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別名:香附(こうぶ)・莎草(しゃそう)/はますげ(浜菅)

全世界の温帯に分布し、日本でも関東以西に自生するカヤツリグサ科の多年草、ハマスゲ(㊥莎草Cyperusrotundus)の根茎を用います。おもに砂浜や川原の砂地に生えますが畑や公園の雑草として嫌われています。中国の植物名は莎草といい、生薬では地上部の全草を莎草といいます。ときに香附子の別名として莎草ということもあります。

ハマスゲの塊茎には芳香があり、附子を小さくしたような形のため香附子といいます。ひげ根を火で焼き取ったものは光附子といいます。根茎には精油成分としてシペロール、シペロン、シペレン、コブソンなどが含まれ、香附子エキスには鎮痛作用や子宮弛緩作用、抗菌作用が知られています。漢方では理気・疏肝・調経・止痛の効能があり、胃の痞塞感や脇腹部の脹満感、腹痛、頭痛、月経痛、月経不順に用います。香附子は「気病の総司・女科の主帥」ともいわれ、気を調えて欝を除き、気が行れば血は流れ、肝欝を解して三焦の気滞を除くとされています。とくに肝欝による脇痛、気滞による上腹部痛、生理痛などに用います。

①止痛作用

頭痛や筋肉痛、腹痛などさまざまな痛みに用います。頭痛には川芎・白芷などと配合します(川芎茶調散)。ストレスによる肩こりには烏薬・青皮などと配合します(治肩背拘急方)。五十肩など肩関節の痛みには蒼朮・羗活などと配合します(二朮湯)。気が欝して脇腹が痛むときには柴胡・川芎などと配合します(柴胡疎肝湯)。冷えなどで急に胃が痛むときには良姜と配合します(良附丸)。

②理気作用

気が塞がったり、イライラしたり、胃腸機能が悪いときに用います。風邪気味で気分が悪く、みぞおちが痞えるときに蘇菜・陳皮などと配合します(香蘇散)。更年期障害などで、のぼせや眩暈を訴えるときには当帰・川芎などと配合します(女神散)。ストレスなどで食欲がなく胃が痞え、下痢や嘔気があるときには六君子湯に配合します(香砂六君子湯)。

③調経作用

月経不順や月経痛に用います。顔色が冴えず生理不順や産後の肥立ちが悪いときには当帰・地黄・白朮などと配合します(芎帰調血飲)。下腹部に膨満感があって生理痛が強いときには桃仁・紅花などと配合します(膈下逐瘀湯)。

処方用名

香附子・香附・香附米・生香附・製香附・コウブシ

基原

カヤツリグサ科CyperaceaeのハマスゲCyperusrotundusL.の塊状に肥大した根茎。表面をみがいて、ひげ根や鱗葉を取り去ったものが良品です。

性味

辛・微苦・微甘・平

帰経

肝・三焦

効能と応用

方剤例

理気解鬱

①柴胡疏肝散

肝鬱気滞の胸脇が脹って痛む・腹満・憂鬱などの症候に、柴胡・川芎・枳殻などと用います。

②越鞠丸

気・血・痰・湿・熱・食の六鬱による胸苦しい・嘔吐・呑酸・消化不良などの症候には、川芎・蒼朮・山梔子などと使用します。

③良附丸

寒疑気滞の腹満・腹痛には、高良姜・乾姜・桂枝などと用います。

寒滞肝脈による両側下腹痛(疝気腹痛)には、呉茱萸・小茴香・烏薬などと使用します。

調経止痛

香附芎帰湯・艾附丸

肝鬱気滞による月経不順・月経痛に、当帰・川芎・白芍・艾葉などと用います。

臨床使用の要点

香附子は辛散・苦降・甘緩で芳香走竄し、平性で寒熱に偏らず、理気の良薬であり、舒肝理気解鬱に働き、三焦気滞を消除します。気行れば血行り、肝気が舒暢すれば血行は通暢し、気血が疏泄調達すると月経は調い疼痛が止むので、調経止痛の要薬でもあります。それゆえ、肝鬱気滞による胸脇脘腹脹痛・月経不調・経行腹痛および胎産諸病に対する常用薬であり、「気病の総司、女科の主帥」と称されています。

参考

理気解鬱には生用し、調経止痛には醋炒するか炒炭した製香附を用います。

用量

6~12g、煎服丸・散剤に用いてもよいです。

使用上の注意

①芳香辛散ですから、単独で用いたり多量・長期に使用すると、気血を耗損する恐れがあります。

②気虚無滞・陰虚血熱には禁忌です。

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