帯状疱疹と帯状疱疹後神経痛の症状と、やってはいけないこと
帯状疱疹は、皮膚にブツブツが帯状にできて強い痛みを伴う病気です。
症状の出方や、治癒するまでの経過に特徴があり、発疹が治癒した後にも痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」を引き起こすことがあります。
ここでは帯状疱疹の症状と、やってはいけないことについて詳しく解説します。
目次
帯状疱疹の症状の特徴
帯状疱疹を発症させる水痘・帯状疱疹ウイルスの初回感染では水痘として呼吸器感染症を主とした症状が見られます。
帯状疱疹は、神経細胞の中に残っている水痘・帯状疱疹ウイルスが急に増殖を始めることで発症します。この増殖は、主に何らかの原因で免疫力が低下したときに起こります。
帯状疱疹の症状の特徴を見てみましょう。
神経の走行に合わせて広がる
神経細胞の中に存在したウイルスは、増殖を始めると神経細胞から出ている神経線維に沿ってどんどん広がっていきます。ですので、帯状疱疹の症状は神経の走行に合わせて広がりを見せるのが特徴です。
特に感覚を伝える神経の細胞の中にウイルスは存在します。感覚を伝える神経は胸部では肋骨に沿って、腹部では肋骨に平行に走行します。症状がその感覚神経に沿って起こり帯状に広がるため、帯状疱疹と言うのです。
左右のいずれかに複数箇所の症状が出ることも
左右で別々の神経細胞が感覚を担当しますから、左右いずれかに起こることが多いです。
また、免疫が弱まりウイルスが活発に活動を始めるのは一つの神経細胞の中とは限りませんから、何カ所かに症状が起こることもあります。その場合は帯が何本か体に見られるようになります。
顔を含む全身に症状が出る
先ほど述べたとおり、帯状疱疹は感覚を伝える神経の細胞から広がります。全身の皮膚は全て感覚を持っていますから、全身の皮膚どこにでも起こりえます。
胸部、腹部、足はもちろん、顔面も三叉神経という神経が感覚を司っています。三叉神経でウイルスが活発化した場合は顔面に症状が出現します。
帯状疱疹の症状の経過
帯状疱疹の症状がどのような経過をたどるのかを見てみましょう。
初期の症状
ウイルスが神経に沿って広がっていくとその場所に炎症が起こるので、初期にはその炎症を痛みとして感じます。
人によっては少しかゆいぐらいと感じる人もいますし、全く痛みなどの症状がないという人も中にはいます。
痛みの感じ方には特徴があり、普通の切り傷のようなじくじくした痛みや触ったら痛いという痛みに加えて、「びりびり」「ジンジン」するような痛み、と言う人、「焼け付くような痛み」と表現する人もいます。
いずれにしても、ウイルスの広がりに従って痛みやかゆみの範囲が広がります。ただ、そのときにはまだ皮膚には何も異常が無いことも多く、原因がはっきりしない痛みを感じることになるのです。
発疹が出る
皮膚の痛み、かゆみが起こった場所に数日から1週間程度で発疹が出現します。
最初は小さく盛り上がるだけの場合もありますが、赤黒い変色を認めることもあります。次第にしっかりした「ブツブツ」が認められるようになり、広がっていきます。
皮疹はウイルスの増殖と炎症のある場所にできます。最初は神経細胞が存在する背中の真ん中近くからできることが多いです。
水ぶくれに変化する
発疹はその後、水ぶくれに変化していきます。数ミリぐらいのものが帯状に分布していきます。新しい水ぶくれと古い水ぶくれが混在し、古いものは血液を伴った黒ずんだ色になったり、膿を中に蓄えたりします。
水ぶくれや膿は1週間程度で破れ、かさぶたになります。1か月後には皮膚症状は治まりますが、色素沈着を残すことがあります。
帯状疱疹でやってはいけないこと
帯状疱疹になった時に、やってはいけないことがいくつかあります。いずれもやってしまうと症状が治りにくかったり、他の人にうつしてしまったりといった問題が生じます。
水ぶくれを潰す
水ぶくれの中には、帯状疱疹のウイルスがたくさん含まれています。そのため、潰すことでウイルスが外にばらまかれ、他の人にうつしてしまう可能性があります。免疫がある大人であれば問題がないことが多いのですが、水疱瘡に感染したことがない子供の場合には、これによって感染してしまう可能性があります。
また、水ぶくれを潰すことは本人にとってもよくありません。水ぶくれの下は、皮膚のバリアがない状態になります。そのため水ぶくれが潰れてしまうと、様々な細菌などに感染しやすくなります。
