病院は何科を受診すべき?帯状疱疹の見分け方と治療法

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帯状疱疹は、皮膚にブツブツが帯状にできて強い痛みを伴う病気です。

皮膚症状が出ているときが主に治療対象となりますが、治癒後も続く頑固な痛みにさいなまれることがあります。

ここでは帯状疱疹自体の治療、治癒後も続く帯状疱疹後神経痛の治療、そして、帯状疱疹とよく似た別の病気との見分け方について詳しく解説していきます。

帯状疱疹の治療

帯状疱疹が実際に起こっている際の治療は、主に2種類に分かれます。

まずはウイルス自体の増殖を防ぐための抗ウイルス薬の治療です。それに加えて、皮疹や痛みといった、ウイルスによって引き起こされた症状に対する対症療法としての治療があります。

それぞれの治療法について見ていきましょう。

抗ウイルス薬

帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスというヘルペスウイルスによって引き起こされます。そのため、ヘルペスウイルスに対する治療薬である抗ヘルペスウイルス薬が使用されます。アシクロビル、パラシクロビル、ファムシクロビルといった薬剤です。

これらの薬剤はウイルスが増殖するのを抑制する薬剤ですから、ウイルスが体内で増殖し始めたときになるべく早く内服することが重要になります。

具体的には皮疹出現後72時間以内に内服を開始する事が必要となります。薬の種類や投与量は合併症や全身状態によって変わってきますので専門医の指示通りに内服しましょう。

多くの場合、7日間の内服が必要です。症状が治まったからといって内服を自己判断で中断してしまうと再度ウイルスの増殖を来したり、帯状疱疹後神経痛の発症率が高まったりしますので注意してください。

痛み止め

帯状疱疹による痛みに対しては、NSAIDsという名前で分類される鎮痛薬が使用されます。ロキソニンやボルタレンなどがそれにあたり、市販薬もあります。

しかし帯状疱疹の痛みは神経の痛みも混じりますから、十分に痛みが取れない場合は病院で処方される薬剤が必要になります。

塗り薬

帯状疱疹に対する塗り薬は、上記の抗ウイルス薬、痛み止めの補助として使用される場合が多いです。

抗ウイルス薬の塗り薬で水ぶくれの中のウイルスの増殖を抑えつつ、痛み止めの塗り薬で皮膚の痛みを抑えるといった使い方になります。

また、塗り薬が水ぶくれを覆うことで、水ぶくれの中のウイルスが外に出て他の人に移るのを抑える効果も期待できます。

漢方薬

帯状疱疹の症状に対しては漢方薬も使用されます。

ウイルスが増殖し、皮疹がまさに広がっている急性期には、水分の代謝を整え、炎症を抑えるような漢方薬として五苓散(ゴレイサン)や黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、川芎茶調散(センキュウチャチョウサン)などが使用されます。

慢性化し、後述する帯状疱疹後神経痛を発症した場合には血流の改善や自律神経活動の改善を目的に、麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)や桂枝加朮附湯(ケイシカジュツブトウ)、補中益気湯(ホチュウエッキトウ)などが用いられます。

漢方薬はその人の状態に合わせて使い分けたり組み合わせたりしますので、漢方を取り扱う医師、薬剤師に相談すると良いでしょう。

その他

帯状疱疹は神経の感染症で、感覚を伝える神経が障害を受けます。特に痛みを感じ続けると神経が過敏に反応し、後述する帯状疱疹後神経痛に移行しやすいと言われています。

そのため、一時的に神経が痛みを感じなくするように神経ブロック療法をする事で帯状疱疹後神経痛に移行しにくくする治療もあります。

帯状疱疹後神経痛の治療

帯状疱疹後神経痛は、帯状疱疹の皮疹が落ち着いた後に続いて、あるいは一度落ち着いてから再度痛みが出現してくるものを言います。

帯状疱疹の治療開始が遅くなったり、症状が強かったり、合併症が多い場合などに帯状疱疹後神経痛へ移行しやすいと言われています。

薬による治療

帯状疱疹後神経痛の痛みは通常の痛み止めではなかなか抑えきれない痛みです。通常の痛み止めの他に、医療用の麻薬を配合した鎮痛薬(トラムセット配合錠など)を必要とする場合もあります。

他には特に神経障害性疼痛に対して効果のある薬剤を使用したり、神経の修復を助けるようなビタミン剤を内服したりする場合もあります。一部の抗うつ薬は神経障害性疼痛の痛みを抑える効果があるため、併用することもあります。

神経ブロック療法

薬の他には神経ブロック療法が行われます。神経ブロックは局所麻酔薬によって一時的に痛みをブロックする方法です。

1回のブロックでは一時的に痛みを抑えることができるだけですが、何回も神経ブロックを行うことで痛みの刺激に対して敏感になっている神経を休め、慢性的な痛みを軽減させることができます。また、血流が良くなることにより神経の修復を促す効果もあります。

血流の改善

同じようにレーザー照射や温熱療法、電気刺激療法なども血流改善による神経修復促進で治療効果を得る方法です。

自分自身でも入浴したり、適度な運動をしたりしてよく体を温めることが効果的と考えられます。

帯状疱疹ワクチンとは

帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスの増殖によって引き起こされる疾患です。

もともと水痘・帯状疱疹ウイルスにまだ感染していない小児に対しては定期接種としてワクチン接種がすすめられており、水痘の感染者は激減しました。

一方で、すでにウイルスが体内に存在する大人に対してのワクチン接種は進んでいませんでした。しかし近年、元々小児に対して投与されていたワクチンが、帯状疱疹予防として成人にも接種が認められました。

