女性を悩ませる頭痛と吐き気の原因…月経や閉経の影響も?

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頭痛持ちには女性が多いというイメージがありますよね。頭痛についてみてみると、緊張型頭痛は男性の約1.5倍も女性の方が多く、片頭痛に関しては男性の約3倍も女性の方が多いといわれています。こういったことから、このようなイメージがあるのかもしれません。逆に群発頭痛は比較的男性が多いとされています。

ここでは女性と関係のある片頭痛やその他の頭痛について解説します。

吐き気を伴うことがある片頭痛

片頭痛は脳の血管が急に拡張することで起こります。症状としては、頭の片側または両側のこめかみ付近がズキンズキンと痛み、月に数回起こります。

気圧の変動や環境の変化、寝不足や心理的なストレスから来ることも多く、吐き気を伴うこともしばしばです。また、音をうるさく感じたり、光を眩しく感じたりするなど、感覚が過敏になり、まれに脱力やしびれがみられます。

片頭痛以外の頭痛の可能性も

ただし、頭痛に関しては片頭痛のみではなく、さまざまな種類があります。片頭痛は一次性頭痛に相当し「なんとなく頭が痛いかな」から頭痛が始まります。

しかし「何時何分から痛くなった」、「この作業をしているときに痛くなった」などの痛くなった時間がわかる場合や、突発的に「ハンマーで殴られたような頭痛がした」などの、今まで経験がないような痛みがある場合は注意が必要です。

くも膜下出血や解離性脳動脈瘤、脳腫瘍などの二次性頭痛の可能性もあるため、そうした頭痛の場合はすぐに病院を受診しましょう。

女性ホルモン「エストロゲン」と頭痛の関係

女性に片頭痛が多いのには、女性ホルモンと深い関係があるからと考えられています。女性ホルモンには卵胞ホルモン(エストロゲン)と黄体ホルモン(プロゲステロン)という2つがあり、これらのホルモンの分泌量がおよそ1か月で増えたり減ったりして、月経を起こします。

この2つのホルモンのうち、特にエストロゲンの分泌が急激に減少するとき、脳内のセロトニンやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれる神経伝達物質のバランスが変化します。このことにより、神経に炎症が起きたり、頭の血管が拡張したりすることで頭痛が引き起こされると考えられています。

女性を悩ませるさまざまな頭痛の原因

女性を悩ませる頭痛にはいくつもの種類があります。ここでは代表的なものを紹介します。

月経時片頭痛

前述したように片頭痛はエストロゲンと関連しています。エストロゲンは月経周期で大きく変動し、エストロゲンが急激に減少すると、セロトニンという脳内物質に影響して頭の血管が拡張し、片頭痛が起こります。そのため、エストロゲンが減少する排卵日や月経時に頭痛が起こることが多いです。

妊娠高血圧症候群

妊娠高血圧症候群とは、妊娠20週以降、分娩12週までの間に高血圧となる疾患であり、時に蛋白尿や全身の臓器障害を伴うことがあります。

原因は、はっきりとわかっておらず、ひとつの仮説として、母体から胎児に酸素や栄養を補給する胎盤がうまく作られないためといわれています。初産婦や35歳以上、多胎妊娠、家系に高血圧の人がいる場合になりやすいです。

妊娠中、特に体調が安定する中期・後期にはエストロゲンの分泌が安定して高くなるため、片頭痛は軽減するといわれていますが、逆に頭痛が強くなることがあります。症状としては高血圧や蛋白尿に加えてむくみなどがあります。この高血圧によって頭痛が生じるのです。

その他にも妊娠高血圧症候群が引き起こす病気には以下のものが挙げられます。

・脳出血:脳動脈瘤や脳動静脈奇形がある人は高血圧によりくも膜下出血や脳出血を起こしやすい傾向にある。
・子癇:意識消失と痙攣の発作が起きる。
・HELLP症候群:溶血性貧血、肝逸脱酵素上昇、血小板低下の症状を引き起こす。
・可逆性白質脳症:一時的な視力障害を引き起こす。
・急性妊娠脂肪肝:急激に肝不全、腎不全、血液凝固障害などを引き起こすリスクがある。
・高血圧緊急症:高血圧のまま血圧がコントロールできなくなる。
・胎児発育不全:胎児の成長が妊娠数週に合わせた発育過程から遅れてしまう。
・常位胎盤早期剥離:正常な位置にある胎盤が出産より早い段階で剥がれてしまう。
・子宮胎盤機能不全:胎児への栄養と酸素の供給が不十分になってしまう。
・胎児死亡:胎児が子宮内で死亡してしまう。

このように胎児にまで影響を及ぼすため、非常に注意が必要となります。

ピルの副作用

ピルには女性ホルモンが含まれています。これを内服することで避妊や月経症状(過多月経、月経痛)の症状緩和などが期待されます。

しかし、副作用として頭痛が報告されています。その他にも重大な合併症として静脈血栓塞栓症のリスク増加(10万人に15~25人程度)があり、喫煙者ではさらに心筋梗塞のリスクも増加します。

血糖値スパイクによる片頭痛

血糖値スパイクとは、血糖値が急に高くなってその後急に低くなる現象のことです。血糖値スパイクは大量の活性酸素を血管内に生じさせることがわかっており、この活性酸素が血管を傷つけて動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞を起こすリスクを上昇させてしまいます。

この急激な動きは体に大きく影響します。このような血糖値の大きな変動や血糖値が低すぎる時間が長いことが片頭痛を引き起こす原因の一つになります。糖尿病があって頭痛が起きた場合、血糖のコントロールがうまくできていない可能性があります。血糖値スパイクを防ぐためにも食事や服薬のタイミングなどに注意が必要となります。

妊娠中や閉経後は片頭痛が軽減することも

頭痛が引き起こされるのは、エストロゲンの分泌が急激に減少するとき、脳内のセロトニンやカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)と呼ばれる神経伝達物質のバランスが変化することで、神経に炎症が起きたり、頭の血管が拡張したりするときだと考えられます。

妊娠中はエストロゲンの分泌量が高い状態で安定しているので、ホルモンの急激な変化が起こらず、月経関連の片頭痛は起こりにくくなります。ただし、出産後にホルモン分泌が元に戻ると再度同様に片頭痛が再発します。閉経後はエストロゲンの分泌がほぼなくなるため、妊娠中と同様に片頭痛の頻度は軽減します。

片頭痛への対処法

片頭痛への対処法としては、暗い静かな部屋で安静にすることと、冷やすことです。片頭痛は体を動かすと痛みが助長されます。そのため、できるだけ安静を保ち、外部からの刺激をなるべく避けるようにしましょう。また、痛む部位を冷たいタオルや保冷剤などで冷やすと痛みが緩和されます。

片頭痛が起こらないように予防することも大切です。生活習慣の乱れが原因で頭痛が発生することが多く、頭痛を引き起こしやすい生活習慣(睡眠不足や、カフェイン・頭痛薬の過剰摂取など)を見直すことが対策になります。

月経前に頭痛が起こりやすい人は、月経周期や頭痛の起こるタイミングの把握から始めましょう。起こりやすいタイミングや原因を知り、セルフケアに努めたり、片頭痛が起こる前に回避のための行動をしたりするとよいでしょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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