緊張する場面で襲う吐き気…喉のつかえと胃のムカムカが止まらない!
緊張によるストレスを感じると胃がムカムカして気持ちが悪くなってしまう、長時間の緊張が続くと胃の痛みや吐き気を感じることがある……。
30代のプレ更年期世代の女性のなかには、こうした「緊張による吐き気」に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。
こんな自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。
今回は「緊張による吐き気」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。
目次
緊張するたびに起こる不快な症状…このつらい吐き気を止めるには?
夏樹さん(31歳女性)、会社員の方からご質問をいただきました。
2年ほど前に仕事のトラブルに立て続けに見舞われ、一人でクレーム対応や処理をしているうちに、極度の緊張とストレスで体調を崩してしまったことがあるんです。それ以来、緊張する場面になると喉がつかえたようになり、心臓がドキドキして吐き気を催すようになってしまいました。
心療内科では、軽度のパニック障害と言われ、通院と投薬により症状は多少落ち着いたものの、今でも緊張を強いられるような状況では吐き気が起こることが多く、困っています。
特に、睡眠不足や疲れが溜まっているときに症状が強く出るような気がするため、できるだけ疲れやストレスを溜めないようには心がけていますが、仕事を辞めたわけでもなく、完全にリラックスして毎日を過ごすことは難しい状態です。
先日も、来年結婚予定の彼の実家にご挨拶に伺ったのですが、口から心臓が出るほど緊張していたせいか、行きの新幹線の中でも吐き気が止まらず、せっかくのおもてなしのお食事もあまり手をつけられなくて…。
結婚後も仕事は続ける予定なので、なんとかこの症状を改善したいと思っているのですが、何か良い方法はないでしょうか?
ご質問ありがとうございます。
過度な緊張は体にさまざまな影響を与え、消化器の不調の原因となることもあります。こうした精神症状による不調は完全に完治することも難しいため、つらいですよね。
今回は、緊張による吐き気の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。
緊張による吐き気はストレスによる自律神経の乱れが原因
過度な緊張から体に現れる症状には様々なものがありますが、そのうちの一つに吐き気が挙げられます。
緊張によって引き起こされたストレスやネガティブな感情は、体の働きを調節する自律神経系や内分泌系、免疫系のバランスを崩し、さまざまな不調を起こす原因となってしまうのです。
なかでも胃や腸の働きをつかさどる自律神経のバランスが崩れると、吐き気や嘔吐、胃もたれ、下痢や便秘などの消化器症状として現れることが多いと考えられています。
また、緊張状態が継続することにより、交感神経と副交感神経のバランスが崩れることで胃液の分泌が過剰になってしまうことも、吐き気が生じる原因になります。
東洋医学では、五臓のうちの自律神経をつかさどる「肝(かん)」がうっ血し、「気(生命エネルギー)」が滞ることで胃部の不快感や吐き気が生じると考えられています。
次の章ではこのような「緊張による吐き気」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。
緊張による吐き気を改善する対処法3選
1.腹式呼吸で深い呼吸を繰り返しましょう
吐き気を催すほどの緊張感を感じる場合は、まずは呼吸を整え、深い呼吸をして自律神経を意識的にコントロールする必要があります。
緊張状態にあるときは、交感神経が過剰に働いているため、吐く息より吸う息に意識が傾きがちです。
副交感神経を優位にするためにも、息を深く長く吐き出して、気持ちをリラックスさせましょう。
ただ大きく息を吸って吐くだけではなく、腹式呼吸で鼻から吸った空気をお腹にため、長い時間をかけてゆっくり口からフーッと吐き出すようにしましょう。
何度か繰り返すことで高まった緊張感をやわらげる効果があります。
2.刺激物や嗜好品の摂り過ぎに気をつける
緊張による吐き気を防ぐためには、コーヒーや紅茶、エナジードリンクなどのカフェインの多く含まれる飲み物を控えることが大切です。
カフェインを摂り過ぎると、交感神経を高める効果によって自律神経のバランスを崩したり、胃の粘膜の血流を悪化させて吐き気の原因になってしまうことがあります。
緊張を感じるときには唾液の分泌も減少してしまいがちですが、水分補給する際はカフェインを含まない水や麦茶などがオススメです。
また、普段から緊張感をたばこを吸うことで抑える習慣のある方は、喫煙によって胃の血流が悪化し、吐き気をおこしやすくなっているとも考えられます。
胃の負担を軽減するためにも、極力たばこは控えるようにすると良いでしょう。
3.胃に優しく消化の良い食事に切り替える
吐き気があるときには普段どおりの食事を避け、胃腸への負担を減らす工夫をしてみましょう。
まず、胃に負担をかける辛いものや脂っぽいもの、消化しづらい食物繊維の豊富なものや強い匂いの食材は避け、うどんやおかゆ、白身魚や豆腐など胃に優しく消化の良いメニューにすることが大切です。
吐き気が強く、どうしても食欲がないときは無理してきちんとした食事を摂ろうとする必要はありません。
ヨーグルトやゼリー、すりおろしたりんごなど、喉越しよく口当たりの良いもので栄養補給するようにしましょう。
根本的な体質改善には漢方薬が効果的!
緊張による吐き気を改善するために、セルフケアや処方薬の服用などの選択肢に加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。
特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、半夏厚朴湯(ハンゲコウボクトウ)です。
心身ともに疲れやすく、不安や緊張感から喉がつかえたようになって吐き気を催してしまう方の神経の高ぶりや胃の緊張を鎮め、心と体の状態を整えてくれる効果があります。
また、緊張によるストレスで些細なことが気にかかり、神経過敏になってしまう方の吐き気には、自律神経のバランスを整えて、心を落ち着かせる効果のある桂枝加竜骨牡蠣湯(ケイシカリュウコツボレイトウ)も良いでしょう。
心と体をリラックスした状態に整えましょう
今回は、緊張による吐き気に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、腹式呼吸でゆっくりと息を吐くことで緊張感を和らげることや、無理して普段通りの食事をせず、胃に優しく消化の良いものに切り替えることが大切です。
また、カフェインやタバコなどの嗜好品はできるだけ控えると良いでしょう。
こうした気になる吐き気の症状改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。
セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。