COPD(慢性閉塞性肺疾患)の急性憎悪とは?治療法と予防のポイント

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)は、主に喫煙によって引き起こされる呼吸器の病気です。

肺や気管支が傷害される結果、呼吸苦や咳、痰などの症状が出現します。病状は進行性で、基本的には改善することがなくどんどん悪化していき、一過性に症状が急に増悪することがあります。これを急性増悪といいます。

ここではCOPDの急性増悪とは何か、どのように治療するのか、予防はどのようにすればよいのかについて解説します。

COPDの急性憎悪とは

COPDは、肺気腫と慢性気管支炎のいずれかもしくは両方を発症した状態をいいます。肺胞や気管支に炎症を引き起こす喫煙やその他の物質によって引き起こされます。

肺では肺胞が炎症によって破壊され、ひとかたまりの大きな肺胞となり、酸素の取り込み量が減ったり、息を吐き出すのが困難になったりします。

気管支では気管支粘膜が炎症によって傷害され、一過性には痰が増加したり、一時的に気管が狭くなったりする一方で、炎症が続くことで気管が変性して固く、そして永続的に狭くなってしまいます。

COPDの急性増悪は多くの場合、何らかの原因因子が気道に刺激を与えることで炎症が急激に生じることでおこります。炎症が起こるとそれに対する反応として痰が増え、痰を吐き出すために咳が出たり、痰が詰まることで空気の通り道が塞がってしまって呼吸困難感が強くなったりします。普段は出ないゼーゼーいう喘鳴も出てくることがあります。

また、このように急性増悪を来した場合は痰などの排泄力が落ちていますから、肺炎を起こしてしまうとなかなか原因菌が排泄されず、重症化することがあります。他の病気もCOPDの急性増悪をきっかけに一気に悪くなる事もあり、非常にやっかいです。

さらに、一度急性増悪を起こすと、その後も気道は敏感になり、急性増悪を再発することが多くなることが分かっています。COPDそのものの治療をより厳格化する必要もあり、注意すべき状態です。

COPDが憎悪する原因

COPDの急性増悪は多くの場合、気道感染と大気汚染によって引き起こされます。しかし3分の1程度の場合は、はっきりとした原因が分からないとされています。

気道感染はやはりウイルスの感染症が多いです。単なる風邪のウイルスでも、刺激に対して過敏に反応するようになっている気管・気管支に感染すると強い炎症を起こします。同じように、普通の人であれば特に症状を起こさないような微細な大気汚染物質でも反応が過剰に起こり、炎症が一気に強くなります。

その他、ストレスや過労も原因となります。ストレスや過労は交感神経の反応を異常化させます。気管や気管支は交感神経刺激によって拡張されますが、交感神経の反応が異常化することで気道が開いた状態が維持されなくなり、呼吸苦が増悪します。ストレスや過労は免疫の異常も来しますから、それによりウイルスなどへの感染の確率が上昇するという面もあります。

COPD急性憎悪の治療法

COPDが急性増悪した場合、基本的には入院で濃密な治療を行うのが普通です。自宅で内服などの薬剤で治療するのは限界があり、特に症状が強くなると酸素なしでは動くこともできなくなります。入院で安静にし、酸素投与をしながら点滴を中心とした薬物療法で慎重に状態の改善を図ります。

薬物療法

COPD急性増悪の薬物療法は、まず普段行っているCOPDの治療を強化するところから始まります。

気管支を拡張させるβ刺激薬という吸入の薬剤をCOPDに対して使用しますが、その量を増量したり、種類を変えたりして使用します。

COPDの治療としてステロイド剤の内服をしている場合も増量や、点滴への変更などが行われます。

また、気道への感染症が誘因となっていることも多いので、その治療のために抗生物質の投与が行われます。診断時点で明らかな肺炎があるという証拠がなくても、肺炎が起こっている可能性を考慮して抗生物質の投与を開始する場合が多いです。

酸素投与

体への酸素の取り込み具合を確認し、酸素の取り込みが不足している場合は酸素投与を行います。ただし、体の中の酸素の値が低いからと、大量の酸素投与をいきなり開始してしまうと、呼吸停止を起こすことがあります。

COPDの患者さんの場合、もともと低酸素状態で、高二酸化炭素状態に体が慣れています。そこに大量の酸素が投与されると、酸素を取り込もうとする体の働きが止まってしまい、呼吸抑制が起こってしまうのです。これをCO2ナルコーシスと言います。

もともと在宅で酸素投与しているCOPD患者さんが、息苦しいからと急に大量の酸素を吸おうとするのが危険といわれているのはこれも理由になっているのです。ですので、COPDの急性増悪で酸素の投与を始める場合や増量する場合は入院で経過を見るのが普通です。

換気補助

空気の通り道が狭くなってしまい、空気を取り込めなくなってしまっている場合、換気補助を行います。機械を使って空気を押し込んでやることで、奥の方の肺にまでしっかりと空気を届けるようにします。

昔は人工呼吸用のチューブを口から挿入し、人工呼吸を行うのが一般的でした。しかし人工呼吸用のチューブを入れると唾液のたれ込みがあったり、チューブの不快感を取るために軽度の麻酔をかけなければならずそれによって全身状態が悪化したりと、かなり管理が大変でした。

現在では、マスクを顔に装着し、マスクから圧力をかけて空気を送り込むNPPVという装置が開発されており、よく使用されます。

ただし、ここにも大きな問題があります。COPDの患者さんは息を吸うことも確かに難しいのですが、それよりも息を吐くことが問題となっています。ですので、空気を送り込んでもなかなか吐き出すことができず、人工呼吸器によって空気の入れ換えをするのが難しくなってしまうのです。呼吸が速いとより難しくなってしまうので呼吸を落ち着ける薬剤を使用したり、気管支を拡張させる薬を増量したり、非常に難しい治療が行われます。

COPD急性憎悪を予防するためのポイント

COPDの急性憎悪を予防するためには、特に喫煙は絶対にやめなくてはなりません。喫煙そのものでCOPDが増悪するだけではなく、治療に際し痰が増加し、管理が非常に難しくなります。

その他の気道刺激になる物質もなるべく避ける生活が望まれます。

感染もCOPD急性増悪の原因ですから、特に肺炎球菌ワクチンやインフルエンザワクチンは重要です。

口からの雑菌のたれ込みもありますから、普段から歯磨き、うがいをしたり、入浴時にしっかり体を洗って清潔にしたりするなど、感染対策に気を遣う必要があります。ストレスも避けるようにして、余裕を持った生活を心がけましょう。


<執筆・監修>

郷正憲先生プロフィール画像

徳島赤十字病院
麻酔科  郷正憲 医師

麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。
麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。
本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。
「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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