脳腫瘍の手術後の再発や後遺症について…性格が変わるって本当?

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脳腫瘍は手術すればそれで終わりという病気ではありません。

ここでは脳腫瘍の手術後に起きる可能性がある再発や後遺症について解説します。

脳腫瘍の再発とは

良性脳腫瘍にも悪性脳腫瘍にも再発の可能性があります。

良性脳腫瘍の再発

良性脳腫瘍(髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫など)の場合、手術で全摘出することができれば再発する可能性は極めて低くなります。

ただし、良性脳腫瘍であっても増殖能力が高い成分を含む腫瘍である場合には、術後時間の経過とともに再発率が上がっていきます。

悪性脳腫瘍の再発

悪性脳腫瘍(神経膠腫など)は、腫瘍の境界が不明瞭であるが故に手術で完全切除を達成することは難しく、術後再発する可能性が高いです。

再発したときの症状

脳腫瘍が再発した際の初期症状としては以下のようなものがあげられます。

・慢性的な頭痛
・原因不明の吐き気が続く
・視界の一部が欠ける
・視力が低下する
・片手や片足が動かしにくいと感じる
・片手や片足にしびれた感じがする
・言語障害
・耳鳴や難聴の症状がある

脳腫瘍の症状には、腫瘍が大きくなって頭蓋内圧が高くなることで現れる頭痛や吐き気(頭蓋内圧亢進症状)と、腫瘍の発生した部分に応じて現れる手足のしびれや言語障害など(脳局所症状)があります。

良性脳腫瘍の場合はこれらの症状がゆるやかに進行するのですが、悪性脳腫瘍の場合は急激に進行してしまいます。上記のような再発が疑われる症状が出た場合は、すぐに検査を受けることが大切です。

再発したときの治療法

再発した脳腫瘍は可能な限り手術で切除しますが、困難なケースも多いです。そのため、放射線治療が中心となってきます。

放射線治療には、通常分割外照射、定位放射線治療、強度変調放射線治療があります。

通常分割外照射

通常分割外照射は、正常組織に浸潤性に発育する神経膠腫に適応があります。腫瘍およびその周囲を広範囲に照射します。通常必要総線量を20~30回に分割して照射する方法です。

分割することで正常脳組織に対する影響を最低限におさえることができます。しかし、治療日数がおよそ1か月~2か月かかります。

定位放射線治療

定位放射線治療は、γナイフ、サイバーナイフ、エックスナイフが該当します。それぞれ微妙に特性は違うのですが、正確な腫瘍の位置をコンピューターに覚え込ませて、たくさんの放射線を虫眼鏡のように腫瘍組織のみに絞って照射する点は共通しています。

正常組織への照射の心配はありませんが、腫瘍が大きいと使用できません。また、境界が明確でないとターゲットを決められないです。そのため、再発を繰り返す髄膜腫や聴神経腫瘍などの神経鞘腫、転移性脳腫瘍が適応となります。期間としては短く、入院期間はおよそ3日~1週間くらいです。

強度変調放射線治療

2011年から最新のシステムができ、強度変調放射線治療といいます。これはコンピューターで治療装置を制御し、腫瘍部分に放射線を集中して照射する新照射技術で、機能的臓器である脳の放射線障害をできる限り少なくすることが可能です。

また、化学療法である抗がん剤は、血液脳関門があるため、脳まで届きにくいという欠点があります。そのため、脳腫瘍の治療に抗がん剤を単独で使用することはありません。効果を高めるために数種類の抗がん剤を組み合わせて投与していきます。

脳腫瘍の手術後に考えられる後遺症

腫瘍そのものの影響や、手術によって脳の機能の一部が損なわれることがあります。それによってさまざまな後遺症が出てきます。

手足の運動障害や感覚障害

手足のしびれや麻痺、あるいは体がふらふらしたりすることがあります。

失語、構音障害

なめらかに話したり、聞いて理解することが困難になる失語症、発声や発音が上手にできなくなる構音障害などの症状が現れます。

てんかん発作

脳腫瘍手術によって脳を摘出するため、けいれん発作が生じる可能性があります。

ホルモン分泌異常

下垂体腺腫の術後によく生じます。正常の下垂体も一部摘出してしまうことにより、下垂体から分泌されるホルモンの異常が生じます。

性格が変わるって本当?考えられる原因

普段温厚だった人が急に怒りやすくなる。または、普段気難しい人が急に優しくなる。このように急に性格が変わることがあります。

そういうときは、脳に障害が起きている可能性があります。脳には情動をコントロールしている部分があります。脳腫瘍等によってそのコントロールしている部分が障害されることで、情動のコントロールができなくなり、このような性格の変化が起きます。

これは手術によって切除したからといって改善するものではなく、精神科と協力して治療にあたることもしばしばあります。急な人格の変化(突然の抑うつ、不安、自制がきかなくなるなど)がみられた際は、一度脳の検査を受けてみましょう。

いかがでしたでしょうか。今回は脳腫瘍の再発や後遺症について見てきました。脳腫瘍は手術したからもう安心というものでもなく、再発のリスクがあるため、一生向き合っていかなければなりません。

腫瘍を早期に発見することで後遺症がひどくならずに済むことがあります。本人が訴えて気づく場合もありますが、大抵は家族が気づいて受診する場合が多いです。何かおかしいなと感じた際は、一度検査を受けてみることをおすすめいたします。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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