これも人体の神秘!?妊娠して以来、なぜか鼻血が頻繁に出るように…

体験談

妊娠してから鼻血が出やすくなった、妊娠中はちょっと鼻を刺激しただけでも鼻血が出てしまう…。
30〜40代の女性のなかには、こうした「妊娠中の鼻血」に悩んでいる方も少なくないのではないでしょうか。

そんな自分ではどうにもならないつらい症状の緩和や体質改善には、漢方薬がよく効くことをご存知でしたか?
「健タメ!」では、読者からの体験談をもとに、お悩みに関する原因や対処法を医師や薬剤師がお答えしていきます。

今回は「妊娠中の鼻血」をテーマに、薬剤師の竹田由子先生にお話を伺ってみました。

妊娠してから頻繁に鼻血が…慣れない鼻血に右往左往するばかりです

佳菜さん(31歳女性)、主婦の方からご質問をいただきました。

現在妊娠5ヶ月、初産で妊娠経過も順調なのですが、ひとつだけ困っていることがあるんです。それは、妊娠してからやたらと鼻血が出るようになってしまったこと。
物心ついてから鼻血が出た記憶はほとんどなく、しいていえば小学生の頃に一度、ドッジボールをしていてボールが鼻を直撃したときにあふれる鼻血に衝撃を受けたことくらいです。それ以来、大人になっても鼻血とは無縁だった私が、妊娠してからは10日に一度は鼻血を出して右往左往するように。
特に、朝起きた直後、口や鼻が乾いていると感じるときや、お風呂上がりでポーッとしているときなどに出やすいようで、いつも不意打ちなため、うっかり飲み込んで吐き気がおきたり、止め方がわからずティッシュケースを抱えてオロオロするばかりで……。こんなに鼻血が出るからには何か体に問題があるのでは、と心配で仕方がありません。
鼻血くらいで貧血は悪化しないとは思いつつ、貧血傾向にあるとお医者様から指摘も受けているため、これ以上の出血が起こるのを避けたい気持ちもあります。
あまり気にしすぎるのもお腹の赤ちゃんに良くないとは思っているのですが、何か良い改善方法があれば知りたいです。よろしくお願いします。

ご質問ありがとうございます。
妊娠時に鼻血が出やすくなるのは、ほとんどの場合がホルモンの変化による生理的なものであるため、あまり心配する必要はありませんが、粘膜がデリケートになっていることを意識して過ごすようにすることが大切です。
今回は、妊娠中の鼻血の原因や改善方法について、詳しくお伝えしていきましょう。

妊娠中の鼻血は黄体ホルモンによる体の変化が原因

鼻血とは鼻腔からの出血を指し、鼻血の多くは鼻の穴の入り口、小鼻の内側にあるキーゼルバッハ部位という場所から出血します。
この場所には網の目のように毛細血管が集中しているため、妊娠時に末梢の血管を拡張させたり、体に水分を蓄えようとしたりする黄体ホルモン(プロゲステロン)の働きによって、むくみやすくなります。
妊娠中に鼻血が出るのは「血管の拡張」と「血液循環量の増加」とともに、この「キーゼルバッハ部位のむくみ」が起き、鼻血が出やすい状態が重なってしまうことに原因があります。

東洋医学では、「血(血液)」を脈外に漏れ出さないようにする「統血(とうけつ)」という働きをつかさどる「脾(ひ)」の衰えにより出血症状が起こるとされています。

次の章ではこのような「妊娠中の鼻血」を改善するための具体的な方法をお伝えしていきましょう。

妊娠中の鼻血を改善するためのセルフケア3選

1.鼻のケアは優しく丁寧に

妊娠中の鼻の粘膜は、むくみや血管の拡張などによって、出血しやすい状態になっています。
ほんの少しの刺激だけでも鼻血が出ることがありますので、鼻をかむときは勢いよくかまないようにしたり、鼻の掃除やケアもいつも以上に優しく丁寧にするように心がけましょう。
また空気の乾燥するシーズンは、むくんでいる粘膜がさらに傷つきやすく、鼻血が出やすくなるため、部屋を加湿したり、少し湿らせたマスクをするなどして鼻を乾燥させないようにするのもオススメです。

2.正しい止血方法で鼻血を止めましょう

鼻血が出てしまったときは、早めに止血するためにも、正しい方法で鼻血を止めるようにしましょう。
特に血があふれてくるような場合は、血を飲み込んでしまわないように前傾姿勢を取ることが大切です。
鼻血が垂れてこないように鼻の入り口にティッシュを入れて、しっかり小鼻の脇を両側から指で強くつまみ、安静にします。保冷剤などで鼻を冷やすのもオススメです。
多くの場合はそのまま5分程度経過すれば血が止まるはずですが、まだ出血がある場合はしばらく同様の体勢で鼻をつまみ、血が止まるのを待ちましょう。

3.「葉酸」を補給して血を増やしましょう

鼻血だけのせいで貧血になる心配はありませんが、妊娠中は「鉄欠乏性貧血」「葉酸欠乏性貧血」などから通常時以上に貧血になりがちです。
鼻血が頻繁に出ることや貧血症状が気になる場合は、鉄分に加え、「葉酸」も積極的に摂取するようにしましょう。
貧血予防といえば鉄分、というイメージがあるかもしれませんが、葉酸には、細胞修復や造血作用もあり、妊娠初期の胎児の先天性異常を避けるためにも重要な働きをするため、特に妊娠中期までは意識して摂ることをオススメします。
「葉酸」はホウレン草やブロッコリー、春菊などに多く含まれますが、食生活で摂るのが難しい場合は、サプリメントで補っても良いでしょう。

根本的な体質改善には漢方薬が効果的!

妊娠中の鼻血を改善するために、鼻血を止めるためのレーザー治療などに加えて、根本的な改善を目的としている漢方薬の服用もオススメです。

特に、今回の相談者様のような症状に悩む方に適した漢方薬は、芎帰膠艾湯(キュウキキョウガイトウ)です。鼻血や歯肉からの出血、不正出血など、妊娠時の出血症状がある方に、体を温めて、出血や痛みを抑える効果があります。
また、鼻血の症状に加え、冷えやむくみが強い方には、水分代謝を促して、血流を改善する安胎薬といわれる当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)も良いでしょう。

体調を整えつつ、鼻を刺激しないようにしましょう

今回は、妊娠中の鼻血に悩む方のためのセルフケアや漢方薬をご紹介してきました。
症状の改善のためには、普段以上に鼻を刺激しないように気をつけることや、鼻血が出てしまった場合は正しい止血方法で早期に止血することが大切です。
もし、頻繁に鼻血が出る場合には、体調管理のためにも鉄分に加えて「葉酸」を摂取して貧血を防ぎましょう。

こうした気になる鼻血の症状改善には、漢方薬が大きな効果を発揮した例もたくさんあります。
セルフケアを試してもなかなか改善しない場合は、ぜひお近くの漢方医や漢方薬局に相談してみてくださいね。


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