うつ予防に役立つ!思考のクセと生活習慣の改善方法

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「あの人うつなのかなぁ」「疲れやすくてちょっとうつっぽい」など普段の会話にもよく出てくる「うつ病」。

うつ病とは気分の落ちこみや、不眠、食欲の低下、集中力の低下、楽しめていたことが楽しめなくなるなどさまざまな症状をきたす心の病気です。

うつ病は、ケガや疾病が原因の外因性うつ病やストレスが主な原因の心因性うつ病、遺伝的な要因の内因性うつ病に分けられます。上記のいろいろな要因が組み合わさった結果、脳内のセロトニンやドパミンなど神経伝達物質の機能低下が関与していると考えられています。

うつ病は、誰でもなりうる病気ではありますが、なりやすい人・なりにくい人がいるのも事実です。ここではうつ病になりやすい性格や生活習慣を取り上げ、改善方法について解説します。

うつ病になりやすい性格

うつ病にかかりやすいといわれている、メランコリー親和型と呼ばれる性格傾向があります。

この性格は真面目で責任感が強く、几帳面で秩序を重んじる、周囲に気を使いすぎるなどの特徴があります。このような真面目な性格のため、総じて仕事もできて、周囲からの評価も高く頼りにされます。

そういった一方で柔軟性に欠け、自責的であったり、1人で何でも抱え込もうとするため、うつ病になりやすいといった傾向があるのです。

また、最近は上記のメランコリー親和型と呼ばれる性格と異なり、自己中心的、依存的、何か起こった際に周囲のせいにする他責的、繊細で傷つきやすいなどの性格傾向をもつ人のうつ病が散見されるようになりました。このような性格傾向をもったうつ病を新型うつ病と呼びます。

一般的にうつ病というと部屋から出られないなどの引きこもりがイメージされがちですが、このような新型うつ病のような方は、うつ病を理由に会社を休んで遊びに出かけるなどを平気で行う、従来のイメージとは違った行動をします。

うつ病になりやすい生活習慣

うつ病は生活習慣と密接な関係があります。

不規則な生活によるストレスはうつ病の原因となります。そのため、普段から無理をして、休みの日も十分な休養を取らず、常にエネルギーが不足した状態が続いている人は、うつ病にかかりやすい生活習慣を送っているといえるでしょう。

また、食事に関しても、不規則で食事内容も偏っており、過度な飲酒を繰り返し、運動不足な状態が続いている、自分なりの趣味や楽しみがなく、くつろぐ時間が取れないといった人もまた、うつ病になりやすいと考えられます。

それでは、うつ病を予防するためには、どのようにしていったらよいのでしょうか?

うつ予防に役立つ「思考のクセ」の改善方法

うつ病は、責任感が強い人や完璧主義の人に多く、こういったタイプの人は、妥協を許さない傾向があります。

しかし、いつも非の打ちどころがない結果に恵まれることは稀です。そういったときに、何か欠点があると、それだけでネガティブな感情を引きずりがちです。そのネガティブな感情にならないために、認識を変えていくことが必要となってきます。

自分を責める癖を直す努力をする

自分はダメな人間だ、まだこれだけしかできていない、全然うまくできていない。などといった思考になり、自分を過度に責めてしまう傾向にあります。この自分を責める癖を直す努力をしていく必要があります。

こうでなくてはならないをやめる

周囲の人たちが持っている自分のイメージにならなくてはならない、周囲の役に立つ人間にならなくてはならないという気持ちが強いです。

それがうまくいかなかったとき、自分は周囲の役に立っていない人間だという認識になり、周りの人との関係がうまくいっていないと感じるようになります。まずは、この自分はこうでなくてはならないといった認識をやめていきましょう。

考えすぎや頑張り過ぎをやめる

一つ一つのことに常に全力で完璧にしようとする気持ちが強いです。そのため、考えすぎたり、頑張りすぎてしまいます。しかし、そのように心のエネルギーを使いすぎてしまうと疲れてしまいうつ病へと繋がっていきます。そのため、自分のペースを見つけて、自分のペース以上にならないように心がけましょう。

