脳梗塞の種類と原因、発症のメカニズムを解説

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脳梗塞という言葉はよく聞くけれど、詳しくはよく知らない……。そんな人も多いのではないでしょうか。

脳梗塞は、脳細胞へ血液を送る血管がつまることで脳細胞が死んでしまう病気です。

脳梗塞にはいくつもの種類があり、発症機序(発症の仕方)と臨床病型(画像や症状での分類)で分けて、それらの組み合わせで病型診断を行います。

ここでは脳梗塞の種類を理解するために、発症機序と臨床病型について詳しく解説します。

脳梗塞の発症機序による分類

脳梗塞は発症機序の違いによって血栓性、塞栓性、血行力学性に分類されます。

血栓性

脳の動脈硬化が徐々に進行すると血管が次第に狭くなります。動脈硬化が進むと血流に淀みが生じて凝固しやすくなり、血栓が付着していき、最終的に血管が閉塞してしまうのです。

この過程では神経症状が出たり治ったりするという動揺する症状が見られることがあります。症状は緩徐に完成されていき、進行、動揺することが多いとされています。

塞栓性

大動脈や頸動脈でできた血栓がはがれ、これが脳動脈に流れて行って血管を詰まらせることがあります。

また心房細動などの不整脈により、心臓内の血流の澱みで生じた血栓が剥がれて脳の血管に流れていき、血管を閉塞することがあります。

こうした塞栓性は血栓性とは異なり、いきなり血管が詰まり閉塞するというように症状が突発的に起こります。

血行力学性

ショックなどによる全身血圧の急激な低下や心拍出量の低下が原因となり、脳局所まで血流を送ることができず、脳梗塞を生じるものです。

脳血管に特に閉塞や高度狭窄がなくても、このような機序にっても脳梗塞が発生します。心停止時に生じる脳梗塞はこの機序によるものです。

脳梗塞の臨床病型

脳梗塞は臨床病型の違いによって主にラクナ梗塞、アテローム血栓性脳梗塞、心原性脳塞栓症に分類されます。

ラクナ梗塞

「ラクナ」は、ラテン語で「小さなくぼみ」という意味です。その名の通り、直径15mm以下の小さな脳梗塞のことを表します。

脳には、穿通枝(せんつうし)と呼ばれる太い血管から枝分かれして脳の深い部分に酸素や栄養を送り届ける直径100~300μmの細い血管があります。

ラクナ梗塞は、この穿通枝の先が詰まって引き起こされます。特に高齢者や高血圧の人に起こりやすい疾患となっています。

アテローム血栓性脳梗塞

アテローム血栓性の脳梗塞は、ドロドロした粥状のアテロームによって動脈が狭くなることが原因で生じます。

脳の中でも直径が5mmから8mmの太い動脈や頸動脈がつまることによって起こります。太い動脈がつまると、その血管から栄養を受けている脳の範囲が広いため、重症化しやすいのが特徴となっています。

動脈硬化の危険因子である高血圧、高脂血症、糖尿病などを持っている中高年に起こりやすいと言われています。

また、このタイプの脳梗塞は、前触れである「一過性脳虚血発作(TIA)」を生じていることが比較的多いとされています。

症状が一時的に現れた後によくなった場合でも、まずは病院でしっかりと検査してもらいましょう。前触れで治療できれば、脳梗塞を起こさずに後遺症なく生活することも十分可能です。

心原性脳塞栓症

心原性脳塞栓症は、心房細動により心臓の中の血流の澱みで形成された血栓が脳へ向かう頚動脈や椎骨動脈へと流れ込み、脳の血管まで到達して、血管を閉塞させます。

脳内の太い血管を詰まらせるので、突然発症して意識障害など重篤な神経症状を招き、死に至ることもある、危険性の高い脳梗塞です。

心房細動などの不整脈や心臓弁膜症などの心疾患がある人に起こりやすいので、動悸などを感じている人は一度病院でしっかりと検査して不整脈がないかどうかを確認してもらいましょう。

以上のように臨床病型について見てきました。それぞれの頻度は、ラクナ梗塞31%、アテローム血栓性脳梗塞33%、心原性脳塞栓症28%、その他の脳梗塞8%と報告されています(2015年の脳卒中データバンクによる脳梗塞患者72777例の統計)。

脳梗塞の原因(危険因子)

脳梗塞の主な危険因子としては、加齢に加え、高血圧、糖尿病、脂質異常症、心房細動、喫煙、飲酒、全身の高い炎症状態などがあります。

高血圧

高血圧は脳梗塞の発症に対して最大の危険因子となっています。日本では、収縮期血圧160mmHg以上の脳梗塞の発症リスクは3.46倍、拡張期血圧95mmHg以上では3.18倍と言われています。

目標血圧値は140/90mmHg未満であり、降圧治療をすることで脳卒中の発症が約30%減少すると言われています。

血圧は徐々に高くなるもので、特に症状はないため気づかずに高血圧になっている方も多いです。病院には血圧測定器が設置されています。血圧測定器を持っていない方は、病院を受診した際に血圧を測定してみてください。

糖尿病

中高年になって発病する糖尿病の多くはインスリンの働きを感じにくくなる2型糖尿病です。

2型糖尿病では血糖の管理が大変ですが、血糖の管理そのものが脳卒中を予防するという因果関係は明らかにはなっていません。

糖尿病の方は血圧管理をより厳重に行わなければならず、血圧130/80mmHg未満を目指します。

脂質異常症

血液中の脂質は血管を詰まらせる原因になり脳梗塞が発症する危険性が高くなります。総コレステロール値が1nmol/L(38.7mg/dL)増えると脳梗塞の発症率が25%増加することが明らかになっています。

運動療法や食事療法で改善する場合もありますが、なかなか改善が乏しい場合は、早急に薬の導入をしましょう。脂質異常症患者に薬を使って治療した場合、脳卒中の発症頻度が23%低下するとの報告があります。

ご自身の血圧と血清コレステロールの値を適宜計測し、脳卒中のリスクはないか確かめてみましょう。

喫煙

喫煙は脳梗塞・クモ膜下出血の危険因子となりますのでやはり禁煙が望ましいです。また受動喫煙も脳卒中の危険因子になります。

飲酒

大量飲酒の習慣は脳梗塞の発症リスクを高めます。少量から中等量の飲酒(アルコール1~149mg/週、1本あたり350mlのビールの場合は週6本程度が目安)では脳卒中の発症率が低下すると言われています。

アルコール450mg/週以上の大量飲酒では全脳卒中の発症率は68%増加します。脳卒中予防のためには飲酒は中等量にとどめておきましょう。

いかがでしたでしょうか。脳梗塞の種類や原因について解説してきました。脳梗塞の危険因子が何かを理解し、注意しながら生活をすることで発症のリスクを十分に下げることができます。

ご自身やご家族に危険因子があるようなら、それらを回避していくことが将来の不安の軽減につながるでしょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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