お風呂上がりに赤い斑点…かゆみを伴う温熱蕁麻疹とは

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蕁麻疹(じんましん)はときどき起こる症状ですが、風呂上がりによくできる温熱性蕁麻疹という蕁麻疹があります。ここでは温熱性蕁麻疹の特徴や対処法について解説します。

蕁麻疹で痒みが生じるメカニズム

蕁麻疹が起こるとどのような蕁麻疹でもかゆみが生じます。なぜなのでしょうか。

蕁麻疹とは?

蕁麻疹とはどのようなものなのでしょうか。もともと、蕁麻疹の“蕁麻”とは、“いらくさ”という植物のことです。この植物に触れたときに発疹ができたことから名付けられたと言われています。

現在、蕁麻疹の定義は以下の3つを満たすものとなっています。

・限局性の膨疹で、水疱など他の皮膚表面性状の異常は伴わない
・一過性で、消失する
・かゆみを必ず伴う

といったものです。

形はさまざまですし、皮膚の色もさまざまですが、この上記三つは必ず満たすのが特徴です。

では、どのような機序で蕁麻疹は起こるのでしょうか。

蕁麻疹の原因はさまざまありますが、共通しているのはヒスタミンという物質が関わっているということです。

ヒスタミンは元々肥満細胞という細胞に貯蔵されている化学物質です。何らかの刺激が肥満細胞にかかると、肥満細胞は貯蔵しているヒスタミンを一気に分泌します。

ヒスタミンが分泌されると、血管の内側にある血管内皮細胞という細胞に結合します。すると、血管の壁を水分が通過しやすくなり、皮下組織や真皮層に水分が多く漏出します。この中でもとくに真皮層に水分が貯留し、浮腫となったものが蕁麻疹です。

また、ヒスタミンは同時に皮膚の知覚神経に結合しますから、かゆみを生じます。

蕁麻疹の分類

ヒスタミンの分泌が起こる原因がアレルギーによるものをアレルギー性蕁麻疹、アレルギー以外の原因でおこる物を非アレルギー性蕁麻疹と分類します。

とはいえ、蕁麻疹のうち80%は原因が分からない特発性蕁麻疹と言われています。特発性蕁麻疹はアレルゲンに接していることで発症しているアレルギー性蕁麻疹と、何らかの他の原因があって発症している非アレルギー性蕁麻疹の両方を含んでいると考えられていますが、いずれにしても原因の同定は困難です。

他の分類としては、発症してから全ての症状が消失するまでの期間が1か月以内の急性蕁麻疹と、蕁麻疹が出たり消えたりを1か月以上繰り返す、慢性蕁麻疹と言う分類があります。

また、非アレルギー性蕁麻疹の中には物理性蕁麻疹とコリン性蕁麻疹という分類もあります。

物理性蕁麻疹は物理的な刺激によってヒスタミンが分泌され、蕁麻疹を引き起こすもので、寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、器械性蕁麻疹などがあります。

一方でコリン性蕁麻疹というのは、発汗、ストレス、温熱などの刺激が加わることで神経終末からアセチルコリンという物質が分泌され、その刺激で肥満細胞からヒスタミンが分泌されるものです。温熱蕁麻疹やストレス性蕁麻疹などがあります。

温熱蕁麻疹とは

温熱性蕁麻疹は、前述の通り非アレルギー性蕁麻疹になります。

体が暖まると、特にそれ以外の誘因がないのに蕁麻疹が出現する病気です。皮膚の温度が急激に上がることで血管が拡張し、それが刺激となって肥満細胞からヒスタミンが分泌されると考えられています。

この分泌されたヒスタミンによって血管拡張がさらに広がる一方、かゆみを感じるために蕁麻疹の症状が出現します。

温熱性蕁麻疹は、元々血流が悪い人に起こりやすいと考えられています。特に寒がりな場合、痩せている場合、肌が敏感な場合に起こりやすく、また肌が乾燥している場合も起こりやすくなります。

