ストレスも影響する?高プロラクチン血症の原因

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高プロラクチン血症という言葉を聞いたことありますか? プロラクチンが高値となるものですが、ストレスが原因となることがあり、誰もがなる可能性があります。ここでは高プロラクチン血症の症状や原因について詳しく見ていきましょう。

プロラクチンとは

プロラクチンとは、脳にある下垂体前葉で産生されるホルモンです。日内変動のあるホルモンで、睡眠時に上昇し、朝起きた後が一番低くなります。妊娠中や授乳中にたくさん分泌されるため、乳汁分泌ホルモンとも呼ばれるホルモンであり、乳腺の発達や乳汁分泌に関与しています。

高プロラクチン血症の症状

高プロラクチン血症とは、プロラクチンの血中濃度が高い疾患です。妊娠していない状態で血液検査をして、プロラクチンの血中濃度が30ng/mlを超えると高プロラクチン血症と診断されます。

高プロラクチン血症の症状は、生理周期のほかに視力に関係するものなどがあります。以下に高プロラクチン血症の主な症状を示します。

生理周期の乱れ

生理周期は、脳の視床下部や脳の下垂体というところから分泌されるホルモンによって調整されます。その一つにプロラクチンがあります。プロラクチンは卵子のもとになる卵胞の成長を抑制するため、過剰に分泌されると、排卵が遅れたり年に数回しか生理が起こらなかったりするなどの症状が現れます。

無排卵月経

プロラクチンの作用によって卵胞の成長が妨げられると、生理はあるのに排卵がない無排卵月経となる場合があります。無排卵月経には自覚症状がほとんどないため、基礎体温の計測や子どもがなかなかできず婦人科受診をした際に偶然気づかれる場合などがあります。

乳汁分泌

妊娠や出産をしていない状態でもプロラクチンが過剰に分泌されていることによって乳汁の分泌が起こる場合があります。

頭痛、視野障害

脳の下垂体に腫瘍があることによってプロラクチンの分泌が過剰となっている場合には、腫瘍が周囲の脳組織を圧迫することによる頭痛が起こります。頭痛の他にも下垂体にある腫瘍が視神経(視交叉)を圧迫すると視野障害や視野狭窄を認めます。また、脳圧が上昇することによるめまいや吐き気などの症状が現れることもあります。

不妊

高プロラクチン血症によって生理周期が不規則になると、性交渉のタイミングがつかみにくく妊娠しづらくなります。

また、プロラクチンの分泌が過剰になると、卵胞の成長が阻害されるだけでなく、黄体という組織の働きが鈍くなり、黄体機能不全に陥ります。

この黄体には、黄体ホルモンを分泌して受精卵が着床する子宮内膜を厚くしたり、体温を低温期から高温期に切り替えて妊娠の継続を維持したりする働きがあります。

ストレスも影響?高プロラクチン血症の原因

高プロラクチン血症の原因としては次のものが挙げられます。

肉体的・精神的ストレス

プロラクチンの分泌は自律神経の影響を大きく受けています。人間の身体は交感神経と副交感神経の自律神経により調節されています。

ストレスがかかった状態では自律神経が乱れやすく、ホルモンバランスが崩れてしまい、プロラクチンの分泌にも影響を与えることがあります。

普段は正常値であるにもかかわらず、ストレスがかかった際に過剰に分泌される状態を、潜在性高プロラクチン血症と呼びます。潜在的高プロラクチン血症が疑われる場合には、TRHというホルモンを注射して、その前後でのプロラクチン値を調べるホルモン負荷試験を行います。

下垂体腺腫(プロラクチノーマ)

脳下垂体に腫瘍ができ、その腫瘍がプロラクチンを産生する細胞が多く含んでいる場合(プロラクチノーマ)は、正常の数倍ものプロラクチンが分泌されるため、生理周期の乱れや無月経の状態が起こりやすくなります。

また、腫瘍の大きさによっては、生理周期の変化以外にも、上記に挙げているように頭痛や視野障害、嘔気、めまいなどの症状を伴うことがあります。

腫瘍自体は良性であることが多く、MRIで下垂体腺腫が確認され、血液検査でプロラクチンの血中濃度が高いことが確認され、プロラクチノーマと診断された場合は、手術は行いません。

薬物療法が第一選択となり、ドパミン作動薬を内服して、血中プロラクチンを基準範囲内に低下させることで、乳汁漏出や月経異常の軽快、下垂体腫瘍の縮小が期待できます。

甲状腺機能低下症

甲状腺機能が低下して甲状腺ホルモンの分泌が低下すると、甲状腺に対してホルモン分泌を促すホルモン(甲状腺ホルモン放出ホルモン)が脳にある視床下部から過剰に分泌されます。このホルモンはプロラクチンの分泌も促す作用があり、その結果高プロラクチン血症をきたすことになります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)

超音波断層検査において両側卵巣に小卵胞(2〜9mm)が多数みられ、少なくとも片側に10個以上の小卵胞がある場合を多嚢胞性卵胞といいます。日本では生殖年齢女性の約6〜10%にPCOSがあると言われています。

PCOSを発症すると、排卵がスムーズに起こらなくなり、さまざまなホルモン異常を併発します。その一つが高プロラクチン血症です。PCOSにかかっている方の約10〜30%が高プロラクチン血症を併発します。そのため、排卵がうまくいかなくなり、月経不順や不妊症を引き起こします。

薬の副作用

下に示すような薬の副作用で高プロラクチン血症となることもあります。長期間服用することでホルモンバランスが乱れてしまい、高プロラクチン血症となってしまう場合があります。

・抗精神薬:コントミン、セレネース
・抗うつ薬:トフラニール、トリプタノール、パキシル
・胃腸薬・制吐剤:ドグマチール、プリンペラン
・降圧薬:アポプロン、アルドメット
・エストロゲン製剤:経口避妊薬

特に経口避妊薬などは長期服用による高プロラクチン血症などの副作用があるため、安易に使うのは避けましょう。

いかがでしたでしょうか。生理がなかなか来ない、妊娠や出産をしていないのに乳汁分泌がある方は一度婦人科を受診して相談してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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