また、帯状疱疹発症を予防するためのワクチンも開発され、製品化されています。やや高価なワクチンですが、一部の自治体では助成金が受けられる場合もあります。

帯状疱疹と間違いやすい病気

帯状疱疹と同じように皮疹が出る病気は様々あります。それはどのような病気で、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。

接触皮膚炎 

 接触性皮膚炎は、一般にかぶれとも呼ばれる、 何らかの物質が皮膚に接触することによって起こってくる湿疹のことです。

物質が接触することによって、直接的な刺激で皮膚が変性したり、アレルギー反応を起こすことによって皮膚に湿疹ができてきます。ひどい状態になると水ぶくれが出現することもあります。

皮疹は物質に触れた場所に出てくるのが基本です。多くの場合には触れた場所全体が赤くなり、特に強く触れた部分がひどくなってくることがあります。 

接触性皮膚炎は物質に触れてからすぐに反応が出ることもありますが、 アレルギー性の場合には数時間後ぐらいから症状が出てくることもあります。そのため症状が出た時には何に触れたか覚えていないこともあり、原因がわからないということもよくあります。

治療としては、原因物質に触れないようにすることがまず第一です。 その上で、短期的にステロイド外用薬を使用して炎症を抑えます。症状が強い場合や痒みが強い場合には抗ヒスタミン薬を内服することもあります。

水疱性類天疱瘡(すいほうせいるいてんぽうそう) 

水疱性類天疱瘡は自己免疫疾患の一種です。自分自身の免疫が皮膚の一部分を攻撃することによって発生します。

体の免疫は自分にとって不必要なものに対して抗体というタンパクを産生します。このタンパクが目的物に付着すると、それを目印として様々な免疫細胞が免疫反応を起こし、目的物を破壊するという仕組みになっています。

水疱性類天疱瘡の場合には、皮膚をターゲットにした抗体が産生されてしまうことによって、皮膚の細胞と細胞をつなぐ構造が破壊され、細胞と細胞の間が空間になってしまいます。その空間に水が溜まることによって、水泡が形成されます。

このような免疫の異常が起こる背景には、何らかの原因があることがあります。 薬物や放射線治療、紫外線、他の皮膚疾患、糖尿病や関節リウマチなどの病気があることによって、抗体が突然産生されることがあります。しかし、原因がはっきりしないこともかなり多いです。

症状としては、まず痒みを感じることが多いです。最初のうちは痒みだけで、水ぶくれは数年間も見られないこともあります。そして、水泡が現れる前に、盛り上がった大きな皮疹が生じることがあり、蕁麻疹のように見えることもあります。

だんだんと抗体の量が増えてくると、皮膚に張り詰めた大きな水泡ができて、強いかゆみが出てくるようになります。水ぶくれの周りは正常に見えることもありますが、炎症反応を反映して赤く見られることもあります。 

水泡が良くできるのは膝の裏側や脇の下、肘の内側、鼠径部など曲げることのできる部分です。

病変部の皮膚を取ってきて抗体の沈着を調べることによって確定診断ができます。ステロイドの外用や、免疫抑制薬の使用などの治療が行われます。

帯状疱疹を見分けるポイント

帯状疱疹のように水ぶくれや発赤を示す疾患はいくつかあります。帯状疱疹と診断する場合には、一番のポイントはその分布です。基本的には左右どちらかに限局した帯状の皮疹が見られることで診断がつけられます。 

また自覚症状として、強い痛みを感じるというのも特徴です。皮疹が出ていない部分にも痛みが出るというのは、神経障害を反映した帯状疱疹ならではの症状と言えます。

しかしそれでも、典型的ではない場合は、見た目だけで確実に帯状疱疹と診断ができないことがあり、帯状疱疹の可能性があるという段階で治療を開始する必要があります。

病院は何科を受診すればいい?

皮膚科、またはペインクリニックで帯状疱疹の治療を受けることができます。

皮膚科の治療

帯状疱疹を初回に発症した場合は、疑った時点で速やかに皮膚科を受診するようにしましょう。

発症後なるべく早い時点で抗ウイルス薬の内服を開始することが症状の軽減ならびに後遺症の予防につながります。

帯状疱疹後神経痛を疑う症状が継続する場合も、迷ったらまず皮膚科を受診するとよいでしょう。経過を知っている皮膚科を受診すれば対処も早くなりますし、内服薬程度で収まる痛みであれば皮膚科だけで対応できる場合もあります。

必要に応じて、皮膚科の医師からペインクリニックを紹介してもらうとよいでしょう。

ペインクリニックの治療

ペインクリニックは痛み治療の専門医院で、帯状疱疹後神経痛も専門領域としてよく診る診療科です。内服の鎮痛薬で改善が見られない場合はペインクリニックの受診をお勧めします。

ペインクリニックでは鎮痛薬以外の内服薬の使用や、神経ブロックなどの専門的な手技を早期から取り入れることができます。

早期から治療を行うことで後遺症がより軽くなります。治療をためらっていると、治療が遅くなれば遅くなるだけ後々の後悔が強くなる傾向があるように思います。

痛みの治療は問診がとても大事なので、予約制でしっかり問診をする時間を確保する医院が多いです。受診した際は、ご自身の症状や生活の状況を詳しく話し、自分に合った治療法を選択しましょう。

お近くのペインクリニックをすぐに受診できる環境であれば、直接受診しても良いですし、皮膚科からの紹介でも良いでしょう。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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