ストレスを抱えた若い女性にも多い?くも膜下出血の原因と危険因子とは
くも膜下出血は突然の今まで経験したことのないような頭痛で発症します。くも膜下出血の3分の1が死亡するといわれる怖い病気です。
脳は外側から、硬膜、くも膜、軟膜という何層かの膜で覆われており、くも膜と軟膜の間を「くも膜下腔」といいます。くも膜下出血とは、脳表面の動脈から出血し、このくも膜下腔に血液が流れ込んだ状態をいいます。
誰にでも起こりうる病気ですが、特に40歳ごろから気をつけていきたい病気の一つです。ここでは、くも膜下出血の原因と危険因子について解説します。
脳動脈瘤との関係は?くも膜下出血の原因
くも膜下出血の大部分(80~90%)が脳動脈瘤の破裂によるものです。
脳動脈瘤がなぜできるのかはまだよくわかっていませんが、血管の弱い部分(分岐部など)にできやすい傾向があります。
脳動脈瘤自体には自覚症状はなく、MRIによる詳細な検査で発見されます。一般的に脳ドックなどで約5%の方に未破裂脳動脈瘤が見つかるといわれており、破裂していない状態で治療が可能であればくも膜下出血の予防につながります。
なお脳動脈瘤は先天的な囊状(のうじょう)動脈瘤と、生活習慣病などによる動脈硬化が関与する紡錘状(ぼうすいじょう)動脈瘤、ストレスや動脈硬化による解離性動脈瘤に分けられます。
くも膜下出血の原因としては下記のようなものがありますが、脳動脈瘤の破裂が80~90%で非常に多いです。また、交通外傷や転倒などによって外傷でのくも膜下出血も時折みられます。これは外傷性くも膜下出血と呼ばれ、外傷が原因であるため、通常のくも膜下出血とは区別されます。
・脳動脈瘤の破裂
・脳動静脈奇形(AVM)
・脳動脈解離
・脳腫瘍
・血管疾患
・外傷
くも膜下出血の危険因子
脳動脈瘤があるからといって、すぐに破裂して出血するわけではありません。破裂しない方も多くいます。くも膜下出血を引き起こす危険因子を見ていきましょう。
高血圧
くも膜下出血のリスク要因のなかでも、最も注意が必要なのが高血圧です。
高血圧の人は、血圧が正常な人と比較すると、くも膜下出血による死亡リスクが約3倍(男性2.97倍、女性2.70倍)も高くなります。
血圧が高いということは、動脈瘤にかかる圧力も常に高い状態にあるということであり、それだけ破裂の危険性も高くなります。また、くも膜下出血の前兆である、血圧の乱高下には十分注意が必要となります。
喫煙
くも膜下出血の最大のリスクとされているのが、喫煙習慣です。喫煙者のリスクは、非喫煙者の2.2倍〜3.6倍にもなります。
家族歴
親や兄弟、親戚などの家族に脳卒中(脳出血、くも膜下出血、脳梗塞)の病歴がある場合にも注意が必要となります。家族歴がある人は、男女とも約2倍リスクが高くなるといわれています。
飲酒
多量飲酒はくも膜下出血の発症や死亡と関係があるといわれています。飲み過ぎないよう注意しましょう。
加齢
加齢に伴ってくも膜下出血のリスクが増えます。特に40歳代から目立ち始め、50歳代から急に増えていきます。
ストレス
特に女性は、日常生活におけるストレスなどが原因でくも膜下出血を引き起こすがあります。
くも膜下出血は女性に多い?
一般的に、日本におけるくも膜下出血は男性:女性=1:2で、女性に多くみられます。男性では50歳代がピークですが、女性の場合は50~70代に多く、ピークは70歳後半となります。
未破裂動脈瘤があっても、歳だからと治療を受けていない女性の方は、病院を受診して治療が可能か検討してみましょう。
いかがでしたでしょうか。くも膜下出血の原因や危険因子などをみてきました。くも膜下出血は脳神経外科の分野では最も重症度が高く、迅速な対応が必要となる病気となっています。病院に搬送された時点で呼吸が停止していたというケースも多くあり、予防できるのであれば、予防することが一番だと考えられます。
脳動脈瘤があり、危険因子も持っている方は、治療が可能かどうかを医師に聞いてみることをおすすめします。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。