このような認識を変化させる認知行動療法にはいろいろな手法があります。たとえば、気になるできごとやそのときの自分の考え方を紙に書き出し、振り返るといったことを繰り返すことで少しずつ自分の認識を修正していき、認識のクセを修正していきます。

大事なのは「少しずつ」というところです。基本的に数か月単位の期間がかかってくるため、日記のような感覚で今日起こった出来事、その時に自分が思ったことなどを書き出し、それをポジティブに変えるといったことを繰り返していきましょう。

うつ予防に役立つ生活習慣の改善方法

うつ病の予防のためには、規則正しい生活習慣が必要となってきます。

良質な睡眠をとる

脳内ホルモンは夜10時から2時頃までの間に脳内で作られるため、質の良い睡眠が大切になります。しかし、夜遅くまでパソコンやスマホ、テレビなどを見ていると、睡眠の質が悪くなり、脳内ホルモンの分泌がうまくできなくなります。

そのため睡眠1~2時間前はパソコンのブルーライトを浴びない、スマホを操作しないなど自分なりのルールを決めて、質の良い睡眠をとるようにしましょう。

朝日を浴びる

人は日光を浴びることで脳内のセロトニンが大量に放出されます。うつ病の原因と考えられているセロトニンが、日光をあびることでたくさん得ることができるのです。

また、太陽光を浴びることで睡眠ホルモンのメラトニンの分泌が停止し、体内時計がリセットされます。そのため、朝起きたらカーテンを開けて日光を浴びましょう。そうすることで正しい睡眠のサイクルを作ることができます。

運動を習慣にする

運動すると自律神経の交感神経が活性化されて優位になり、意欲的でポジティブな思考になるといわれています。さらに脳内で分泌されるエンドルフィンが、気分の高揚・幸福感を促進させ、セロトニンが増えることで心が落ち着き、集中力が高まります。

コロナ禍となり、うつ病になる人が増えた原因として、このように運動できなくなったことが一因としてあると考えられています。中でもウォーキングやランニング、サイクリング、水泳などのリズミカルな運動がよいとされています。短時間でもいいので運動を習慣化することでうつ病の予防効果も高まります。

食事の栄養バランスを整える

うつ病の患者さんには、一部の栄養の不足が指摘されています。それは、ビタミンB1、B2、B6、B12、葉酸、必須アミノ酸のトリプトファン、メチオニン、チロシンです。

また、魚油に含まれるEPA(エイコサペンタエン酸)とDHA(ドコサヘキサエン酸)、さらに鉄分、亜鉛などのミネラルです。EPAとDHAは魚を摂取することで補うことができます。

葉酸は緑黄色野菜に多いビタミンで、体内のいろいろなものの合成に使われるため、必要量の多い栄養素です。そのため、葉酸が不足すると、タンパク質や血液が十分につくられなくなり、元気がなくなってしまいます。

トリプトファンは、セロトニンの材料となるアミノ酸です。このトリプトファンが足りないと、セロトニンもメラトニンも不足してしまい、うつや不眠の原因となってしまいます。

鉄分が不足すると疲労、焦燥感、無関心、集中力低下などのうつ症状が現れることが知られています。

野菜や魚など、栄養が足りていないという自覚がある人は、普段から積極的にとるように心がけましょう。バランスよく、1日三食きちんと食べることでうつ病になるリスクを軽減することができます。

サプリメントの活用も

上でもふれましたが、ビタミンやアミノ酸の摂取がうつ病の予防のためには必要となってきます。肉や野菜などで補うことが一番ですが、たくさん摂取できない、肉や野菜が食べられない人は、サプリメントとして摂取するという方法もあります。

トリプトファンやフェニルアラニンは体内で生成されない必須アミノ酸で、食物であれば大豆や乳製品、小麦、魚といったものから摂取できます。しかし、経済的、時間的に摂取ができない人はサプリメントで補うとよいでしょう。

また、マルチビタミンやマルチミネラルといったサプリメントもあり、バランスの良い栄養摂取ができていないようであれば、このようなサプリメントの摂取も選択肢になります。

うつ病を予防するために、普段からできる改善方法についてみていきました。どれも一時的に行うのでなく、継続的に行っていくことが必要となってきます。自分自身の習慣としてやっていけるように無理のない範囲で生活の一部に取り入れていきましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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