病院は何科?大人が発症することもある起立性調節障害

お悩み

立ち上がった時にめまいや立ちくらみが起きることはありませんか? それは、もしかしたら起立性調節障害かもしれません。

ここでは、立ちくらみやめまいの原因となり、大人になって発症することもある起立性調節障害について詳しく見ていきましょう。

思春期に多く見られる起立性調節障害とは

起立性調節障害とは、自律神経失調症の症状の一つであり、立ち上がった時にめまいや立ちくらみ、動悸などが起こります。その他にも頭痛や全身倦怠感、腹痛、乗り物酔い、不眠、食欲不振、集中力低下などの症状もみられます。

人の身体は、起立すると重力によって血液が下半身に貯留し、静脈を経て心臓へ戻る血液量が減少して血圧が低下するので、これを防ぐために自律神経系の一つである交感神経が興奮して下半身の血管を収縮させ、心臓へ戻る血液量を増やし、血圧を維持します。

しかし、自律神経の機能が低下した結果、このメカニズムが働かなくなり、血圧が低下して脳血流が減少するために多彩な症状を呈するのです。

起立性調節障害と不登校

起立性調節障害の患者数は不明です。しかし、小学生の約5%、中学生の約10%が起立性調節障害にかかると言われており、思春期前後の子どもに多くみられます。

この時期は身体だけでなく、自律神経系も大きく変化する時期であるためです。また、真面目で、ストレスを溜め込むタイプの子どもがなりやすいと言われており、男子よりも女子の方が症状を抱えている人の割合が多い傾向があります。

起立性調節障害をもつ子どもは午前中に症状が現れやすく、約3〜4割が不登校になっていると言われています。

大人が発症することもある起立性調節障害

起立性調節障害は、一般的に小学校高学年から増え始め、中学校、高校生になるにつれて急増していきます。通常は大人になるにつれて症状は徐々に和らぐ傾向があります。

しかし、子どもの頃に起立性調節障害を発症した人の約4割が、大人になって起立性調節障害を再発していると言われています。

大人の起立性調節障害は、他の病気でないことを確認した後、新起立試験(10分間安静の状態で横になった後に起立し、心拍数や血圧の変化を測定)を行って、以下の4つのどのタイプに当てはまるかを判定します。

起立直後性低血圧

起立直後に血圧低下が起こり、回復に時間がかかるタイプ。起立性調節障害で一番多いタイプ。

体位性頻脈症候群

起立直後の血圧低下はなく、心拍数が異常に増加するタイプ。起立して数分経った後に血圧の低下がみられ、全身倦怠感や頭痛、ふらつきが出る。起立直後性低血圧の次に多く見られるタイプ。

血管迷走神経性失神

起立直後には特に大きな血圧低下は見られないが、起立してしばらくすると突然急激な血圧低下が起こり、顔色不良や失神、立ちくらみを引き起こすタイプ。

遷延性起立性低血圧

起立後は目立った血圧低下はないが、徐々に血圧低下が進み、3〜10分後に失神するタイプ。

起立性調節障害の治療

起立性調節障害の治療は、規則正しい生活を心がけ、循環血液量を増やすため、十分な水分と塩分を摂取します。

心臓へ戻る血液量が増やすために、運動により下半身の筋肉量を増加させ、筋肉ポンプの働きを高めることも有効です。

症状が重い場合や、このような非薬物療法を行なっても改善しない場合には、血圧を上げる薬などを使用することもあります。治療には時間がかかることも多く、気長に治療を行なっていくことが大切です。

大人の起立性調節障害が疑われる症状

症状としては子どもと変わりなく、同様の症状がみられます。

・立ちくらみ、あるいはめまいを起こしやすい
・立っていると気持ちが悪くなる。ひどくなると倒れる
・入浴時あるいは嫌なことを見聞きすると気持ちが悪くなる
・少し動くと動悸あるいは息切れがする
・朝なかなか起きることが困難で、午前中が特に調子が悪い
・顔色が悪い、青白い
・食欲不振
・頭痛
・臍疝痛(へその周囲の腹痛)をときどき訴える
・倦怠感あるいは疲れやすい
・乗り物で酔いやすい

小児心身医学会ガイドラインはこれらの11項目のうち3項目以上であると起立性調節障害の可能性が高く、2症状が該当していても症状が強ければ起立性調節障害の可能性が高いとしています。

自律神経の調節不足をきたすことで、起立時や立位中に血圧が下がり、心臓や脳への血流が不足し、立ちくらみ、めまい、気分不良、重症になると失神を引き起こします。また、腸管への血流が不足することで腹痛も見られます。

この自立神経の調節障害によって血圧が下がると、心臓が通常よりも心拍数を増やし、全身を循環する血流をなんとか維持しようとするため、代償的に動悸・息切れが起こります。

午前中に多く見られるのには理由があります。一般的に、起床に伴い、睡眠中優位に働いていた副交感神経から交感神経へ切り替わります。しかし、起立性調節障害の方の場合は、うまく切り替わらないため、なかなか朝起き上がることができず、午前中は症状が強く、午後になるにつれて改善されていくことが多くなります。

病院は何科を受診するのがいい?

小児であればとりあえず小児科に行って相談して、適切な医療機関を紹介してもらえますが、成人の場合は何科を受診するのがよいでしょうか?

原因がはっきり分かっている場合であれば、それに合った診療科を選ぶことができます。例えば動悸、倦怠感があり、症状の原因が血圧や脈拍の場合は循環器内科、自律神経自体の問題であれば脳神経内科、心理的な問題の場合は心療内科を受診すると良いでしょう。

起立性調節障害かもと思っていても、背景に別の疾患が隠れていることもあります。まずは総合内科や一般内科でみてもらうのも良いでしょう。

いかがでしたでしょうか。昔から朝起きられない、体がだるい、よく失神を起こすといった症状があり、大人になっても続いている人もいると思います。長年悩まされている症状なのでもう慣れてしまっている人もいるかもしれませんが、もしかしたら治療できるものかもしれません。このような症状で悩んでいる方は、一度医療機関に相談してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

関連記事