起立性頭痛(脳脊髄液減少症)の症状の特徴と治療法
起立性頭痛とは、名前の通り立つと生じる頭痛のことです。横になると改善するため、怠け病と揶揄されることがあります。はたから見るとゴロゴロ横になっていると調子がいいけれど、起き上がると辛そうにするので怠けているように見えるのですね。
ここでは起立性頭痛の症状の特徴や、起立性調節障害との違いについて解説します。
起立性頭痛の原因になる脳脊髄液減少症とは
起立性頭痛の原因となるものとして脳脊髄液減少症が挙げられます。これは、脳や脊髄とそれらを包む膜(硬膜)との間にある空間(髄液腔)を満たしている無色透明な液体の髄液が何らかの原因で減ることで生じます。
脳脊髄液減少症が起こる原因としては、交通事故、スポーツなどの外傷によって硬膜が傷つき、そこから髄液が漏れる場合と、原因不明である特発性があります。
起立性頭痛の症状の特徴
起立後5分以内に頭痛が出現します。しかし、横になると30分以内に改善または消失する頭痛が特徴的です。単に頭痛のみならず、背部痛、腰痛、四肢痛を伴うこともあり、めまい、耳鳴り、難聴、複視などの脳神経症状、微熱、血圧異常、動悸、胃腸障害などの自律神経症、また記憶力低下、思考力低下、集中力低下、睡眠障害などの大脳機能障害、鬱(うつ)症状などさまざまな症状を伴うことがあります。
起立性調節障害との違い
起立性頭痛と似たような言葉に起立性調節障害があります。これは、腹痛や全身のだるさ、朝起きられないといった症状(不定愁訴)が出て、自律神経の調節がうまくいかない体質が原因で生じます。
自律神経の調節がうまくいかないと、立ち上がった際に血圧が低下したり、心拍数が上がり過ぎたり、調節に時間がかかりすぎたりします。小学校高学年〜中学生に多くみられますが、この時期はちょうど第二次性徴期と重なるため、あいまいになりがちです。
起立性調節障害に伴う頭痛
起立性調節障害で生じる症状の一つに頭痛があります。意外と起立性調節障害の頭痛症状はあまり知られていません。
特徴としては、ズキズキする拍動性の頭痛があり、1日の中で痛くなる時間がだいたい決まっていることです。最初は片頭痛と診断していても、後に起立性調節障害と診断されていることもあります。
起立性頭痛(脳脊髄液減少症)の検査と治療
起立性頭痛の検査や治療について見てみましょう。
検査方法
脳脊髄液減少症であるかどうかを判断するためには、頭部MRIでびまん性の硬膜造影所見と髄液腔の減少を確認することが大事です。
その他の検査としては、直接髄液漏を起こしている部位を探す検査として、脊髄MRミエログラフィー、CTミエログラフィー、脳槽シンチグラフィーなどが挙げられます。
保存的治療
起立性頭痛が生じたときの治療としては、まずは保存的治療となります。約2週間安静にし、その間に十分な水分(追加摂取1000〜2000ml/日)を摂取します。
ブラッドパッチ治療
安静、水分摂取でも改善できない場合にはブラッドパッチという治療が有効となることがあります。これは、平成28年4月に保険適応となりました。
先ほど挙げた検査で直接髄液が漏出している部位が特定できたら、自身の血液を採取して(自家血)、その自家血を硬膜外腔に注入します(ブラッドパッチ)。血液が固まり、漏出している部位にうまくかぶさってくれれば、脳脊髄減少症が改善し、症状が劇的に改善します。
いかがでしたでしょうか。脳脊髄液減少症とはなかなか耳馴染みのない言葉かと思いますが、交通外傷や転倒などを契機として発症し、起き上がれないため、ずっと悩み続けるということがあります。
頭痛のために不登校になったり、仕事を辞めたり、離婚したりと人生を変えてしまう可能性のある疾患です。起立性頭痛かなと思った場合は、脳神経外科がある病院を受診することをおすすめします。
<執筆・監修>
九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師
高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。