セリアック病とは?治療法や他の疾患との関係を解説

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セリアック病は、小麦のなかに含まれる「グルテン」という物質に対して、誤って自己免疫が過剰に反応を引き起こすことで発症する疾患です。グルテン過敏性腸症候群やグルテン不耐症と呼ばれることもあります。

ここではセリアック病の特徴や治療法について詳しく見ていきましょう。

セリアック病とは

セリアック病は、小麦やライ麦など多くの穀物類に含有されている「グルテン」というタンパク質に対して過剰な免疫反応が生じることから発症します。

グルテン物質の中には、タンパク質を構成しているアミノ酸成分のなかでも、グルタミンとプロリンが特に多く含有されています。胃腸での消化が不完全になりやすいグルタミン物質などが小腸粘膜から吸収される段階で、トランスグルタミナーゼ酵素によって代謝的な処理を受ける反応を通じて、グリアジンという抗原性の高い物質が産生されて自己免疫反応が誘発されると考えられています。

発症しやすい時期

日本におけるセリアック病の患者数は男女別でおおむね半々ですが、特に重症な患者さんの中には女性の比率が多いとされています。発症時期は乳幼児期や幼少期ではなく、青年期から中高年期にかけて頻度が高くなると考えられています。

乳幼児期や幼少期にパンやパスタに含まれる小麦、ライ麦、大麦などの穀物類を摂取することで、青年期以降にグルテンに対して異常な自己免疫応答反応が生じることが指摘されています。

HLA型との関係

白血球タイプを含めて全身臓器にも「HLA」と呼ばれるタイプが存在し、個々人によってそのHLA型は異なっていますが、そのなかでも特に「HLA-DQA1」、「HLA-DQB1」と呼ばれる特有の型を示す場合に、セリアック病を発症する危険性が高いことが判明しています。

これらのリスク要素となる特殊なHLA型を有する方において、グルテンに対して過剰な免疫応答が生じて、小腸粘膜が障害を受けることで小腸粘膜が萎縮する変化を引き起こすことにつながります。

萎縮した小腸組織は、本来の機能である栄養素の吸収を効率的に行うことができなくなることで、さまざまな栄養障害が関連して身体の不調を認めるようになります。

セリアック病の症状

セリアック病における自覚症状の出現様式はケースバイケースであり、ほとんど無症状の人がいる反面、重度の栄養失調を呈する場合も存在します。

吸収障害に関連して慢性的に続く下痢、体重減少などの症状が挙げられ、より一般的には便秘、腹部違和感、疲労感、腹痛などありふれた症状が見受けられます。

また、身体にとって必要な栄養素である鉄やカルシウム、ビタミンなどの各種栄養素が有効的に吸収されずに体内で不足することで、鉄欠乏性貧血、骨粗鬆症、口内炎、脱毛、手足のしびれ、肝障害などが併発することがあります。

セリアック病と他疾患との関係

セリアック病は自己免疫疾患のひとつで、甲状腺疾患や1型糖尿病など自己免疫に関連した病気を発症する割合が通常よりも上昇するといわれています。

また、先天的な遺伝子疾患であるダウン症候群やターナー症候群においても、セリアック病を発症するリスクが一般的に高率であることも徐々に分かってきています。

セリアック病は日本では稀な疾患であったため、診断を含めて疾患に対する認識が高くなく、下痢や便秘などを繰り返す過敏性腸症候群などの腸疾患を患っている場合には、一定数の確率でセリアック病が潜在している可能性があります。

また、セリアック病は下痢症状を認めるだけの軽症の部類から重度の栄養失調に陥るタイプまでさまざまであり、20歳代に自然治癒する場合もありますが、適切に治療しないと腸リンパ腫などの癌病変が生じる危険性が上昇するとも考えられています。

セリアック病の検査と診断

セリアック病は、萎縮変化を起こした小腸粘膜組織を顕微鏡で確認することによって診断されますが、ヒトの腸組織を実際に採取するのは侵襲性が高く、現実的には実施困難です。

セリアック病に対する診断方法としては、血液抗体検査と小腸生検の組み合わせによって通常実施される以外にも、血清学的マーカー検査として、抗グリアジン抗体(AGA)と抗筋内膜抗体(EMA)、抗組織トランスグルタミナーゼ抗体(tTG)などが活用されています。

一般的には採血検査を施行してトランスグルタミナーゼに対して産生されるIgAやIgGなどの抗体が血液中に存在しているかどうかを調査するとともに、実際の臨床症状やそれ以外の他覚的所見、合併症の有無などを考慮してセリアック病を診断します。

セリアック病の治療法

セリアック病に対してはグルテン除去や薬物治療が実施されます。

グルテン除去

セリアック病の治療では、グルテン物質を食事内容から除去することが重要になります。グルテンを除去した食事形態を続けることによって、数日から数週間の単位で自覚症状や小腸粘膜萎縮所見の改善傾向を認める場合もあります。

ただし、グルテンを除去している食品は一般的に高価で安易に取得できるものではなく、外食時に完全にグルテン除去の食事メニューを摂取するのは現実的にかなり難しい点が指摘されており、患者さんが感じる負担度はかなり大きいと考えられます。

栄養素の補充

セリアック病の患者さんにおいては、小腸で本来吸収されるべき鉄やカルシウム、葉酸、ビタミンB12などの栄養素が通常よりも不足傾向に陥るため、サプリメントなどを通じてこれらの重要な栄養成分を補充する治療手段も考えられます。

ワクチン接種

また、ビタミン群などを中心に栄養障害に関連して病原体に対する免疫力が低下することも懸念されており、セリアック病に罹患している場合には肺炎に罹患しないように肺炎球菌ワクチンを接種することが提唱されています。

まとめ

セリアック病とはどのような病気か、その治療法や他の疾患との関係などを中心に解説してきました。

セリアック病は、日本ではまれな疾患であるものの、小腸の粘膜が異常な自己免疫反応によって萎縮変化を引き起こして、さまざまな栄養素の消化吸収障害をきたす病気です。

その発症原因は厳密にはいまだに分かっていませんが、主に小麦やライ麦などの穀物に含まれるタンパク質のひとつであるグルテン物質に対する免疫反応が契機となって、小腸上皮組織における正常の絨毛形態が失われることで栄養素吸収機能が障害されると考えられています。

そうしたことから、慢性的な下痢症状がたびたび認められるようになり、鉄欠乏、葉酸欠乏、骨軟化などを含む多彩な栄養不良に関連する症状が見受けられるようになります。

基本的な治療法は、グルテンを除去した厳格な食事制限であり、パンなどの小麦製品を一切摂取しないことによって小腸粘膜の状態を改善して、下痢をはじめとする症状全般を緩和し、合併症を併発するリスクを軽減することが可能となります。

今回の情報が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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