「肝」はなぜ重要?婦人科系疾患やストレスとの深い関係と対処法

漢方基礎知識

「肝」は五臓六腑の中で、身体や精神に関係の深い非常に重要な臓器です。人間の構成要素である「気血水」の巡りが悪くなるのは「肝」の乱れが大きく関わっています。

例えば、イライラしがち生理不順に悩んでいるなどの悩みは「肝」の乱れが原因であることも。「肝」の重要性が分かると、日頃の体調管理もしやすくなるはずです。

そこで、今回は私たちが知っている肝臓とは異なる「肝」の特徴と乱れによって起きる不調についてお話ししていきます。また、「肝」の乱れを引き起こす原因とその対処法についても紹介します。

「肝」はなぜ重要?

肝臓といえば、西洋医学においては解毒や消化吸収、血液の貯蔵などに関わる臓器として知られています。

人間の体の中で最大の臓器であり、アルコールを飲みすぎると肝臓を悪くするという話は有名ですね。

でも、漢方における「肝」は、私たちが知っている肝臓とは少し違います。

五臓六腑の「肝」は主に次のような働きを担っています。

  • 血を貯蔵する
  • 気の巡りを司る
  • 筋肉の動きを司る
  • 目や爪に栄養を与える

肝には、全身に酸素や栄養素を送る「血」を十分に貯蔵させて、全身の血液量を調整する働きがあります。必要に応じて血が足りない時には血を供給して、血の不足を補っています。血は筋肉に栄養を与えるので、筋肉の動き、関節の動きなどの働きも支えています。

さらに、肝臓の働きとして大事なのが「気」の巡りを司る働きです。

「気」は「血」と「水」を全身に巡らせるための原動力でもあり、私たちの臓器や器官、経絡などが正常に動いているのは実は「気」のおかげです。これにより、食欲や睡眠、月経までもがコントロールされています。精神活動にも関係が深く、肝の「気血」が十分に流れると精神的にも安定しやすくなります。

ストレスが肝の乱れを引き起こす?!

「肝」は非常にストレスの影響を受けやすい臓器です。

漢方では7種類の異なる感情がそれぞれ五臓の「気」によって支配されていて、五臓に異常が出ると感情にも影響が起こります。逆に感情の高ぶりによっても五臓を痛めつけるようになってしまいます。

肝臓と関係が深いのが「怒り」の感情です。怒りが募りすぎると、肝気が逆上して、頭痛やめまいのなどの症状を引き起こします。

現代人が抱えているストレスも肝を痛めつける原因の一つであり、ストレスが肝を乱し、さらに肝が乱れることでイライラしやすくなったり、怒りっぽくなる傾向にあります。

肝の乱れにより起きる不調

西洋医学でいう肝臓の不調とは、いわゆる肝臓そのものがダメージを負っている場合を意味します。例えば、肝炎やアルコール性肝障害、肝硬変などがあります。

一方で、漢方でいうところの「肝」の乱れた状態というのは、必ずしも肝臓そのものがダメージを負っているとは限りません。

肝炎のように「湿熱」が「肝」にこもっている場合もありますが、例えば「気」が滞って情緒不安定、胸苦しさなどを感じることもあれば、さらに「気」が逆流して頭だけのぼせる、赤ら顔、怒りっぽいなどの症状が出てくることもあります。

肝の不調は漢方的に捉えると、肝臓だけでなく、心身の健康にも大きく関わっているのです。

月経不順や無月経も肝のトラブル?!

そして、意外に「肝」と関係が深いのが婦人科系のトラブルです。

子宮には多くの血液が流れているため、血と関係が深い「肝」とも深く関わっています。

ストレスにより生理不順や無月経を引き起こすことがありますが、それは「肝」のトラブルと考えることができます。

ストレスで「肝」による「気」の疏泄機能がうまく行かなくなることで、血が十分に巡らなくなり、生理不順になるのです。さらにダイエットなどで血が不足して、肝に蓄える「血」が消費されすぎると、経血量が減り無月経になってしまうこともあります。

肝の乱れを改善する方法

「肝」の働きが乱れると、まず最初にイライラしやすくなったり、目が疲れやすい、筋の異常などの症状が出ることがあります。精神的な情緒不安定から始まり、次第に悪化して本格的な病気に進行してしまう可能性もあるため、早めの対処が大切です。

対処法としては、まずは「肝」の働きを乱す原因となりやすいストレスを減らすことが大事です。

気分転換を取り入れて気の滞りを解消したり、体と心は繋がっているので適度な運動を行うと気の巡りが良くなります。過度な運動はストレスとなるため逆効果になるので、ヨガやウォーキング程度の軽めの運動が良いでしょう。

食材としては「気」の巡りを促してくれる香り高い野菜や果物、ハーブ類がおすすめです。セロリ、グレープフルーツ、ミントやパクチー、バジルなどの香りの良いものを取り入れましょう。アロマテラピーでリラックスするのも良い方法です。

またセルフケアだけでは対処が難しい場合には漢方薬を使う方法もあります。辛い自覚症状を和らげるだけでなく、未病と呼ばれる段階からケアしていくことで病気の予防にも繋がります。

「肝」をいたわって心と体の健康を維持しよう

漢方的な考えに基づくと、「肝」は心と体の全体に影響している大事な臓器です。現代人はストレスを抱えている人が多く、知らず知らずのうちにダメージを受けていることも少なくありません。

「肝」の乱れを放置していると精神的な問題を抱えるばかりではなく、本格的な病気を患ってしまうことも。なんらかの「肝」の乱れの兆候があれば、早めに自分自身の生活を見直して対処していくようにしましょう。

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