熱中症で頭が痛い…脳に後遺症が残ることも?脳梗塞との違いは?
熱中症では、体温が上がり、体内の水分や塩分のバランスが崩れることで、体温の調整機能が働かなくなります。
これにより、体温の上昇やめまい、けいれん、頭痛などのさまざまな症状を起こし、中には重症になったり、後遺症が残ったりするケースもあります。
ここでは熱中症の重症度や後遺症、脳梗塞との違いについて解説します。
目次
熱中症の重症度と症状
熱中症は重症度によって、次の3段階に分けられます。
I度(軽度)
軽度の症状にはめまい、失神があります。脳への血流が瞬間的に不十分になることで、たちくらみや失神を起こします。熱失神と呼ぶこともあります。運動をやめた直後に起こることが多いとされています。
また、筋肉痛や筋肉の硬直が生じます。発汗に伴う塩分(ナトリウム等)の欠乏によって生じるもので、熱けいれんと呼ぶこともあります。I度のときは、意識は正常で体温、皮膚も正常です。
II度(中等度)
中等度になると頭痛、吐き気、嘔吐、下痢、倦怠感、虚脱感、失神、気分の不快、判断力や集中力の低下など、いくつかの症状が重なって起こってきます。II度のときは、意識は正常ですが、体温が上がり(~39℃)、皮膚が冷たくなってきます。
III度(重度)
重度になってしまうと、意識障害、けいれん、手足の運動障害、おかしな言動や行動、過呼吸、ショック症状などがII度の症状に重なり合ってきます。意識障害が生じ、高体温となります。
熱中症で頭痛が生じるメカニズム
暑さで体温が上昇すると、体にこもった熱を外に逃すために体が体温を下げようとします。
そのため、発汗や熱放散が起こります。炎天下や暑い室内で長時間労働やスポーツをすると、体温を下げようと大量に汗をかいてしまいます。大量の発汗によって、体内の水分・塩分が不足することで、血流の流れが悪くなります。
そうなることで、熱中症I度の症状が現れてきます。その状態で適切に水分や塩分の補給や身体の冷却が行われないと、脳への血流低下や温度上昇が起きます。そうなることで頭痛が生じます。
熱中症の脳への影響…後遺症が残ることも?
熱中症が重症化したり、処置が遅くなってしまうと、場合によっては脳や脊髄などの中枢神経、肝臓、腎臓、心筋、肺などのさまざまな臓器に障害を起こし後遺症が残ることがあります。
特に中枢神経障害は熱中症の治療後にも後遺症として残る可能性があるといわれています。
中枢神経障害
熱中症で脳の血流が低下することで、中枢神経の障害が起こることがあります。
高次脳機能障害
脳に損傷が生じたことにより記憶力障害や注意障害、意欲低下などの障害が残ります。
嚥下障害
嚥下は複数の器官が連携して成立します。その動作を命じる脳が障害されることで食べ物が飲み込めなくなります。
小脳失調
運動機能をつかさどる小脳が障害されると起立や歩行時にふらつきがみられるようになります。めまいや歩行のふらつき、指先を使った細かな動作が難しくなります。
失語
言語を理解する中枢部位の脳血流が低下することで、会話や文章が理解できなくなります。
パーキンソン症候群
パーキンソン病には安静時の振戦、筋肉のこわばり、姿勢保持困難といった症状があります。他の原因でこのような症状を示すことをパーキンソン症候群と呼びます。熱中症では中枢神経が障害されることで、このパーキンソン症候群を引き起こします。
これらの症状は主に重症の熱中症で起こる可能性があります。熱中症の治療をしても1年以上も存在し続けることがあります。
熱中症と脳梗塞の違い
熱中症と初期症状が似ているものとして脳梗塞があります。そのため、注意が必要となってきます。
脳梗塞には、熱中症の症状に加えて顔や腕のしびれ・麻痺、構音障害、半身脱力などの症状があります。また熱中症を契機として脳梗塞を発症することもあります。
体の水分が不足し、血液中の水分が減ってくると、血液の濃度が濃くなって、体内の血液がドロドロになってきます。これにより、血管内に血栓ができて血管を詰まらせてしまうのです。麻痺が生じた際は、熱中症だろうと済ませるのではなく、すぐに救急車を呼ぶか、救急病院を受診しましょう。
いかがでしたでしょうか。暑い日が続くことで熱中症の救急病院の受診が増えます。熱中症はこまめに塩分、水分を摂取する、体温の冷却を意識することで防ぐことができます。
重症化すると後遺症をのこすため、意識して予防に努めましょう。また、周囲の人にも気を配り、少しでもおかしいと感じたらすぐに処置を始めるようにしましょう。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。