手足のほてりや更年期のホットフラッシュに三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)は、漢方の原典である医学書、「金匱要略」に収載されている漢方薬です。身体の熱を冷まし、とくに手足のほてりや湿疹、皮膚炎に用いられます。
目次
三物黄芩湯を構成する生薬
三物黄芩湯(さんもつおうごんとう)は、シソ科のコガネバナの根の皮を乾燥させた黄芩(おうごん)を中心に、 苦参(くじん)、地黄(じおう)の3つの生薬で構成される漢方薬です。
黄芩には抗炎症作用や清熱作用、 苦参には消炎作用や利尿作用、地黄には増血作用があり血行障害やホルモン治療によく用いられます。
更年期症状に効く?三物黄芩湯の効能は?
三物黄芩湯に期待できる効能について紹介します。
更年期のホットフラッシュに適している
ホットフラッシュは更年期によく見られる症状です。自律神経のバランスが乱れ、突然の発汗やほてり、のぼせなどを感じます。三物黄芩湯を服用すると手足のほてりを和らげることができます。三物黄芩湯は、ホルモン補充療法と併せて処方する場合もあります。
不眠や自律神経失調症に用いられることもある
三物黄芩湯は産後の女性の不眠や自律神経失調症に処方されることがあります。心身の過労で血が不足したり、熱がこもって「血熱(けつねつ)」状態になると、手足がほてって寝づらいといった訴えが目立ちます。
三物黄芩湯に含まれる黄芩、 苦参、地黄という生薬はいずれも熱を冷ます効能があるので、手足がほてるタイプの不眠症状に適しています。
三物黄芩湯を服用するときの注意点
三物黄芩湯の服用の注意点や、副作用の有無について紹介します。
胃腸虚弱な場合は長期服用に注意
三物黄芩湯に含まれる苦参や地黄は、胃もたれする場合があり、胃腸が弱い人の長期服用は気をつける必要があります。とくに地黄は消化吸収されにくいので、服用の際はきちんと医師に相談してください。
三物黄芩湯の副作用
三物黄芩湯で起こりうる副作用は、発疹や発赤、食欲不振や嘔吐、下痢などです。また、重大な副作用としては、間質性肺炎や肝機能障害、黄疸などがあります。重大な副作用が起こる可能性は稀なものの、異常を感じた場合はただちに医師の診察を受けてください。
処方のポイント
熱を下げ潤いを与える地黄、身体上部の熱を下げる黄芩、身体下部の熱を下げる苦参の3種の解熱作用生薬で構成。
頭痛はなく、手のひらや足の裏がほてる等の症状に適応します。
地黄が胃にもたれる場合があるので注意しましょう。
苦味があります。
三物黄芩湯が適応となる病名・病態
保険適応病名・病態
効能または効果
手足のほてり。
漢方的適応病態
陰虚火旺
三物黄芩湯の組成や効能について
組成
生地黄6 黄芩2 苦参4
効能
滋陰・清熱・凉血
主治
陰虛血熱
解説
三物黄芩湯は産後の発熱症に用いる処方です。
滋陰、清熱、凉血の作用によって、陰虚血熱の症状を治療します。
適応症状
◇微熱
正常な状態では陰と陽は平衡を保ち、相互に制約、協調しあっています。
陰血が虚して陽気がその制約を失うと、陽気は相対的に亢進状態となり虚熱が生じます。
発症原因が陰虚であるため、昼間より夕方からの微熱が多くみられます。
微熱でなく、ほてり、のぼせとして現れることもあります。
◇心煩・不眠
心熱の存在を示す症状です。
心は血脈をつかさどるので、血分に停滞した熱邪は心に移行しやすく、機能が乱れたときにあらわれる症状です。
◇咽乾
陰虛によって津液が不足して、咽を潤すことができない症状です。
◇舌紅・苔乾
血熱が存在するので舌はやや濃い赤を示します。
陰津不足により苔は乾燥します。
◇脈細数
陰血の不足を示す細脈と、血熱を示す数脈がみられます。
生地黄は滋陰・凉血・清熱の作用によって不足した陰血を補い、血分の熱を清します。
黄芩は優れた清熱作用をもち、滋陰作用のある生地黄と配合することにより、血分の熱をする作用が強められます。
苦参は清熱燥湿の作用があり、黄芩、地黄の清熱作用を補佐します。
燥性が強いため、陰を損傷する恐れもありますが、生地黄の滋陰作用が苦参の燥性を抑えることができます。
苦味は心に入って心熱を清し、心煩の症状を治します。
臨床応用
◇微熱・ほてり
陰血虚による発熱、ほてりの症状に用います。
とくに産後や月経期間中におこる発熱症に用いることが多いでしょう。
臨床では、陰虚火旺の結核による発熱にも用いられます。
◇神経症
陰虚血熱に属する心裥濘の諸症状(ふ煩、不眠、頭痛、ほてり、寝汗など)に用います。
◎心神不寧の症状が強いとき+「酸棗仁湯」(養血舒肝・清心安神)
◇湿疹
湿疹、アトピー性皮膚炎などの慢性皮膚疾患に用います。
局部の乾燥、搔痒感および皮膚紅潮などの陰虚血熱症状に適しています。
燥湿止痒作用のある苦参と、清熱解毒・燥湿作用のある黄芩が配合されているので、局部に滲出物がある場合も用いることができます。
注意事項
苦味の強い苦参と、滋潤性のある地黄は胃にもたれることがあるため、脾胃虚弱な方に処方する場合は注意しなければなりません。
処方の性質は寒性なので、寒証に用いられませんので注意しましょう。