白い便が出ない!バリウム検査の便秘対策とは

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胃バリウム検査はバリウムを服用して検査を行い、検査後にバリウムを便として体外に排出する必要があります。

中にはバリウムがなかなか排出されなかったり、お腹がはったり、便秘になったりといったケースも見られます。

ここでは胃バリウム検査を行ってからバリウムが排出されるまでの時間の目安や、注意が必要なケース、便秘にならないための対策などについて解説します。

胃バリウム検査とは

胃バリウム検査とは、バリウムという造影剤を服用して発泡剤である炭酸成分によって胃全体を膨らませて、X線(レントゲン)を連続して照射しながら撮影する検査方法です。

バリウム検査の主な目的は食道や胃、十二指腸などにおける疾患を早期発見することであり、本検査は食道や胃、十二指腸など上部消化管における病変の有無をチェックすることが出来る検査手段です。正式には上部消化管X線検査といいます。

バリウム成分が消化管粘膜の表面をスライドして滑り落ちて粘膜壁に付着していく様子を撮影すると、ポリープや隆起物、あるいは潰瘍性病変や陥凹所見などの有無を評価することが可能となります。

特に、潰瘍病変においては粘膜組織が深く欠損していることが多く、胃などの壁に潰瘍があるとそこにバリウムが入り込んで、ニッシェと呼ばれる特徴的な画像所見が得られます。

また、胃壁の粘膜ひだが集中している所見が認められる場合には、胃潰瘍が治癒した痕跡や時に悪性腫瘍に伴うものである可能性が疑われます。

それ以外にも、バリウム検査を実施することで急性胃炎や慢性胃炎が疑われて胃の内部がピロリ菌に感染していることが想定される場合には、胃潰瘍や胃がんなどに罹患する確率が上昇しますので、ピロリ菌検査や除菌療法などを実施することが推奨されています。

実際の検査においては、最初にバリウムをすべて服用してから検査者の指示に従って検査台の上で自分の体の向きを四方八方に変えて撮影する場合や、検査台を動かすたびに少しずつバリウムを口に含ませて服用して撮影を進めていく場合などが想定されます。

健康診断など最初の段階ですべてバリウムを服用する際には、撮影時間はおよそ5分程度であり、人間ドックなどにおいて少しずつ体位を変えながらバリウムを服用するケースでは撮影時間は概ね10分程度かかると考えられます。

便秘になることも?下剤を服用する理由

バリウム検査を受けた後にバリウムそのものが身体から排出できないままでいると、腸管レベルで長時間に渡ってバリウムが貯留したままの状態になり、水分が過度に吸収されてしまうことによって、便が自然と硬くなり、さらにバリウム成分が排出しづらくなります。

このような状態が継続すると、便が詰まって便秘になるだけでなく、ひどい場合には腸閉塞や腸穿孔などの合併症を招く懸念もありますので、バリウム検査後には水分を多く摂取すると同時に下剤を可能な限り早く服用することが勧められています。

具体的には、バリウム検査を終了した後はコップ2杯程度の水を飲み、30分程度時間間隔を空けてから下剤を服用してバリウム成分を排出するように努めます。

バリウムが排出されるまでの時間の目安

一般的には、下剤の効果によってバリウムが体外に排出されるまでの時間の目安は、服用後おおむね4~5時間後であると言われています。

元々の体質によっては早めに効果が出現して服用してから2時間前後で便意を催すことも見受けられます。

検査を実施する医療施設からの移動中に下剤が効果を示すこともありますので、下剤を服用するタイミングに関してはある程度自己調整する必要があります。

下剤の効果は通常であれば4~5時間程度で出現しますが、午前中に検査を実施して夕方までに便が排出されない際には500ml以上の水を飲んで2回目の下剤を服用しましょう。

バリウム成分を完全に体外へ排出できるのは早くても検査の翌日であり、検査後には食事は通常通り摂取してもよいですが、普段の便の色に戻るまでは、できるだけ多く水分をとるようにしましょう。

