清肺湯ダスモックのせき・たんに効くしくみと効果
せき・たんがつらいことは、誰しも一度は経験したことがあると思います。せき・たんにはさまざまな原因があり、このうち気管支の汚れがある場合には「清肺湯ダスモック」という漢方薬が効果的です。この記事では、清肺湯ダスモックがせき・たんに効くしくみと効果について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
清肺湯ダスモックの特徴
ダスモック は「清肺湯」という漢方薬です。ダスモックは小林製薬から発売されている第2類医薬品であり、たんの多く出るせきや気管支炎に効果があります。
清肺湯は、16種類の生薬を組み合わせた処方で、古来から、粘り気の強いたんが切れにくいようなせきや、慢性的な呼吸器疾患などに使用されてきました。風邪による気管支の炎症だけでなく、喫煙によりダメージを受けた肺や気管支粘膜の汚れを取り除き、組織を再生させる働きがあるとされています。そのため、ダスモックはたばこ・排気ガスなどで、せき・たんが続く方にもおすすめの漢方薬となっています。
せきやたんが長引いてとまらない、たんがネバネバして切れにくく量が多い、といった症状や気管支炎に適応となります。
せき・たんに関するキーワード
漢方薬は、その時の身体の状態から処方を決めます。そして漢方医学では、それぞれの身体の状態について原因を考えるために、いくつかの理論を用います。本項では、清肺湯がせき・たんに効くしくみを理解するために必要なキーワードを紹介します。
気・血・水
漢方医学では、血液やリンパ液などの身体をめぐるものを「気・血・水」という概念で考えます。
気(き)はエネルギーを指します。身体をめぐり身体を温めます。しかし、身体が冷えると気の流れが滞ってしまいます。血(けつ)は、血液と似た概念であり、気と水で構成されています。身体を温める働きと、冷やし潤す性質があります。水(すい)は、身体から余分な熱を取り除き、乾きを潤します。水は三焦という通り道を流れます。
五臓六腑の肺・脾
五臓六腑とは、身体の各臓器・器官を指す概念です。せき・たんについて考える上で肺と脾が重要です。
肺は、鼻・のどなどを含む呼吸器全体と考えられています。これは水の流れをコントロールしており、三焦から腎へと水を導く働きがあります。また、腎とともに呼吸や排尿の役割も担っています。体表・汗腺と関係があり、体表の状態をコントロールしています。脾は、胃で消化した食物から栄養分を取り込む器官です。この栄養素から、気と水を作り、この2つから血を作り出します。また、脾は「湿」と「寒」に弱いという特徴があります。
湿と寒
湿と寒とは、外因性の病気の原因である「邪」のことで、それぞれ「湿邪」「寒邪」と呼ばれています。
湿邪は梅雨時期や湿気に多いところで身体に侵入する邪です。脾に侵入しやすく、食欲不振を引き起こします。寒邪は、寒いところで身体に侵入する邪です。冬場だけでなく、夏であってもクーラーに当たりすぎると寒邪に侵されます。湿邪と同じく、脾に侵入しやすい特徴があります。
せき・たんが出る理由
漢方医学では、せき・たんの症状が先に述べた「気・血・水」、五臓六腑の肺・脾、および湿・寒と密接に関係していると捉えます。
まず、せき・たんが出る原因として、脾の働きの低下があげられます。脾の働きが低下することで、胃から脾へ取り込まれるべき水が、胃にたまってしまいます。胃に水がたまると、水の通り道である中焦に湿が滞り、たんとなります。
さらに、脾の機能低下により水を産生できず、水の流れが滞ることにより、肺の潤いが低下します。肺の潤いが低下すると、肺が熱を持ち機能が低下し、肺の気が逆上して、せきになります。
せき・たんに効く生薬
上述の通り、せき・たんの原因の一つは、脾の機能の低下により生じた水湿が肺に及んで、たんとして溜まることが原因だと考えられています。そのため、清肺湯には脾の働きを補う生薬として、甘草(かんぞう)と生姜(しょうきょう)が含まれています。さらに、茯苓(ぶくりょう)が胃にたまった水を取り除きます。
また、肺の潤いが低下することも、せき・たんが生じる原因となります。清肺湯には、肺の潤いを補う生薬として、麦門冬(ばくもんどう)、天門冬(てんもんどう)、五味子(ごみし)が含まれています。
その他、せきを抑える生薬としては、桑白皮(そうはくひ)、貝母(ばいも)です。たんを切る生薬として、杏仁(きょうにん)、桔梗(ききょう)が含まれています。
その他の漢方薬のダスモック との使い分け
清肺湯の他にも、せき・たんに効く漢方薬はあります。本項では、清肺湯とその他の生薬との使い分けについてご紹介します。
麦門冬湯
麦門冬湯は、せきの中でもたんが少ない、いわゆる「乾いたせき」を抑えるために使われます。そのため、せきは強くても、たんは少なく出にくい場合が適応となるところが、清肺湯と異なります。
また、麦門冬湯は、胃の潤いが低下することによって肺も乾燥し、熱を持つことで生じるせきに用いられるため、清肺湯と比べると、胃を潤し、機能低下に対してアプローチする生薬が充実しています。のどが渇いていたり、せきがなかなか止まらない場合に適しています。
麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)
麻杏甘石湯には、麻黄(まおう)、杏仁、甘草、石膏(せっこう)が含まれています。清肺湯と共通している生薬は、脾の働きを補う働きを持つ杏仁と甘草です。一方、こちらの処方には、肺の熱を冷やし、潤いを与える作用のある石膏が含まれています。そのため、せきが出る風邪や、気管支炎、喘息発作などの炎症を生じている比較的急性期の症状に用いられます。
せき・たんの改善に清肺湯ダスモックを活用しましょう
せき・たんの主な原因は、脾の機能低下と、肺の潤いの低下です。清肺湯ダスモックは、脾の働きを補う甘草と生姜を、肺に潤いを与える麦門冬、天門冬、五味子が配合されています。
せき・たんに効く漢方薬には、清肺湯ダスモックの他にも、麦門冬湯、麻杏甘石湯もあります。漢方薬は、一人ひとりの体質や病状に合ったものをその都度選択し、使用することが大切です。どの漢方薬を選ぶべきか自信がない時には、漢方薬に詳しい医師・薬剤師に相談してみてください。