もし潰してしまった場合には、水などがしみるかもしれませんが、綺麗に洗うことが大事です。他の水ぶくれをつぶさないように気をつけながら優しく洗い、その後に塗り薬を塗って、ガーゼで覆うとよいでしょう。
患部を冷やす
帯状疱疹は痛みが多いものですが、痒みを感じることもあります。痒みを紛らわせるために患部を冷却したいと思うかもしれませんが、これはよくありません。
一般的に、皮膚を冷却すると痛みを鮮明に感じるようになります。せっかく今まで痒みだけで収まっていたのに、痛みを感じるようになってしまうのです。さらに、冷却することによって血の巡りが悪くなり、傷の治りが悪くなる可能性があります。帯状疱疹の状態が長引いてしまう可能性がありますから、冷やすのはやめましょう。
免疫力を下げる行動
帯状疱疹が起こっている時は免疫力が低下している場合が多いです。今以上に免疫力を下げるような行動をしてしまうと、帯状疱疹がさらに活性化し、状態が悪くなったり、なかなか治らなくなったりします。睡眠不足や、過度な運動、栄養の偏った食事などは免疫力の低下につながるので避けるようにしましょう。
治療せずに放置する
帯状疱疹を放置した場合、治療をすれば2週間程度で治るようなものが、1か月や数か月かかってもなかなか治らないということも珍しくありません。
さらに放置をすることによって、この後で詳しく取り上げる帯状疱疹後神経痛が起こってくる可能性があります。早期から治療することによって、これらのことがなるべく起こらないようにすることが大事です。
治癒した後も痛みが続く帯状疱疹後神経痛とは
帯状疱疹は神経細胞から神経にかけて感染が広がります。このとき、ウイルスが増殖していると体の免疫反応が起こり、炎症を引き起こすことでウイルスを駆除しようとします。
しかしその際に、神経自体も損傷を受けます。神経自体が損傷を受けているため、あるいは修復されるときに異常な修復を受けるために神経が常に反応し続けて痛みにつながあることがあります。これが帯状疱疹後神経痛です。
帯状疱疹後神経痛を発症しやすい人
帯状疱疹後神経痛は帯状疱疹にかかった人の5~20%程度に合併すると言われ、頻度は高いと言えます。
高齢になるほど発症しやすくなります。また、帯状疱疹発症時の痛みや皮疹が重度であったり、糖尿病などの合併症があったり、抗ウイルス薬を使用していなかったり、使用が遅れたりした場合に発症する可能性が高くなると言われています。
帯状疱疹後神経痛の症状
帯状疱疹自体の痛みは「ジンジン」「ビリビリ」、あるいは「焼け付くような」痛みでしたが、帯状疱疹後神経痛においても同じような痛みを訴える傾向があります。
ただし、帯状疱疹後の痛みは神経自体の痛みであり、炎症が関与している痛みではありませんから、市販の痛み止め(その多くは消炎鎮痛薬)では改善しにくいのが特徴です。
症状がひどくなると、「アロディニア」と呼ばれる症状を呈します。これは、通常であれば痛みを感じないような刺激、例えば皮膚を触ったり風が吹いたりしただけでも激しい痛みを感じる状態を言います。
これらの症状はなにも治療をしない場合は良くなることは少なく、治療もなかなか困難です。
帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛の違い
帯状疱疹痛と帯状疱疹後神経痛の違いは、痛みの原因の違いから考えるとわかりやすいでしょう。
いずれも神経が原因の痛みではありますが、帯状疱疹痛は今そこにウイルスがいて、体の免疫が反応して炎症を起こしている痛みになります。
ですから、普通の切り傷のようにその場所を触ることで痛みを感じたり、じくじくとその場所が痛いという感覚を感じたりします。もちろん、神経自体の痛みもありますから神経障害性疼痛に特有のビリビリ、ジンジンした痛みもあります。
一方、帯状疱疹後神経痛の痛みは炎症が治まった後に生じます。通常の傷のようなじくじくした痛みではなく、神経障害性疼痛がメインになります。ちょうど正座をしたあとに足がしびれているときの症状に似ています。
通常、神経が修復されるときに感じる痛みは一時的なもので、時間とともに軽快していきます。しかし、帯状疱疹後神経痛はかなりの長期に渡って症状が続き、原因がよくわかっていないのが実情です。
帯状疱疹の治療開始が遅くなったり、症状が強かったり、合併症が多い場合に帯状疱疹後神経痛に移行しやすいと言われているので、帯状疱疹の治療を適切に行うことが大切です。