」に働かせる漢方ではなく、「腎」に働く「五苓散(ごれいさん)」の方が効果が得られる場合も多いです。

肝臓の病気を防いだり、肝機能を高めたいという場合には、自分の目的や体質にあった漢方薬を選ぶようにしましょう。

肝臓病で漢方薬を使うときは適応と副作用に注意

肝臓の病気に漢方薬を使う場合には、薬が現在の病気の状態に適応するかどうかと副作用にも気をつけなければいけません。

脂肪肝の治療や、慢性肝炎および肝硬変などの治療で自覚症状の軽減のために補助的に漢方薬を使ったりすることはありますが、「肝がん」「肝性脳症」など重症な場合には、漢方薬による治療が適切でない場合もあります。

また、過去には小柴胡湯をインターフェロンと併用したケースで、間質性肺炎という重篤な副作用が相次いだことがあります。肝臓にとって良かれと思って服用していても、漢方薬も薬である以上は副作用を起こすことがあるため注意が必要です。

肝臓の病気の治療に漢方薬を使いたい場合は、担当の主治医と相談しながら決めるようにしましょう。

元気な肝臓を守るため漢方薬を役立てよう!

肝臓と漢方には深い関係があり、肝臓の病気にもさまざまな漢方薬が用いられます。

また、肝臓の病気にかかる以前に、肝臓が気になるという段階でも漢方薬を早めに使って対処していくことも可能です。

漢方薬を上手に取り入れて、大事な臓器である肝臓を守っていきましょう。

肝臓にいい漢方薬は非常に多くの種類があるので、自分で選ぶのは難しいかもしれません。医師や漢方の専門家に相談して、自分にあった漢方薬を選んでもらい安全に使用することをおすすめします。

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