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うつ病のイライラ症状の対処法…非定型うつ病と従来のうつ病の違いは?

お悩み

うつ病と聞くと、憂うつな気分や悲しい、気分の落ち込み、悲観的になるなどの抑うつ症状が思い浮かびますよね。このような症状が出た際には、うつ病かもしれないと気づくことができます。

実は悲しみや気分の落ち込みとは正反対ともいえる、イライラや怒りがうつ病の症状として現れることがあります。

非定型うつ病といわれるうつ病が20〜30代女性に増えてきているといわれています。ここでは非定型うつ病について詳しく解説します。

従来のうつ病と非定型うつ病(新型うつ病)の違い

非定型うつ病は従来のうつ病と何が違うのかを、両者を比較しながら見ていきましょう。

気分の特徴の違い

従来のうつ病であれば、気分が落ち込んで、何をやっても楽しくなく、元気がありませんが、非定型うつ病は、気分反応性があります。

気分反応性とは、基本的には気持ちが落ち込んでいる抑うつ気分が続いているのですが、何かいい出来事があると気持ちが持ち上がることをいいます。逆に、嫌なことがあれば、それに敏感に反応して気持ちは沈み込んでしまいます。

症状が出る時間帯の違い

従来のうつ病では、疲れやすく、朝調子が悪くて、夕方になると少し楽になってくるのが特徴です。

その一方で非定型うつ病に特徴的な症状として、鉛管様と呼ばれる麻痺症状が認められます。鉛管様麻痺とは、身体に鉛がのっかかっているように身体が動かないというほどに身体が重くなり、起き上がることもできないほどに全身がだるくなります。

この鉛管様麻痺は一般的に夕方に強くなることが多いです。夕方になるとストレスの蓄積によって鉛管様麻痺が強くなるのです。この重度の倦怠感は、本人ではコントロールできません。周囲からは怠けているように見えてしまいますが、前頭葉のドパミン機能が関係していると考えられています。

集中力が欠如する理由の違い

従来のうつ病では、頭の回転が鈍ったようになり、ボーッとして集中力が出ないのが特徴となります。以前ならできていたこともできなくなり、間違えてしまったり、テキパキとこなしていた洗濯や掃除などもおっくうになってしまったり、ボーッと過ごしてしまったりします。

一方で非定型うつ病では、イライラした落ち着かない気分に支配され、集中力が散漫になり、仕事などが手につかなくなります。このために人間関係にもトラブルが起こりやすく、激しい感情をぶつけてしまったり、逆に相手に拒絶されたと感じて絶望的になり、突発的に関係を切る様な行動に走りやすくなったりします。

食欲の違い

従来のうつ病では、食欲や性欲といった、基本的な欲求が低下するのが特徴です。食欲が落ちて食べる量も減るため、やせて体重が落ちます。

しかし、非定型うつ病では、食べることで気持ちをまぎらわしたり、甘いものが無性に欲しくなって発作的に食べてしまったり、といった過食傾向がみられます。そのため、体重も増加しがちとなってしまいます。

睡眠障害の違い

従来のうつ病ですと、夜ふとんに入ってもなかなか眠れない、夜中にもたびたび目が覚めてしまう、朝早くから目が覚めてしまいそのまま眠れないといった特徴があり、慢性の睡眠不足になりがちです。

一方で、非定型うつ病では、1日の睡眠時間が10時間以上にも及ぶくらい、過眠傾向となります。さらに睡眠時間を長くとっているにもかかわらず、昼間には眠気を感じ、いくら寝ても寝足りないような気分になるのが特徴です。

薬の効き方の違い

従来のうつ病に対して効果がある薬も、この非定型うつ病に対して効きにくいというのも特徴です。

本人が行うイライラの対処法

自分自身が非定型うつ病に当てはまり、イライラや攻撃的な感情を鎮めたいときには以下の方法があります。

・怒りの状況から距離をとる:その場から離れる。行動する前に10秒数える。
・怒りのエネルギーを発散する:深呼吸する。走る。歌を歌うなど。
・熱中できることをする:好きな本を読む。趣味に集中する。
・身近な人に腹の立った出来事を話して受け入れてもらう:信頼できる人に怒りの感情を交えながら出来事を話す。
・本当に一方的で不当なのか、相手の立場に立って考えてみる:自分は不当だと思ったけれど、相手はなぜそうしたのか、自分を攻撃するためだったのか、相手の立場で考えてみる。

以上のようなことを自分なりに試してみましょう。そして自分にはどれが効果的なのかを知りましょう。怒りを感じたときに、どの方法をとるべきかをあらかじめ考えておくことも大切です。怒りを感じることは何も悪いことではありません。ただ、その後の行動を変えていけばいいのです。

家族が行うイライラの対処法

非定型うつ病に当てはまる家族がいる人には、次のような対処法をおすすめします。

なぜ攻撃的なのかを考える

まずは、なぜその人が攻撃的なイライラを抱えているかを考えるようにしましょう。もしかしたら寂しさを抱えているかもしれませんし、自分に自信がないのかもしれません。

その推測を相手に伝えない方がいいですが、相手が攻撃的になっていることに対して、寄り添って考えなければ解決するのは難しいです。

攻撃的な理由がわからないと、なんでいつも怒っているんだろうと、自分までイライラしてしまうことがあります。理由が分かれば、相手を落ち着かせる方法や、攻撃される前に対策する方法も見つかりやすくなります。

適度な距離感で接する

攻撃的な人からの被害を防ぐためには、適度な距離感も大切です。距離が近すぎると、相手も弱いところを見られるのではないかと不安になってしまいます。心配でもしつこく聞いたり、声をかけたりするのではなく、すこし距離をとってみましょう。

相手の味方であることを示す

攻撃的な人は、弱いところを知られることにより、相手から見放されるのではないかという不安を抱えている人が多いです。

本人にいかなる弱さ、ダメなところがあったとしても、自分は無条件で相手の味方であるということを示すことで、攻撃的になる必要がなくなっていく場合があります。相手に気持ちが伝わるまでは時間がかかりますが、相手が気にしている弱いところを見ても否定しない、受け入れるようにする、といったことが大切になります。

いかがでしたでしょうか。非定型うつ病は従来のうつ病とはかなり違うことがわかります。パッと見ではうつ病とはわからず、ただの短気な人のように見えるかもしれません。非定型うつ病とはどのようなものなのかを知り、その人に寄り添うことで攻撃的なイライラも減少していくでしょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

高血圧、頭痛、脳卒中などの治療に取り組む。日本脳神経外科学会専門医。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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