胃苓湯(いれいとう)に即効性はある?浮腫みへの効果と五苓散との違い

漢方事典

胃苓湯(いれいとう)は、中国の明時代の医学書、万病回春の泄瀉門(せっしゃもん)が出典の漢方薬です。消化器周辺の水分流通を改善する平胃散(へいいさん)と、身体全体の水分流通を改善する五苓散(ごれいさん)を合わせたものです。

胃苓湯の効果は?即効性はある?

胃苓湯は、体力が中等度の人向けの漢方薬です。主にお腹がポチャポチャして浮腫みがあり、食あたり、食欲不振、二日酔い、暑気あたりなどに処方されます。

甘辛味で、温服が効果的です。くわしい効果について見ていきましょう。

食あたり、水溶性の下痢などに

胃苓湯は、お腹が冷えて下痢になるタイプの急性胃腸炎に適しています。ポチャポチャと水っぽくなった胃腸の余分な水分を取り除き、食あたり、水溶性の下痢、腹痛、嘔吐などを改善していきます。

即効性があり、浮腫みの解消にも

胃苓湯に含まれる五苓散の成分は水分の滞りの改善に適していて、比較的即効性があります。利尿作用を早く発揮できるので、浮腫みの解消などにも用いられます。

胃苓湯と五苓散の違いは?

胃苓湯と五苓散は含まれている生薬が似ています。口の乾きや尿量の減少、浮腫みなどは共通しているものの、下痢がそこまでひどくなく、お腹の膨満感、腹鳴などがない場合には五苓散が、下痢などの諸症状が見られる場合は胃苓湯が適しています。

胃苓湯の副作用について

胃苓湯には甘草が含まれているので、ごく稀に、だるさや血圧上昇などを伴う偽アルドステロン症のような重い副作用が起こる場合があります。他の漢方薬との併用時、甘草の重複には気をつけてください。

もし服用後に異常を感じた場合は、なるべく早く医療機関を受診しましょう。

胃苓湯を構成する生薬

胃苓湯は、平胃散+五苓散で構成されています。不要な水分を取り除く蒼朮(そうじゅつ)、胃の機能を高める厚朴(こうぼく)、陳皮(ちんぴ)、発散作用のある桂枝(けいし)など、合計11種類の生薬を配合しています。

胃苓湯が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

水瀉性の下痢嘔吐があり、口渇、尿量減少を伴う次の諸症:食あたり、暑気あたり、冷え腹、急性胃腸炎、腹痛。

漢方的適応病態

湿困脾胃。すなわち、表証があり、水溶性下痢や浮腫を伴うもの。

胃苓湯の組成や効能について

組成

蒼朮2.5 厚朴2.5 陳皮2.5 沢瀉2.5 猪苓2.5 茯苓2.5 白朮2.5 桂枝2 生姜1.5 大棗1.5 甘草1

効能

温化寒湿・健脾利水

主治

脾胃不和・湿滞水盛

解説

胃苓湯は運脾燥湿、和胃の「平胃散」に、利水滲湿の「五苓散」を加えた処方です。
利水滲湿の作用が強化され、水湿が停滞することによって生じた下痢症状を治療します。

適応症状・処方分析

「平胃散」と「五苓散」を参照してください。

臨床応用

◇下痢

体内の水温を除去する作用が強く、効果も早いでしょう。
特に夏から秋に多い暑気あたり、食あたりで、湿熱より寒湿に属する下痢に適します。
慢性の下痢にも用いられます。

◎疲労、無力など牌気不足の症状が強いとき+「六君子湯」(健脾化痰)

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