乙字湯(オツジトウ)の下痢への効果やその他の効能
「乙字湯は瀉下作用があり、痔によく使われます」
処方のポイント
停留している熱を大便により体外へ排出する大黄、呼吸墨の熱を下げる黄芩、血液を補い血行を促進する当帰、内臓下垂に対応する柴胡・升麻、消化器を保護する甘草で構成されています。痔や便秘に適応します。内臓下垂にも対応するので、脱肛等にも応用されます。苦辛味です。
乙字湯が適応となる病名·病態
保険適応病名·病態
効能または効果
病状がそれほど激しくなく、体力が中位で衰弱していないものの次の諸症:キレ痔、イボ痔。
漢方的適応病態
(升提作用の有効である)脱肛、痔核の脱出。
乙字湯の組成や効能について
組成
当帰6・大黄1・黄芩3・升麻1・柴胡5・甘草3
効能
凉血活血・昇提。
主治
血熱血瘀・中気下陥
*涼血活血:寒涼性の薬物を用いて血分に潜伏している熱邪を清し、瘀血を取り除く治法です。
*昇提:内臓の下垂を上にひきあげる治法です。
解説
本方剤は江戸時代の医師、原南陽の経験方で、各種の痔を治療する専門処方です。
適応症状
◇痔
痔の発症病因は多いですが、本処方は熱と血瘀による痔に対して用いられます。飲食の不節制などによって熱が生じ、便秘となって腸を圧迫すると、血瘀が形成されます。そして、熱と瘀血が腸に滞ることによって、痔をひきおこします。
◇出血
熱邪が血熱を生み、血の流れが加速され、脈管の外へ出ると、出血がみられます。
◇疼痛
「郁血によって血の流れが滞り、伓通則痛」となって疼痛が生じます。
◇便秘
亢進した熱邪が腸の津液を損傷すると、便が硬くなり排出されにくくなります。
◇舌紅・苔黄
熱があることを示す舌象です。
◇脈数
血熱の存在を示す脈象です。
当帰は血分の代表薬で、瘀血をを取り除き、局部の腫れや痛みを緩和します。油性をもつ薬で、腸管を潤すことができ便秘に効果があります。大黄、黄芩、升麻は清熱解毒の効能をもち、血熱を清します。大黄は強い瀉下通便作用によって、便秘を治療すると同時に、当帰の活血去瘀作用を補佐し増強させます。升麻と柴胡は昇提作用によって、脱肛症状の病因である中気下陥を治療します。ただし中気の不足を補益することはできません。