薬で解けない胆石の特徴は?治療法の種類と内科的・外科的治療の違い
胆石の治療には内科的治療と外科的治療があります。また外科的治療には、従来の開腹手術のほかに、昨今主流となっている腹腔鏡手術があります。
ここでは胆石の治療法を取り上げ、それぞれの違いについて解説します。
目次
経口溶解療法
胆石と診断された際に、手術を受けずに治療を受けたい場合には経口溶解療法が検討されます。
経口溶解療法では、胆石を溶かす作用を有するウルソデオキシコール酸(商品名:ウルソ®)を定期的に内服します。
この薬剤を服用すると、胆汁の分泌量を増加させて、胆汁の性質を変化させることで胆石を溶かしやすくしてくれますが、服用するためには条件があります。一般的に、胆石の種類はコレステロール胆石であり、胆のう機能が良好な場合に限定されます。
胆石溶解薬剤は主に複数個のコレステロール含有率が高い胆石の治療として優れており、それ以外にも胆石のサイズが15mm以内であること、胆石が浮遊していること、X線検査にて石灰化を認めないことなどが治療条件として定められています。
経口溶解療法の特徴
胆汁酸は胆汁中に含まれている成分であり、この胆汁酸を含む薬剤を内服することで胆汁の性質や組成が変化してコレステロールを溶かす能力が増加するといわれています。
薬剤による治療は、主にコレステロール成分を多く含有している胆石病変を溶解する方法であり、ウルソデオキシコール酸やケノデオキシコール酸という利胆薬を使用します。
特に前者の薬剤では、胆汁の流れを良好にして、コレステロール性胆石を効率よく溶解する作用を持っており、同時にコレステロールの吸収を抑制し、肝臓から胆汁内部へコレステロールを排泄しないように抑制することで胆石が合成されるのを予防する効果があります。
また、後者の薬物動態としては、コレステロールを作成する過程で働く酵素であるHMG-CoA還元酵素を抑えることによって、胆汁内部に含まれるコレステロ-ル濃度を低下させて胆石を溶解しやすくする効果が認められますが、副作用として下痢が多いのが特徴です。
経口溶解療法の予後
経口溶解療法による胆石病変部の消失率は、およそ10~30%程度であると考えられています。
1か月につき胆石のサイズが1ミリ程度小さくなると予想されます。完全に胆石が消失するためには、胆石の大きさによって期間が異なりますが、おおむね半年から数年前後の治癒時間が必要と考えられます。
経口的に溶解剤を内服することに伴って、代表的な副作用として、下痢症状が出現することがあり、全体の約5%の患者さんに認められることが判明しています。
薬で溶けない胆石の特徴
溶解療法は、主に「ウルソデ、オキシコール酸」による薬物治療であり、このお薬は、コレステロールでできた胆石を溶かす効果がありますが、胆石の大きさ、種類によって石の溶け方は異なり、個人差があります。薬で溶かすのが難しい胆石について確認しましょう。
コレステロール以外の成分でできた胆石
胆石の成分はコレステロールだけではなく、ビリルビン・カルシウム石などさまざまな色素から出来ている石もあり、一般的に「コレステロールを多く含む胆石」でないと、いくら胆石溶解剤を服用しても顕著な効果は期待できません。
CT検査で白く映る結石(黒色石、ビリルビン・カルシウム石、混合石、混成石)は、基本的に薬の治療では溶けません。
低栄養や低タンパク質の状態が続くと胆汁成分の1つ、ビリルビンがカルシウムと結合しやすい物質へと化学変化を起こして、ビリルビン・カルシウムという結晶を作ります。
以前はこの低栄養状態の胆石症が多かったのですが、現在では全体の20%以下に減っています。
ビリルビン胆石は、胆汁色素のビリルビンがカルシウムとともに固まったもので、茶色、または黒っぽい色をしており、胆汁の流れが悪く、胆道に細菌感染があると形成されるといわれていて、利胆薬にも溶けにくい成分として知られています。
