葛根湯(かっこんとう)の飲み方や効能について
目次
葛根湯が効果がある症状について解説
葛根湯(かっこんとう)はかぜのひきはじめに使われる薬として有名です。葛根湯は「葛根」「麻黄」「桂枝」など、計7つの生薬で構成されていますが、これらは体温を上昇させ、免疫力をアップさせるのに最適です。
体温が平常時から1~2℃上がるだけでも免疫力は5倍ほど上がります。まだ十分にかぜのウイルスが増殖していない段階で体を温め免疫力を上げることで、悪化する前に治してしまうのが葛根湯の基本的な用途です。
葛根湯を飲むタイミングはかぜのひきはじめがベストで、風邪の症状の中期~ピーク時に飲んでもあまり効果が出ません。なるべく発熱前に飲む必要があります。
また、葛根湯は効きやすいかぜと効きにくいかぜがあります。葛根湯は体温を上げるので、あまり発熱しないタイプに効きやすいのが特徴です。悪寒がしたり、鼻水や痰が透明で水っぽく、筋肉痛がするかぜには有効で、免疫力が上昇し、ウイルスと戦いやすくなります。
一方、高熱でのどが腫れたり頭痛がする、鼻水や痰が黄色っぽく粘りがあるタイプのかぜは、葛根湯には向きません。すでに体温が十分に上がっている状態でさらに熱が上がり、体力を無駄に消耗してしまいます。
肩こりや慢性頭痛にも使われる
葛根湯は肩こりや筋肉痛の解消に用いられます。「傷寒論」という伝統中国医学の古典にも記載されているほどで、体が冷えているときに肩こりを感じた場合に有効です。筋肉の緊張やコリをほぐし、利尿効果や気血の流れを改善し、肩こりを緩和します。
また、即効性があり、すぐに体を温めて発汗も促すため、慢性頭痛にもよく効果を発揮します。緊張性の頭痛や、目の疲れから来る頭痛、生理や排卵など、PMSによる頭痛などにも使用されます。
のどの痛みへの効果は?
残念ながら、葛根湯はのどの痛みの改善効果はあまり期待できません。のどの痛みはかぜが進行した後に起こるので、かぜの初期のタイミングで最も効果が出る葛根湯とは相性が悪いのです。また、かぜが関係していないのどの痛みにも効果が出にくいといわれます。
逆に、体が温まることによってせきが出やすくなったり、血流が良くなることでのどの腫れが悪化し、痛みが増す場合もあります。せきがひどい場合の葛根湯の使用は慎重に検討しましょう。
新型コロナ感染症への効果は?
新型コロナ感染症に対して、葛根湯が役立った例もあります。通常時は健康な成人や小児に、解熱や症状改善効果が見られました。
また、あくまで一例で少数のデータですが、葛根湯と小柴胡湯加桔梗石膏という漢方薬を組み合わせた結果、8割が投与後24時間以内に解熱、症状も軽快に向かったという例もあります。
ただ、葛根湯に含まれる麻黄には注意が必要です。発汗と熱を下げる働きがあり、特に感染初期に投与すると発汗で体力を消耗し、免疫力低下につながる可能性があります。ウイルスに対する抵抗力も弱まってしまう可能性があるため、感染からしばらく経ったタイミングで投与する必要があります。
副反応や危険性
漢方薬は西洋薬に比べると副反応リスクが低いといわれますが、まったく副反応が起きないというわけではありません。葛根湯は、吐き気や食欲不振、胃の不快感やかゆみ、発疹などの副反応が起きる可能性があります。
葛根湯には甘草が含まれていますが、大量に摂取すると「偽アルドステロン症」という、むくみや高血圧の症状が出ます。また、筋肉の痙攣や麻痺が起きる低カリウム血症になる可能性もあります。
また、葛根湯に含まれる麻黄は、交感神経を刺激するので心臓に負担がかかり、妊娠中の女性は子宮収縮の可能性もあります。
重い副反応はめったには起きないので必要以上に警戒する必要はありませんが、虚弱体質や胃腸の調子が良くない人など、もともと葛根湯があまり向かない体質もあります。また、一定期間服用して効果が無い場合は服用を中止し、医師や薬剤師に相談してください。
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葛根湯は「寒気のあるかぜによく使われます」
処方のポイント
