お腹が痛い時におすすめの15種類の漢方薬
腹痛の場合のチェックポイント
腹痛は消化器(広義には食道から肛門まで含まれる)の病気だけではなく、腎臓や尿路の病気、女性なら生殖器の病気まで含む広範囲な症状であります。それだけに、ひと口に「お腹が痛い」といっても、痛む部位や質、あるいは他の症状とのからみ方を分析してみなければなりませんん。
次に、そのチェックポイントをあげておきましょう。
①熱をはかる。寒け・ふるえも確かめます。
②吐きけがある場合は、吐いたものに血がまじっていないか、食物のこなれぐあい、どんな色をしているか、などを確かめます。できれば、吐いたものを医師にみてもらうのがよいです。
③便の状態をみます。とくに、子どもは表現能力がないから、痛みの質がわからず、便は重要な判断材料です。下痢をしていないか、ふつうの便よりやわらかい程度か、あるいは水のようにゆるいものか、便の色はどうか、血はまじっていないか。
④痛む場所(腹全体か、みぞおち中心か、へその辺りか、右上腹部中心か、左上腹部中心か、わき腹か、膀胱の辺りか)、痛みの質(はげしいものか、冷や汗が出るようなものか、シクシクという感じか)、痛みの経過(突然か、食事との関係はどうか、同じような痛みが長くつづくか)などを調べます。
以上を確認したうえで、医師に連絡します。
考えられる病気としては、ここでは、一般的な消化器の病気だけをあげることにします。
目次
お腹が痛い時に考えられる病気
急性胃炎の症状
おもに、胃に鈍痛を覚え、重くるしい感じです。ふつう、気分がわるくなる・むかむかと吐きけがする・食欲がなくなる・嘔吐するなどの症状があります。大人では、一般に熱はないです。嘔吐がひどくなり、下痢をするようだと、たいてい腸炎も併発しています。
胃・十二指腸かいようの症状
胃部の痛み・嘔吐・吐血・下血がおもなものです。痛みは、食事と関係していることが多く、食後三〇分ぐらいで起きるなら胃かいよう(潰瘍)、空腹時なら十二指腸かいようと考えてよいです。夜中に痛みが起きることもあります。部位はみぞおちを中心に、左上腹部のことが多いですが、かいようが深くなってくると、背中や肩にまで痛みを感じることがあります。
急性腸炎の症状
急に下痢が起こり、痛みをともなうことが多く、はげしければ発熱・嘔吐・頭痛などが起こります。起こる部位によって、症状はややちがい、小腸炎では食欲不振・発熱・へそ付近の痛み・舌苔などが多く、大腸炎ではさらに、しぶり腹・左下腹部の痛み・粘液血便などが加わることがあります。
胆のう炎の症状
急性のものは、発作的にみぞおちから右上腹部に痛みが起こり、吐きけ・嘔吐があり、発熱します。痛みはかなりはげしいもので、しばしば右背部、右肩へと痛みが放散します。熱は三八度から三九度に上がり、寒けやふるえをともないます。反射的に腸の運動が減退するため、便秘することもあります。慢性のものは、持続的に右上腹部がシクシクと痛むのが特徴です。
胆石症の症状
激痛・発熱・黄疸が三大症状です。痛みは、へその右上の部分に強烈に起こり、患者は七転八倒するほどの苦しみを経験します。俗に「胃けいれん」とか「癪」とよばれるもので、顔面蒼白となり、全身にあぶら汗を流します。
漢方は消化器の病気にはよく効く
腹痛を起こす病気には、しばしば重大なものが含まれているので、必ず医師の診察を受けます。たびたび発作をくりかえす人や、原病がはっきりわかっている場合は、医師と相談のうえ、次の処方を用いると著効をみることがあります。まず、胃炎・胃かいよう・十二指腸かいよう・腸炎の場合です。
お腹が痛い時に効く漢方薬
黄連湯(おうれんとう)
胃痛・圧迫感・嘔吐・口臭・舌苔・食欲不振があり、腹は緊張していて力があるもの。
半夏瀉心湯
胃痛は軽度で、食欲不振・吐きけ・嘔吐・下痢があり、みぞおち辺がつかえる人に。
大柴胡湯
胸が苦しく、みぞおちのつかえと抵抗があり、吐きけ・嘔吐・便秘があり、口が乾いて、舌に黄色の苔がみられるもの。
柴胡桂枝湯
右より元気なく、腹痛のある人に。
平胃散(へいいさん)
急性の消化不良に一般的に用います。
五積散(ごしゃくさん)
胃腸の弱い人の急性胃炎に一般的に。
安中散(あんちゅうさん)
胃に停水があって、甘味好きで、へその辺りに動悸があり、痛み、胸やけするものに。
三黄瀉心湯
体力があり、痛みと出血が長くつづき、便秘している人の止血によいです。
黄芩湯(おうごんとう)
下痢して、みぞおちがつかえ、腹痛がして、泥状便・粘液便が出るときに用います。
胆のう炎・胆石症には、胸脇苦満(前述参照)があるのが特徴で、柴胡剤を用います。
小柴胡湯
微熱があったり、悪寒や発熱をくりかえし、胸がつまって苦しく、みぞおちがかたく緊張し、口が乾き、食欲不振のものに用います。
柴胡桂枝湯
右よりも腹筋が緊張して敏感で、痛みをともなうものによいです。
柴胡桂枝乾姜湯
症状が長びいて、体力が弱まり、脈も腹もあまり緊張がなく寝汗をかき、大便もやわらかく、舌苔もなく乾燥するときに。
大柴胡湯
体力が充実し、便秘がち、胸苦しく、舌苔があり、乾燥する人に用います。
大柴胡去大黄湯
上の症状で、便秘しない人に。
芍薬甘草湯または芍薬甘草附子湯
痛みの発作のさいの鎮痛剤に。これは柴胡剤ではありません。
お腹が痛くなったときの応急処置
衣服をゆるめ、枕を低くして、横にさせます。ふつう腹と手足はあたためたほうがよいですが、吐血や下血があれば、みぞおちの辺りを冷やします。
吐きけがある場合は、頭を横に向けて、吐いたものが気管にはいらないように注意します。下痢している場合は、ぬるま湯・果汁などで水分の補給を。むやみに鎮痛剤を使用してはいけません。
民間療法
野菜のゴボウのおろし汁が効きます。盃に一杯ぐらいです。ブタのきも(胆のう)もよいです。
ゲンノショウコ二〇グラムを一日量とし、濃く煎じた熱いものを、吹きながら飲むのもよいです。