スマホやコーヒーの影響は?はっきりわかっていない脳腫瘍の原因

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今ではスマホを持っていない人の方が珍しくなっています。そんなスマホが脳腫瘍の原因になっているのか?という議論があります。

ここでは脳腫瘍の原因を取り上げ、スマホやコーヒーの影響について紹介します。

スマホの影響を調査した研究

ことの発端は、2017年に米カリフォルニア州の公衆衛生局が「脳を電磁波から守るために、スマホを体から遠ざけよ」とのガイドラインを発表したことによります。

このガイドラインは4つのアドバイスをしています。

・携帯電話の使用時間を短縮する。

・スピーカーモード、ヘッドホン、またはイヤフォンを使用して、脳と携帯電話との距離を広げる。

・信号が弱いとき(電波が弱いとき)に電話をかけることを避ける。

・話すよりもテキストメッセージを検討する。

このようなガイドラインが発表され、さまざまな研究機関が調査研究を続けていますが、現時点で因果関係を科学的に示すようなものは出てきていません。

スマホの影響を否定する見解も

日本においても2000年~2004年に研究がされています。神経膠腫と診断された30~69歳の88人の患者と196人の健常対照者について携帯電話の通話期間・時間・頻度について聞き取り調査をしています。

その結果、携帯電話の使用期間が10年以上の場合や累積通話時間2000時間以上の場合をみても、明らかな脳腫瘍の発生の増加は認められなかったとの報告があります。

その他の報告をみても、通常の携帯電話による通話で、脳腫瘍や他臓器のがんの発生が増加したという報告はありません。そのため、スマホは脳腫瘍の発生とは関係がないとされています。

コーヒーは脳腫瘍のリスクを下げる?

コーヒーは、カフェインをはじめとしていろいろな成分を含んでいます。このいろいろな成分が、さまざまな病気を予防する効果があるといわれています。

1993年から2012年まで日本全国の11の保健所管内に住む人々を対象に行われたJPHC Studyという研究の一環として、コーヒーと緑茶の摂取量と、その後の脳腫瘍発症の関係について調査されています。

その結果、1日3杯以上コーヒーを飲む人が、脳腫瘍リスクが53%低いという結果が明らかになりました。しかし、コーヒーの摂取量が増えるほどリスクが下がる、といった傾向は見られなかったことから、摂取量が一定のレベルを超えると、急に脳腫瘍抑制効果が現れる可能性が考えられています。

ただコーヒーをたくさん飲めばいいというわけではなく、多量摂取(たとえば1日7杯以上)でリスクが上昇しているという報告もあります。

そのため、コーヒー摂取には予防的に作用する適切な量がある可能性が考えられます。コーヒーに含まれる、抗酸化作用やインスリン抵抗性の改善作用のあるクロロゲン酸やトリゴネリンなどの物質が脳腫瘍の発がんを抑制しているのではないかといわれています。

はっきりわかっていない脳腫瘍の原因

脳腫瘍の原因ははっきりとはわかっていません。よく外来で、「何が悪かったんでしょうか?」という質問をいただきます。しかし、何をしたからいけなかった(たとえば多量飲酒したからや喫煙をしていたからなど)ということはわからないんです。

最近、脳腫瘍の分類も変わり、病理組織をみるだけでは診断をつけることができず、遺伝子検査まで行って診断がつくようになっています。このように遺伝子レベルまで解析していくことで今後新たな原因が解明される可能性があります。

脳腫瘍のチェック方法

良性であっても悪性であっても、脳腫瘍が大きくなると症状が現れます。この症状は脳梗塞や脳出血などの脳卒中の場合と同様となります。

しかし、症状の現れ方には大きな違いがあります。脳梗塞や脳出血などの脳卒中の場合は、症状は急に激しく起きますが、脳腫瘍の場合は腫瘍が少しずつ大きくなるため、徐々に症状が出現します。

そのため、気づいても隠したり、周りが気づかなかったりする場合もあります。脳腫瘍の症状が起きていないかセルフチェックする方法を見ていきましょう。

セルフチェック

脳腫瘍の可能性があるかどうかを自分でチェックする方法があります。

両上肢挙上試験:手のひらを上にして両上肢を挙上して、目をつぶります。どちらかの手が自然と落ちてくる場合麻痺がある可能性があります。

片足立ち試験:片足で立ちます。10秒以上保持できずすぐに倒れてしまう場合は、麻痺や小脳の平衡感覚を司る機能の障害がある可能性があります。

指鼻試験:まっすぐ伸ばした人差し指を鼻の頭につけることを繰り返します。小脳による平衡感覚が障害されている場合、人差し指がなかなか鼻の頭にピタッとくっつけることができなくなります。

このように簡単に自分で評価できます。その結果少しでもおかしいなと思う場合は、すぐに脳神経外科や脳神経内科を受診しましょう。受診した結果、脳腫瘍ではなくても、脳梗塞や脳出血などの脳の病気が判明する可能性があります。脳は早期発見が非常に重要となります。

脳ドックとは

脳ドックとは、脳のMRI検査のことです。MRI検査は脳の中の性質を評価できます。またMRAといって脳の血管の状態などを評価できるものもあります。

以前に脳梗塞や脳出血を起こしていた場合も脳に跡が残っているのが確認できます。脳の疾患は、脳が圧迫を受けない限り無症状であることがほとんどです。そのため、無症状だから異常がないということにはならないのです。

実際に脳ドックで異常が見つかって受診する人も多数います。何も症状がないから安心ではなく、一度脳ドックを受けて異常がないかどうか確認することは早期発見の意味でも、発症してから後遺症を残さないようにするためにも大切なことです。

いかがでしたでしょうか。脳腫瘍についてさまざまな研究がなされており、少しずつですが、以前よりもわかってきたことが多くなっています。しかし、まだまだ完全に解明できているわけではなく、治療法に関してもまだ十分に脳腫瘍を縮小できるようなものは出てきていません。

そのため、一番重要なことは早期に発見することとなります。何かおかしいなと思ったら、様子をみるのではなく、一度検査を受けることをおすすめします。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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