軽い悪寒の感冒に用いられる桂枝湯に、発汗鎮咳作用をもつ麻黄、葛根を加えたものです。発汗により寒気を体外に排出することで、悪寒があり汗をかいていない感冒初期に適応します。首肩の張りや痛み、神経痛等に応用されることもあります。甘辛味で、温服が効果的です。
葛根湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
自然発汗がなく、頭痛、発熱、悪寒、肩こり等を伴う比較的体力のあるものの次の諸症:感冒、鼻かぜ、熱性疾患の初期、炎症性疾患(結膜炎、角膜炎、中耳炎、扁桃腺炎、乳腺炎、リンパ腺炎)、肩こり、上半身の神経痛、じんましん。
漢方的適応病態
表寒・表実。
葛根湯の組成や効能
組成:葛根12 麻黄9 桂枝6 芍藥6 生姜9 炙甘草6 大棗9
効能:辛温解表・発汗・舒筋
主治:外感風寒・項背部のこわばり
葛根湯の解説
本方剤は太陽病表実証の兼証にある処方で、外感風寒による悪風・頭痛・無汗・および太陽膀胱経の経気の流れが滞ることによって生じる項背部のこわばりを治療目標とします。
適応症状
◇悪風
外感風寒証にみられる主症状の1つです。風寒の邪気が侵入することによって衛陽(体表を防衛する陽気)が塞がれ皮膚や腠理を温煦できなくなった症状です。悪風は悪寒よりやや程度が軽いです。
◇無汗
寒は「凝滞・収斂」する性質がある。衛気が風寒の邪気を感受すると、腠理が閉じ汗は出口を失って、無汗となります。
◇項背こわばること几几
背中から首肩までが疑ってこわばる症状を言います。風寒の邪気の侵入によって、後背部を走行している太陽膀胱経の気が滞り、津液の分布も阻害されて筋脈が潤いを失います。
◇舌苔薄
表証であるため舌苔は厚くないです。舌質も変化していません。
◇脈浮
正気が体表の邪気と抗争するためにおこる脈象です。
処方分析
葛根は本方剤の主薬です。津液を上昇分布させて項背筋の硬直を緩和します。辛凉解表薬に属しており、清熱作用もあります。麻黄は発汗解表作用が優れ、外感風寒証による無汗症状に対しては必要不可欠のものです。
桂枝と芍薬は「桂枝湯」の主要組成部分です。薬性からみると、桂枝は陽薬、芍薬は陰薬に属し(一陽一陰)、一散一収の作用によって、体表の衛陽(衛気)と営陰(営気)のバランスを調和する薬対となっています。葛根と麻黄の解表作用を増強しながら体表の防御作用を調節します。
臨床応用
◇感冒
外邪の侵入によっておこる悪風、無汗、頭痛など(表実証)に用います。特に項背部のこわばりを診断の基準にすることができます。主薬の葛根は辛凉解表薬なので、外感風熱の初期にも用いることができます。
◇肩こり
葛根は肩こりの専門薬で、津液を上昇させ筋を潤し緩和します。温通血脈の桂枝柔筋止痛の芍薬が配合されているので外感症状をともなわなくても広く使用できます。
◇下痢
悪寒、発熱とともに、胃腸に熱が潜んでいるため下痢する、胃腸型感冒に使用することができます。葛根は脾胃に㷌経、清陽を上昇させることによって下痢を止めることができます。
◇発疹の初期
葛根には透疹(発疹を促して透発させる)作用があるので、蕁麻疹、麻疹、風疹などの発疹疾患の初期に用いられます。発疹が内にこもって充分に出ないとき+ 「升麻葛根湯」
かぜ症候群と葛根湯
かぜ症候群とは、急性の呼吸器感染症の総称であり、鼻腔,咽頭,喉頭、気管支が主として侵されることから急性上気道炎とも呼ばれる臨床的には鼻炎、咽頭炎、気管支炎から下気道の感染まで多くの病型があります。かぜ症候群の80~90%はウイルスによって起こります。ウイルスの種類は多く、代表的なかぜウイルスであるライノウイルスには110以上の血清型が存在します。また、いまだに病原ウイルスが確定されていないかぜ症候群もあることから、個々の原因を鑑別することは極めて困難です。
かぜ症候群に対する葛根湯の有効性
かぜ症候群患者に対する葛根湯の有効性の検討をした結果、全身症状のうち、悪寒、熱感、下痢では軽度以上の改善が80%以上に認められ、呼吸器症状のうち、くしゃみ、鼻汁、鼻閉、痰の切れなどで軽度以上の改善が60%以上に認めらました。また、疼痛症状のうち、肩こり、関節痛、筋肉痛では軽度以上の改善が80%以上に認められました。