バリウム検査の便秘対策

バリウム検査に伴う便秘を予防する為には、排便を促進するためにたくさんの水分を普段以上に摂る必要があるので、検査終了後できるだけ早く300m以上の水を摂取するのみならず、その後も1時間にコップ1杯程度水を摂取するように心がけましょう。

バリウム検査をした後に、水分をたくさん摂取して下剤を服用したにもかかわらず、6時間以上排便が認められない場合にはさらに下剤を追加して便秘にならないように対策を講じましょう。

また、バリウム検査が終了した後の食事メニューについては特段注意すべきポイントはありませんが、普段から便秘気味で心配なケースでは、できるだけ検査後にはゴボウなど根菜類や芋類、海藻類や果物など消化に優れた食べ物を摂取するように努めましょう。

これらの水溶性食物繊維を多く含有する食事内容は、腸の有害物質を吸着して、便の排出を促進する効果が期待できますので、バリウム検査後の便秘予防対策になります。

さらに、アルコールの利尿作用は体内の水分を排出し、腸内のバリウム成分をより固まりやすくする作用がありますので、白い便が通常の茶色便に変化するまでは出来る限り飲酒を控えるように心がけましょう。

病院を受診した方がよいケースは?

バリウム検査を終了した後24時間経過しても、バリウムが混ざった白い便が全く排出されずに腹痛症状を認める場合、あるいは検査を実施した次の日から2日間を過ぎても排便を認めない際には腹痛症状が無くても早急に医療機関に相談しましょう。

通常、バリウムは体内に吸収されることなく、胃から腸管へ進み最終的に肛門から体外に排泄されますが、白い便が排出されないと、腸の中でバリウム成分が固まって、ひどい場合にはセメントのように固着してしまうケースもありますので十分注意しましょう。

一般的には、下剤を服用後、数回の排便を経て、便の性状が白色から通常の茶色に変化すればバリウムを完全に排出したと判断できますが、白色便が1回も認められずに、茶色便しか排出されない際には、腸管領域にバリウムが溜まっている可能性が懸念されます。

検査が終了したあと、下剤などの影響で軽い腹痛や下痢などの症状が見受けられることはありますが、万が一激しい腹痛や腹部膨満感を認めた際には、速やかに医療機関を受診しましょう。

バリウム成分が検査終了後に排泄されないまま長時間腸内に残存している場合には、バリウムが固くなって、最悪のケースでは腸管組織に穴が空く腸管穿孔を合併する、あるいは便が詰まって腸閉塞を伴う恐れがあります。

バリウム検査を実施してから下剤を服用しても翌日までにまったくバリウムを含有する便が排泄されない場合、あるいは検査終了後に腹部が強く緊満して腹痛症状が悪化する際には、できる限り迅速に最寄りの医療機関を受診するように努めてください。

まとめ

これまで、バリウム検査の概要や便秘対策などを中心に解説してきました。

胃バリウム検査とは、発泡剤の炭酸成分で胃全体を膨らませて、バリウムの造影剤を飲んでX線を照射しながら消化管を撮影する検査方法です。

この検査は、胃や食道、十二指腸などにおけるがん病変以外にも、胃潰瘍や胃炎、ポリープなどの異常所見を早期的に発見することを主な目的として実施します。

バリウム検査を実施した後には、便秘にならないように普段より多めに水をコップ2杯程度飲み、そのあと30分ぐらい時間を置いてから緩下剤を服用して白色便を排出して通常の茶色便に戻ることを確認しましょう。

バリウム検査後はバリウムを完全に体外へ排出する必要があり、大量の水や下剤を飲んで一定時間経過しても便が出ない場合、あるいは強い腹部症状が出現する際には早急に医療機関を受診することを心がけましょう。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。


<執筆・監修>

国家公務員共済組合連合会大手前病院
救急科医長 甲斐沼孟 医師

大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院を経て、令和3年より現職。
消化器外科や心臓血管外科の経験を生かし、現在は救急医学診療を中心とする地域医療に携わり、学会発表や論文執筆などの学術活動にも積極的に取り組む。
日本外科学会専門医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。
「さまざまな病気や健康の悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして微力ながら貢献できれば幸いです」

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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