大きい胆石
胆石はその種類によって、溶ける胆石と溶けない胆石があり、通常大きい胆石の場合には物理的に利胆薬に溶けにくいといわれています。
コレステロール胆石の場合は、胆石を溶かす胆汁酸の薬があり、このウルソ(商品名)と呼ばれる薬を内服すると小さな胆石は溶ける可能性がありますが、石のように固くなってしまった胆石や大きい胆石は溶解効果が乏しいと考えられています。
溶けない胆石の場合、いくら薬を飲んでも効果がないので薬を始める前にしっかり検査をして胆石の種類を見極めることが大切です。
胆石も、小さな砂状のものほど溶けやすいということになりますし、一般には直径が2センチをこえる石は、なかなか溶けにくいとされています。
石灰化を伴う胆石
手術によらない治療(内科的治療)では、胆汁酸であるウルソデオキシコール酸(ウルソ)を充分量服用し、胆汁中のバランスを正常に戻すことが行われていますが、全部の石がこれによって溶けて消えるわけではありません。
レントゲンで写るカルシウムの多い石は、一般に溶けませんし、表面が堅い殻で覆われていると、中身がいくらコレステロールで出来ていても、コレステロールを溶かし出すことはできません。
胆汁が届かない胆石
当然ながら、溶かすべき胆石がある部位に、溶解薬が到達しないと一定の効き目がありません。
正常であれば、胆嚢内部に胆汁が入らないことはありませんが、胆石病変に伴って胆嚢で炎症を繰り返すと、胆嚢への出入り口である胆嚢管という細い管の部分が細くなる、あるいは閉塞してしまうことがあります。
その場合には、自由に胆汁が胆嚢内部に出入りすることができなくなり、胆石が胆嚢内にたくさん詰まっていてもほとんど胆汁は胆嚢に入れず、溶解薬が十分に患部に到達せずに胆石が溶けないことになります。
胆石の体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)
体外衝撃波結石破砕療法(ESWL)は、1個から単数個のコレステロール成分を多く含んでいる胆石病変に対する治療策として注目されています。
治療対象基準としては、例えば、胆嚢が機能的であること、直径サイズで30mm以内の胆石、胆石個数が3個以内であること、胆管結石を合併していないこと、結石の石灰化を認めないことなどが挙げられます。
この治療は胆石を溶解するのではなく、衝撃波によって小さく砕くものですので、胆嚢内部で砕かれた石が胆嚢管や胆管部で嵌頓(かんとん)して詰まり、胆嚢炎や膵炎を合併する危険性があることを認識しておく必要があります。
体外衝撃波結石破砕療法の特徴
体外衝撃波結石破砕療法は、体外部から専用機器を用いて衝撃波を照射して患部に当て、胆石を小さく破砕して、病変部を消失させることを期待します。通常では破砕された石のかけらは胆嚢管、総胆管を経由して十二指腸乳頭部へと排出されることになります。
実際に施行する際には、強力な超音波装置を患部に照射して胆石を粉砕化し、1回あたりに要する治療時間は30分から1時間程度であると考えられています。
一般的に、通院治療が可能であり、1回ずつの治療を4週間程度の間隔を空けながら数回に分けて実践することになります。
注意すべき点は、2cmを超える大きいサイズの胆石病変やカルシウムを多く含む胆石に対してはほとんど効果を示さないことです。
体外衝撃波結石破砕療法の予後
体外衝撃波結石破砕療法における、胆石病変部の消失割合はおよそ50%程度であり、治療に要する期間は個々のケースによって治療効果や患者背景にもよりますが概ね3か月から半年前後であるといわれています。
他の臓器や組織を損傷せずに衝撃波を体外から病変患部に向けて照射して胆石のみを細かく粉砕できる治療手段ですが、治療を繰り返しても病変部を有効的に破砕できない場合には、次の章で解説する腹腔鏡下胆嚢摘出術などの外科的治療の適応となります。
