立ちくらみと貧血は違う?原因になる病気と受診の目安

お悩み

立ちくらみがすると、「貧血ではないか」と思われるかもしれません。確かに貧血の症状として立ちくらみはあります。しかし、立ちくらみ=貧血ではありません。

ここでは立ちくらみと貧血の違いや、立ちくらみの原因について解説します。

立ちくらみと貧血は違う?

立ちくらみと貧血のそれぞれの特徴と、両者の違いについて見てみましょう。

立ちくらみの特徴

寝ている状態や座っている状態から急に立ち上がった際に起こるめまいや、目の前が暗くなる、頭がぼんやりする、気を失いそうになるなどの症状のことを立ちくらみといいます。

血液は高いところから低いところへ流れようとします。正常な場合は、血液が下に流れたときに、心臓の心拍数を増やしたりして血圧を安定させ、循環する血液量を維持するような機能が働きます。これらの働きは自律神経が行いますが、この働きが妨げられる時に、立った時の血液が低下して立ちくらみが起こります。

貧血の特徴

貧血とは体内のヘモグロビンが少なくなることです。体内の鉄が不足するとヘモグロビンが少なくなり、酸素を体中に運ぶ赤血球も少なくなります。

すると、体中の酸素量が不十分になるため、疲労感や息切れ、動悸、めまい、頭痛などの症状が出ます。貧血は徐々に進行する場合が多いため、はっきりと症状が自覚できないこともあります。

鉄が不足している状態が長期間続くと、氷を無性に食べたくなる氷食症という症状が出ることがあります。

また、鉄は神経伝達物質を作るときに必要な酵素を助ける働きをしているため、不足するとセロトニンやノルアドレナリン、ドーパミンが必要なときでも作られなくなってしまいます。その結果、うつやパニック障害などの症状を引き起こしやすくなります。

立ちくらみと貧血の違い

立ちくらみは確かに貧血の症状のひとつではありますが、立ちくらみがするからといって、必ずしも貧血というわけではありません。立ちくらみは、起立性低血圧や自律神経失調症などが原因となって起こるもので、貧血とは分けられ、一時的に脳にじゅうぶんな血液が届かなくなり、脳が酸欠状態になって起こります。

そのため、鉄分不足や造血機能の低下で赤血球が減少するわけではないので、ヘモグロビンの値に異常はありません。

立ちくらみの原因になる病気

立ちくらみの原因としては次のような病気が考えられます。

起立性低血圧

急に立ち上がったり、起き上がった際に血圧が低下することで立ちくらみを起こします。立ちくらみの主な原因となります。正常者にも起こりますが、症状が強く病的な場合を起立性低血圧といい、脳への血液循環が減少することによって起こり、めまいや吐き気が起こり、意識がなくなることもあります。

自律神経失調症

自律神経とは、交感神経と副交感神経の2つの神経で構成されます。交感神経とは主に日中活発に働く神経です。それに対して、副交感神経は夜間やリラックス時に活発となる神経になります。この2つの神経のバランスが保たれている状態が正常となります。

しかし、ストレスが心身に影響を及ぼすと、この2つの神経のバランスが崩れ、不調となります。これが、自律神経失調症となります。自律神経失調症の症状は、大きく分けて身体的症状と精神的症状の2つがあります。

身体的症状

自律神経失調症の主な身体的症状のひとつが手足のしびれです。ストレスの蓄積によって筋肉の硬直や血行不良を引き起こし、結果としてしびれ症状を出現させます。めまい・耳鳴り、立ちくらみ、息切れ、慢性的なだるさ、便秘・下痢、手足の震え・しびれ、睡眠の質の低下、肩こり・頭痛などの症状が一時的ではなく、慢性的に発生します。

精神的症状

自律神経失調症の精神症状は、パニック障害・不安障害・不安神経症などと症状が似ています。イライラ、不安感、落ち着きがない、情緒不安定、やる気が起きない、緊張状態などの症状が出現します。また、精神的症状が悪化すると、うつ病の併発リスクが高まります。

メニエール病

メニエール病は、発作的に繰り返す回転性めまいや、片側の耳鳴り・難聴、頭痛や吐き気、平衡感覚障害などの症状を伴う病気です。

メニエール病は、内耳を満たしているリンパ液が過剰になって、耳の蝸牛と呼ばれる部分が膨れ上がってしまう内リンパ水腫となることで生じます。これによって、蝸牛や身体の平衡感覚を司る三半規管の機能が乱れて起こるといわれています。

メニエール病の場合は数秒などでは終わらず、30分以上続きます。また、耳が詰まった感じや難聴、耳鳴りが同時に引き起こされます。

糖尿病性神経障害

糖尿病で高血糖状態が長く続いた結果、全身の神経に障害が起こってきます。これを糖尿病性神経障害といい、糖尿病網膜症や糖尿病性腎症とともに糖尿病の三大合併症と呼ばれています。

高血糖が長く続くことで、神経周囲の血管が傷んだりするだけでなく、神経そのものの性質が変わってしまい、神経の働きを悪くさせてしまうからです。糖尿病性神経障害は主に2つの障害が発生します。

自律神経障害

胃腸や心臓などの内臓の働きを調節している神経に起こります。症状は、立ちくらみ、排尿障害、下痢、便秘、勃起障害などが現れます。

感覚・運動神経障害

手足の感覚や運動をつかさどる神経に起こります。症状は、足のしびれ、冷え、こむらがえりなどが現れます。全身の神経の中でも足先や足裏から起こりやすいです。

病院は何科?立ちくらみで受診するときの目安

立ちくらみがあったときに何科を受診したらよいか迷われる方も多いかと思います。

立ちくらみの他に症状がある場合は、その他の症状も合わせて何科を受診するか検討することが重要です。

動悸、倦怠感がある場合は、循環器内科、自律神経自体の問題であれば神経内科、心理的な問題があり、抑うつなどもみられる場合は心療内科を受診しましょう。

何科を受診すればよいかわからない場合は、大学病院や中小病院であれば総合内科を受診しましょう。クリニックなどでは、一般内科を受診して相談してみましょう。

いかがでしたでしょうか。立ちくらみを経験したことがある方も多いかと思います。疲労が溜まっていたり、寝不足やストレスなどでも生じるため、数回であれば様子をみることができますが、頻回に起こったり、期間が短かったりする場合は病院を受診して詳しく検査をしましょう。


<執筆・監修>

九州大学病院
脳神経外科 白水寛理 医師

九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。
日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事