脳腫瘍の症状とは?頭痛との関係について解説

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脳腫瘍ができた場合の症状の出方は3つあります。1つ目は、脳腫瘍という腫瘤物ができることにより、頭蓋骨で囲まれた内部の圧力が高くなって起こる症状です。頭蓋内圧亢進症状と呼ばれ、頭痛・嘔吐・傾眠などが起こります。

2つ目は、脳腫瘍によって直接圧迫された脳の機能が障害されることによる症状で、巣症状または局所症状と呼ばれます。3つ目は、脳の一部が異常興奮をきたすことによって起こる痙攣発作です。

ここでは、頭痛をはじめとする脳腫瘍のさまざまな症状について解説します。

脳腫瘍と頭痛の関係は?

脳組織そのものには痛みの感覚はありません。そのため、脳腫瘍によって脳が圧迫されたり、傷ついたりしても痛みを感じることはないです。頭痛の種類は何種類かあります。

早朝頭痛

早朝起床時に痛みを感じることが多い早朝頭痛は、頭蓋内圧亢進症状に特徴的です。頭蓋内圧亢進症状は腫瘍によって頭蓋内の圧が亢進することによって生じ、起床時に最も強く、午前中に徐々に軽快する頭痛となります。吐いてしまうとすっきりするという特徴があります。

牽引性頭痛

腫瘍の存在する部位の近辺で血管や硬膜が圧迫を受けて、牽引されることで生じる頭痛となります。腫瘍が増大した場合や、腫瘍からの出血が見られた際に生じます。

水頭症による頭痛

脳の中には、脳室という髄液が循環している部屋があります。腫瘍による周囲脳実質の浮腫によってこの脳室の循環している経路が閉塞されることによって、脳室にどんどん髄液が溜まっていく水頭症になります。水頭症によって脳が圧迫されるため、頭痛が生じます。

脳腫瘍に見られる頭痛以外の症状

脳腫瘍に見られる頭痛以外の症状としては次のものが挙げられます。

嘔吐

頭蓋内圧亢進による場合と嘔吐中枢の直接の刺激による場合があります。嘔吐中枢は脳幹にあるので、脳幹やその近くに腫瘍がある場合に多く見られます。

小児は頭痛をはっきり訴えることができないため、嘔吐は重要な症状となります。頭蓋内圧亢進症状による嘔吐は、吐き気がなくても突然噴出するような嘔吐をきたして、一旦嘔吐すると楽になってまた食べることができます。

ひきつけ

脳腫瘍が刺激となって脳に無秩序な電気活動がおこることをけいれん発作(ひきつけ)といいます。刺激される脳の部位によって片方の手足または足が自分の意思に反して震えたり、言葉がしゃべれなくなったります。これを部分発作といいます。

この無秩序な電気活動が脳全体に広がった場合は、意識を失い、全身の筋肉の震えや硬直が生じます。これを全身痙攣といいます。

めまい

めまいには3種類あります。天井や壁が回転する回転性めまい、ふわふわ浮いたような感じがする浮動性めまい、そして立ちくらみです。回転性めまいの場合は、約9割は耳鼻科的なメニエール病などですが、脳腫瘍のこともあります。

浮遊感は、脳幹や小脳といった大切な部分の虚血でも起こりますので検査が必要となります。立ちくらみは貧血や、立ち上がった際に血液がお腹や足に残って頭に足りなくなった場合に起こります。

言語障害

右利きの人、左利きの半数以上の人が左大脳半球を優位半球としています。そのため、言語中枢も左大脳半球にある人が多いです。言語中枢に脳腫瘍ができた場合は、失語がでます。

失語は、思っていることが言葉として出てこない運動性失語と、話しているのは聞こえるけど、話している意味が理解できない感覚性失語があります。

視野障害

眼球を動かすには3本の脳神経と6つの筋肉が必要となります。眼窩内腫瘍や眼球を動かす神経が腫瘍で障害されると、物が二重にみえる複視を生じます。

また、視神経の情報を受け取る部分は後頭葉といわれています。そのため、後頭葉に腫瘍ができると、半盲など視野が障害されることがあります。

視力低下

視力に異常が生じるには白内障など眼球そのものの異常がほとんどです。しかし、脳腫瘍が視神経やその周辺にできて圧迫する場合、また頭蓋内圧が亢進した場合にも視力障害が生じます。

頭蓋内圧亢進による場合は、雲や霧がかかったような見え方となります。急激な視力低下やメガネやコンタクトなどでも矯正されない視力低下は、脳腫瘍による視神経圧迫を疑う必要があります。

聴力障害

聴神経には蝸牛神経と前庭神経が含まれます。聴力に関係するのは蝸牛神経となり、前庭神経はめまいに関係します。聴神経腫瘍は前庭神経から発生するのですが、蝸牛神経は前庭神経と併走するため、障害されて聴力障害が起こります。

顔面神経麻痺

顔面を動かす神経線維が障害されると起こります。脳卒中や顔面神経のウイルス性の炎症によって起こることが多いですが、脳腫瘍による場合もあります。

顔が左右対称でなくなり、垂れ下がったようになって、食べ物を口からこぼしたり、目が完全に閉じられなくなります。

運動麻痺

脳腫瘍が手足を動かす場所にできて圧迫する場合に起きます。右側の脳が障害されると左半身の麻痺が起こります。脳卒中による場合がほとんどですが、まれに腫瘍の圧迫に伴って生じる場合があります。

しびれ(感覚障害)

感覚神経線維が障害されると起こります。感覚障害にもさまざまあり、ジンジン痺れる異常感覚、触るとビリッとくる感覚過敏、触っているかわからない感覚鈍麻、温かさや冷たさがわからない温痛覚障害などがあります。運動麻痺と違って気付きにくい場合があります。

このように脳腫瘍によって生じる症状はさまざまあります。中でも一番多いのは、脳腫瘍ができることによる頭蓋内圧亢進にともなう頭痛です。早朝に強い頭痛が生じ、誘因なく嘔吐をするような症状が出た際は、一度病院を受診して詳しく検査してもらいましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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