若い女性の手足のしびれの原因はストレス?それとも病気?

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若い女性に見られる手足のしびれは、ストレスによる自律神経失調症によるものかもしれません。一方で、手足のしびれは、脳や脊椎の病気によっても引き起こされます。ここでは手足のしびれを引き起こすさまざまな病気について解説します。

若い女性の手足のしびれは自律神経失調症かも?

自律神経は交感神経と副交感神経の2つの神経で構成されます。交感神経とは主に日中活発に働く神経です。それに対して、副交感神経は夜間やリラックス時に活発となる神経になります。この2つの神経のバランスが保たれている状態が正常となります。

しかし、ストレスが心身に影響を及ぼすと、この2つの神経のバランスが崩れ、不調となります。これが、自律神経失調症となります。

自律神経失調症のよくある症状

自律神経失調症の症状は、大きく分けて身体的症状と精神的症状の2つがあります。

身体的症状

自律神経失調症の主な身体的症状の一つが手足のしびれとなります。ストレスの蓄積によって筋肉の硬直や血行不良を引き起こし、結果としてしびれ症状を出現させます。

しびれ以外にもめまい・耳鳴り、立ちくらみ、息切れ、慢性的なだるさ、便秘・下痢、手足の震え、睡眠の質の低下、肩こり・頭痛などの症状が一時的ではなく、慢性的に発生します。

精神的症状

自律神経失調症の精神症状は、パニック障害・不安障害・不安神経症などと症状が似ています。イライラ、不安感、落ち着きがない、情緒不安定、やる気が起きない、緊張状態などの症状が出現します。また、精神的症状が悪化すると、うつ病の併発リスクが高まります。

自律神経失調症を改善するには

自律神経失調症は交感神経と副交感神経のバランスが乱れることによって起こるため、改善させるには2つの神経のバランスを整えることが必要となります。

薬物療法

症状に合わせて薬を処方します。不眠や寝不足がある場合は睡眠導入剤、精神的症状がみられる場合は抗不安薬を処方して、不安を軽減し、体の緊張をほぐしていきます。

このように薬物療法は根本的な治し方というよりも自律神経失調症によって引き起こされた症状を緩和させるための治療となります。

精神療法

ストレスによる過度な緊張状態は交感神経の働きを高めます。このストレスを緩和するため、認知行動療法や自律訓練療法、音楽療法、カウンセリング、環境を整えることが必要となります。

なお手足のしびれは自律神経失調症のみではなく、他の原因もあります。ここからは、その他の原因について見ていきましょう。

手足のしびれの原因になる脳の病気

脳出血や脳梗塞が発生すると、脳皮質や末梢神経から感覚神経が通る部分が障害されます。それらの機能に影響が出ることで、障害されている反対側の手足にしびれが起こります。

また、脳腫瘍がある場合も、徐々にしびれが出現したり、感覚が鈍くなることがあります。

手足のしびれの原因になる脊椎の病気

脊椎の病気によって手足のしびれが生じることがあります。

変形性頚椎症

年齢を重ねていくことで頚椎が変形し、骨棘ができた状態を変形性頚椎症といいます。この骨棘が脊髄や神経根とよばれる神経を圧迫・刺激することでしびれ、疼痛、脱力などの症状が生じます。

頚椎椎間板ヘルニア

頚椎で椎間板の組織が飛び出し、脊髄や神経根を圧迫します。そのため、上肢のしびれや痛み、脱力などが発生します。

頚椎後縦靭帯骨化症

頚椎を支えている後縦靭帯が骨になってしまう病気です。その影響で骨が脊髄の前にあたるため、脊髄を圧迫し、しびれや運動麻痺につながることがあります。

腰椎椎間板ヘルニア

腰椎で椎間板が飛び出してしまうと、脊髄や神経根を圧迫します。それによって下肢のしびれや痛み、脱力などが生じます。

手足のしびれの原因になる末梢神経の病気

末梢神経の病気によって手足のしびれが生じることがあります。

胸郭出口症候群

首の長い、なで肩の女性や20代の方がかかりやすい病気です。第一肋骨と鎖骨との間にできた胸郭出口が狭くなることで、そこを通っている腕神経叢や、鎖骨下動静脈という血管が圧迫されることで、手や腕のだるさ、痛みが出現します。

手根管症候群

手首のところに、靭帯に囲まれた管があります(手根管)。この手根管に正中神経が通っています。手首を頻繁に使うと、この手根管の部分で正中神経が圧迫されてしまい、手のしびれや痛み、運動障害が引き起こされます。

手足のしびれの原因になる糖尿病

糖尿病は、小血管の動脈硬化を引き起こします。この小血管の動脈硬化によって、神経に栄養を送っている栄養血管に血液がいかなくなり、神経障害が出現します。その結果、手足の先がジンジンするようなしびれを感じ、悪化すると痛みに変わります。

手足のしびれは何科を受診すべき?

今までみてきたようにしびれの原因にもさまざまあります。内科的な原因によるしびれは内科に、脊椎に関連するしびれは整形外科に、脳の病気に関連するしびれは脳神経内科や脳神経外科を受診するのが一般的です。

しかし、何科を受診したらよいか簡単には判断できません。もし、かかりつけの病院がある場合は、まずはかかりつけ医に相談しましょう。病歴や症状から可能性の高い病院を紹介してもらえると思います。

かかりつけ医がない場合は、緊急性の高い脳神経内科や脳神経外科を受診して、検査してもらいましょう。そして、必要に応じて他の科を受診しましょう。

急に手足がしびれるとびっくりしますよね。なかでも緊急性の高い脳の病気の場合は、両側なのか片側だけなのかも重要となってきます。片側だけであれば、様子を見ずに、脳神経内科や脳神経外科のある病院を受診することをおすすめします。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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