長引く風邪に効果的な柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)の詳細

漢方事典

柴胡桂枝湯の効き目は?

柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)は、9種類の生薬を組み合わせた漢方薬で、かぜの中期から後期によく効く漢方薬です。微熱や腹痛のほか、頭痛や吐き気などにも対処できます。こじらせてしまったかぜに最適で、胃腸に症状があるかぜに処方されます。また、食欲不振にもおすすめです。

柴胡桂枝湯はストレス緩和に最適

柴胡桂枝湯は、胃潰瘍や十二指腸潰瘍のほか、堪能、肝炎などの疼痛が発生する病気に幅広く使えます。また、ストレス性の症状にも最適で、イライラや憂うつ感、不安、緊張など、自律神経の失調にも使用されます。

漢方の考え方に「身心一如」という言葉があります。身体と心はひとつであり、精神的な症状も身体に大きく影響します。そのため、精神症状、肉体症状を同時に治療、改善していきます。

柴胡桂枝湯は体質改善にもおすすめ

柴胡桂枝湯は慢性的なかぜや微熱、胃腸の不調や、アレルギー症状の体質改善にも用いられます。また、柴胡桂枝湯に多く含まれている柴胡という生薬は、肝に作用し、気滞(気が滞っている状態)を改善し、ストレス体質も和らげていきます。

また、小児の虚弱体質の改善も期待できます。数ヶ月から数年かけて長期服用します。西洋医学的には「虚弱体質」という名前の病気はなく、治療法も確立されていませんが、体質の改善はまさに漢方の得意とする分野であり、一定の効果が期待できます。かぜを引きやすい子や、精神的な緊張によるストレスが強い小児に向いています。

柴胡桂枝湯の副作用は?

柴胡桂枝湯によって起こり得る主な副作用としては、皮膚の発疹、かゆみ、発赤、頻尿や残尿感、排尿痛などがあります。また、まれにではありますが、間質性肺炎、偽アルドステロン症、肝機能障害などが起こる可能性も報告されています。異常がある場合、1ヶ月以上服用して症状に変化が見られない場合、医師や薬剤師に相談してください。

柴胡桂枝湯に即効性はある?

柴胡桂枝湯は比較的穏やかに効果が出る漢方薬で、基本的には即効性を期待する漢方薬ではありません。ただ、ストレス性の胃痛など、胃腸症状については迅速な効果を発揮する場合があります。

「柴胡桂枝湯は長引くかぜで、体力消耗したときによく使われます」

処方のポイント

小柴胡湯と桂枝湯を合わせたものです。結果的には小柴胡湯に、からだを温める桂皮と止痛効果のある芍薬甘草湯が加わった形になっています。感冒で悪寒と発熱の繰り返しがなかなか抜けず、関節に痛みがある等の症状に適応しています。甘辛味で、温服が効果的です。

柴胡桂枝湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

発熱汗出て、悪寒し、身体痛み、頭痛、はきけのあるものの次の諸症:感冒、流感、肺炎、肺結核などの熱性疾患、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、胆のう炎、胆石、肝機能障害、膵臓炎などの心下部緊張疼痛。

漢方的適応病態

1)太陽少陽合病。すなわち半表半裏証(少陽病)に頭痛、悪風、身体痛などの表寒(太陽病)を伴うもの。

2)肝鬱化火。脾気虚。痰湿。

柴胡桂枝湯の組成や効能について

組成

柴胡12 黄芩5 半夏5 炙甘草3 桂枝5 芍薬人参5 大棗5 生姜5

効能

和解少陽・解表

主治

少陽証・太陽証

解説

本方剤は「小柴胡湯」と「桂枝湯」の合方であり、原方薬量の半分を使用しています。体表の邪気がまだ除去されていない段階で、邪気の一部がさらに体内の肝胆経に侵入した病態に用いる処方で、太陽、少陽双方の邪気を除去して流通するものです。

適応症状

◇発熱
微悪寒:体表部に残っている邪気との闘争によっておこる症状です。太陽表証を代表する症状です。

◇関節痛
邪気が経路の気血の流れを塞いだため、「不通則痛」で関節・筋肉の疼痛を生じます。太陽表証の症状です。

◇悪心
肝胆経に邪気が侵入して、胆気が胃気の和降機能を失調させ、胃気が上逆するためにおこる症状です。

◇心下支結
心下部に存在するつかえ感、不快感のこと、硬くもなく、痛くもない症状で、少陽証の胸脇苦満の軽症といわれます。

◇舌苔薄白
邪気が体内に深く入っていないため、苔の変化はみられません。

◇脈弦あるいは浮
弦脈は少陽証を示し、浮脈は太陽証を示します。

処方分析

「桂枝湯」—–辛温解表(体表部の邪気を追い払う)

「小柴胡湯」—疏肝清肝(肝胆部の邪気を和解する)

本方剤は太陽・少陽両経の病証が同時にみられるときに用います。両経の症状が軽症なものに対する処方で使用薬量は各半量となっています。

臨床応用

◇風冒
和解少陽の作用をもつ「小柴胡湯」が入っているので、吐き気、胃のもたれ食欲不振など胃腸症状をともなうカゼ(悪寒、発熱、身体が痛い)に用います。

◇関節痛
温通血脈の桂枝、緩急止痛の白芍薬によって関節痛を治療します。「小柴胡湯」が配合されているので、食欲がない、口苦、胸脇苦満など肝胆気鬱症状をともなうときに効果があります。

◇慢性肝炎
「小柴胡湯」の疏肝清肝、桂枝の温通血脈、白芍薬の柔肝緩急止痛作用は、瘀血肝鬱に対して効果があります。慢性肝炎・肝硬変初期(肝脾肥大、疼痛などの症状)に用いられます。

◇神経症状
散風作用がある柴胡・桂枝が入っているので、風邪に起因する顔面神経麻痺に使用できます。緩急柔筋(痙攣症状を和らげる)作用をもつ白芍薬も症状改善の一役を担っています。疏肝清肝の「小柴胡湯」の併用により、鬱症、ノイローゼ、心身症、癲癇などにも応用されます。

◇胃炎
疏肝清肝作用のある「小柴胡湯」と、和胃の桂枝、芍薬、甘草が併用されているので、ストレスなどに起因する胃痛、胃炎(肝胃不和)に用いられます。

注意事項:上昇性、温性があるので、顔面紅潮、頭痛、高血圧など肝火上昇の病証には不適当です。

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