皮膚の温度が上昇しやすい春や夏に、入浴をはじめとした血流増加血管拡張が起こることで発症します。他にも、寒い場所から急に暖かい場所に移動した場合や、暖房の風に当たった場合などに発症することがあります。

これらの蕁麻疹には温熱刺激の数分以内に出現し、数時間以内に改善するという特徴があります。

蕁麻疹は局所の膨疹とかゆみが主症状ですが、稀にその他の症状が出現することがあります。特に全身に蕁麻疹が出た場合は血管外の浮腫がひどく、血管内の水分が不足した結果全身症状が見られます。倦怠感や頭痛、ふらつき、吐き気や嘔吐、腹痛や息苦しさなどが見られる場合がありますし、ひどい場合には意識を失ったり、気道浮腫による呼吸困難を伴ったりします。

温熱性蕁麻疹でそのような重篤な状態になることは非常に稀ですが、注意をしなくてはなりません。

温熱蕁麻疹の対処法

温熱性蕁麻疹が出現した場合はどのように対処すれば良いのでしょうか。もし、全身の症状が出た場合にはすぐに救急車で病院を受診するべきと考えられます。しかしそうではなく、局所の症状のみである場合にはご自身で対処することも可能です。

濡れタオルで冷やす

暖まることが原因で蕁麻疹が起こっていますから、冷やしてやることで対処が可能な場合があります。特に、暖まった場所だけに蕁麻疹が出ているときには有効です。

数分間冷えた濡れタオルを当てて様子を見てみましょう。それで改善するのであれば、他の対処はまず必要ありません。

まったく引かない場合は、様子見という方法もありますが、様子を見ても改善しなければ薬の使用が考慮されます。

市販薬を活用する

蕁麻疹の原因はヒスタミンの分泌によるものでした。ですので、ヒスタミンを抑える抗ヒスタミン薬に分類される薬を使用することで蕁麻疹を抑えることが可能になります。

ヒスタミンを抑える薬は、一般に抗アレルギー薬として発売されています。特に抗ヒスタミン薬は第一世代と第二世代に分かれています。第一世代は眠気がよく起こるのが特徴で、特に第二世代で問題が無いのであれば第二世代の抗ヒスタミン薬を選択すると良いでしょう。

第二世代の抗ヒスタミン薬として市販薬に配合されている成分はアゼラスチン塩酸塩とメキタジンの2種類です。これらの成分が配合されているものを選択すると良いでしょう。

また、これらの薬剤は予防的に内服することも可能です。普段から温熱性蕁麻疹が起こりやすい人は、花粉症の人が毎日定期的に内服するように抗ヒスタミン薬を定期的に内服することで温熱性蕁麻疹の発症を予防することが可能になります。

さらに、局所のかゆみに対しては市販の抗ヒスタミン作用のある塗り薬を使用することもできます。一般的なかゆみ止めとして市販されているものの中には抗ヒスタミン薬が配合されているものも多いので、そうした市販薬を試してみると良いでしょう。

皮膚科を受診する

市販薬で効果が得られない場合は、皮膚科を受診してみると良いでしょう。本当に温熱性湿疹なのかという診察から始まり、必要に応じて薬を適切に処方してくれるでしょう。

場合によってはステロイドの外用薬を使用することもありますが、蕁麻疹であれば稀です。抗ヒスタミン薬が効果的ですから、ほとんどの場合は抗ヒスタミン薬の処方が行われます。

郷正憲

徳島赤十字病院 麻酔科 郷正憲 医師 麻酔の中でも特に術後鎮痛を専門とし臨床研究を行う。医学教育に取り組み、一環として心肺蘇生の講習会のインストラクターからディレクターまで経験を積む。 麻酔科標榜医、日本麻酔科学会麻酔科専門医、日本周術期経食道心エコー認定委員会認定試験合格、日本救急医学会ICLSコースディレクター。 本名および「あねふろ」の名前でAmazon Kindleにて電子書籍を出版。COVID-19感染症に関する情報発信などを行う。 「医療に関する情報を多くの方に知っていただきたいと思い、執筆活動を始めました」

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