胆石の胆嚢摘出術
胆嚢摘出術とは、胆嚢を胆石病変と一緒に外科的治療によって摘出する手術方法であり、100年以上前から実用されてきた治療手段です。
生体にとって胆嚢という臓器は必要なのかどうかという疑問が生まれます。胆嚢を有していない動物も存在しますし、胆嚢摘出後も代償的に上手く身体が調整して胆汁代謝や胆汁の流れをスムーズにしてくれるものと説明されています。
特に、患者さんにとって低侵襲である腹腔鏡下胆嚢摘出術に関しては、1987年にフランスで初めて胆嚢摘出術が施行されたことを契機にして、その後欧米を中心に爆発的に普及しました。
日本においても1990年以来、本治療策は盛んに実践されて急速に普及し、胆石症に対する治療方法の定型手段として確立されています。
胆汁性腹膜炎の場合には外科的手術を行います。胆汁成分が腹腔内に漏れ出ることで腹膜炎の状態に陥ると、仮にそのまま治療せずに放置すれば重篤化して敗血症になって命に直結します。早期的に胆嚢を摘出する手術治療を実行する必要があります。
腹腔鏡手術と開腹術の違い
胆石症に対する腹腔鏡手術は腹部に3か所、あるいは4か所程度1cm大の穴を開けて、同部より専用カメラや鉗子などの医療手術器具を挿入して外科チームがモニター画面を観察しながら行う手術療法です。
基本的には、全身麻酔下で実践され、おなかの中に炭酸ガスを注入して膨満させた気腹状態にして、専用の手術器具を操作して胆嚢を摘出する手術策であり、従来行われてきた開腹術に比べてさまざまな利点が挙げられます。
例えば、患者さんに対して侵襲が少なく術後回復が速い、またそれに伴って入院期間が短縮される、そして腹部の切開創が小さくて美容的にも目立たない、などの利点があります。
胆嚢摘出術の予後
腹腔鏡手術では傷が小さく美容上も優れていますし、術後の痛みが軽減されてリハビリが順調に進んで早期的に退院できるという長所があり、予後的にも比較的良好であると考えられます。
手術を施行した翌日には、座って飲水や食事ができますし、ベッドから立位保持して歩いてトイレまで移動できるようになるなど、早期の社会復帰が可能となります。
内科的治療と外科的治療の違い
経口溶解療法や体外衝撃波結石破砕術などの内科的治療は、胆嚢摘出術などを代表とする外科的治療とは異なって胆嚢を切除せずに温存するため、いったん病状が改善したとしても胆石を再発する可能性があります。
そのため胆石に対する内科的な治療を実践する場合には、胆石を溶解、あるいは粉砕化することのみならず治療後に胆石症が再発することを予防することが重要です。
一般的に、胆石の場合には病変部が完全に消失してから約3年間で3割程度の症例に再発所見を認めます。胆石が初期治療で消失した後も定期的に検査を受けることをお勧めします。
胆石が再発した場合の治療策としては、再発胆石のほとんどがコレステロール性の結石であるため胆石溶解療法が有効とされています。
まとめ
これまで胆石の内科的治療や外科的治療について解説してきました。
胆石症は有意な症状が乏しいケースでは治療を受けることなく、日常生活にも多大な支障はありませんが、胆石発作や急性胆嚢炎などを合併することがあります。
基本的に、石灰化が無くコレステロ-ル含有が豊富な胆石病変の場合には、経過を慎重にフォローするか、一定の条件のもとで経口胆石溶解療法や体外衝撃波結石破砕療法などの内科的治療を行います。
また、石灰化を強く認める胆石病変である場合や根治的治療を目指すケースでは、患者さんの状態が許せば腹腔鏡下胆嚢摘出術による治療が昨今では主流となっています。また胆汁性腹膜炎の場合には早期的に外科手術を行う必要があります。
今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。