茵陳五苓散(いんちんごれいさん)は蕁麻疹、皮膚掻痒症、二日酔いにも

漢方事典

茵陳五苓散(いんちんごれいさん)は、東洋医学の古典「金匱要略(きんきようりゃく)」に収載されている漢方薬です。体力が中等度くらいの人に適している処方で、主に蕁麻疹によく使用されます。

利尿作用のある漢方薬の五苓散(ごれいさん)に、肝臓の機能を改善する茵陳蒿(いんちんこう)を加えたものです。

茵陳五苓散の効果は?

茵陳五苓散は、排尿痛、持続する血尿等に適応し、蕁麻疹、むくみ、二日酔いにも応用されます。甘辛味で、温服が効果的です。

蕁麻疹やむくみを伴う皮膚掻痒症に

茵陳五苓散は、抗ヒスタミン剤とともに蕁麻疹に用いられることがあり、とくに、皮疹が抑えられていても消えない場合などに向いているとされています。また、茵陳蒿には止痒作用があり、むくみを伴う皮膚掻痒症にも適しています。

吐き気や嘔吐にも用いられる

茵陳五苓散は、口が渇き、水分が滞っているタイプに適しています。体内の余分な水分をスムーズに排出し、吐き気、嘔吐、二日酔いなどの症状を緩和します。

茵陳五苓散の副作用について

漢方薬は副作用リスクが低いといわれますが、まったく副作用が起こらないというわけではありません。

茵陳五苓散を服用して起こる可能性がある副作用としては、胃の不快感、吐き気、食欲不振のほか、発疹、発赤、かゆみなどがあります。

もし服用後に異常を感じた場合は、すぐに服用を中止し、なるべく早いうちに医療機関を受診してください。

茵陳五苓散を構成する生薬

茵陳五苓散は、黄疸に処方される茵陳蒿、利尿作用のある猪苓(ちょれい)、頭痛やめまいを緩和する桂枝(けいし)など、計6種類の生薬で構成されています。

茵陳五苓散と五苓散は生薬に共通点が多い類似処方です。口が乾き、むくみが目立ちつつも、瘙痒感が見られる場合は茵陳五苓散を、そうでない場合は五苓散が適切です。

茵陳五苓散が適応となる病名・病態

保険適応病名・病態

効能または効果

のどが渇いて、尿が少ない次の諸症:嘔吐、蕁麻疹、二日酔いのむかつき、むくみ。

漢方的適応病態

脾胃湿熱。
すなわち、悪心、嘔吐、食欲不振、口が粘る、油料理や匂いで気分が悪い、口渇、軟便、腹部膨満感、尿量減少などがみられ、さらに悪化すると黄疸を伴います。

より深い理解のために

もともと黄疸に用いられることから、黄疸時の皮膚のかゆみに用いられたことから転じて、各種のかゆみを伴う病態に対して適用されるようになりました。
皮膚疾患に応用する場合には、レセプトの病名欄に注意しましょう。

湿潤した皮膚炎などに適用するときは、越婢加朮湯などとの鑑別を要します。

茵陳五苓散の組成や効能について

組成

茵陳蒿10 「五苓散」5(沢瀉、茯苓、猪苓、白朮、桂枝)

効能

利湿清熱・退黄

主治

湿熱黄疸

解説

茵陳五苓散は「五苓散」に茵陳蒿を加えた処方です。
利水滲湿作用が増強され、熱より湿が多い温熱証に適しています。
原文では「五苓散」の倍量の茵陳蒿を使用しています。

臨床応用

◇肝炎

肝炎にみられる強い倦怠感食欲不振、軟便、舌苔黄膩などの湿熱症状に長期的に使用することができます。

◎急性肝炎には+「茵陳蒿湯」(清熱利湿)

◎慢性肝炎で両脇が脹って痛むとき+「加味逍遥散」(疏肝・清熱・健脾)

または+「冠元顆粒」(活血化瘀・理気止痛)

◎慢性肝炎で微熱悪ふ疲労感があるとき+「小柴胡湯」(疏肝健脾)

◎脂肪肝には+「大柴胡湯」(清肝瀉下)

◇湿熱証

優れた清熱利湿作用があるので、頭重、身重、胸悶、胃満、微熱、悪寒、食欲不振、軟便、舌苔黄腻脈滑数などの湿熱症状に用いることができます。
臨床では、肝胆疾恵以外の原因不明の舶诲や慢性化したウイルス性疾患に用いてみるのもよいでしょう。

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