はちみつは大丈夫?赤ちゃんへの影響と授乳中に注意すべきこと
赤ちゃんははちみつを食べてはいけないということを聞いたことがある方は多いと思います。確かに1歳までは乳児ボツリヌス症を起こす可能性があるため、はちみつを摂取してはなりません。では、授乳中の母親ははちみつを食べても良いのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
目次
赤ちゃんがはちみつは食べてはいけない理由
まずは、赤ちゃんがはちみつを食べてはいけない理由について解説します。はちみつの中にはボツリヌス菌という菌が少量ながら含まれています。大人であれば問題ない量ですが、赤ちゃんにとっては致死的となります。
ボツリヌス菌とは
ボツリヌス菌というのは、嫌気性菌と呼ばれる菌の仲間です。食中毒の原因となる菌ですが、一般的な食中毒とは異なり、腹痛や下痢、嘔吐などの消化器症状を起こさないのが特徴です。
ボツリヌス菌はほとんどの場合、土壌の中に住んでいます。嫌気性菌という仲間と説明しましたが、空気がある環境下では増殖できず、安静にしています。しかし、空気がない土壌の中や、真空パックの中などで増殖をしやすいという特徴を持っているのです。
ボツリヌス菌は普段は芽胞という、繭に包まれた防御態勢の様な状態で存在します。しかし空気がない環境となり活発に活動するようになると、ボツリヌス毒素という毒素を産生するようになります。この毒素は消化管に作用するのではなく、体に吸収されて、神経に作用します。
人が筋肉を動かそうとするとき、脳から筋肉を動かすようにという指令が出た後、神経が伝えます。そして神経が筋肉に接合し、収縮するよう命令が伝えられると筋肉が収縮します。しかし、ボツリヌス毒素が神経に作用すると、その神経から筋肉への伝達がなされなくなります。
最も怖いのが呼吸に関する筋肉です。呼吸に関する筋肉も脳からの指令で動きますから、その指令が届かなくなると収縮できなくなってしまい、呼吸が止まってしまいます。これにより、死亡してしまうケースもあるのです。
ボツリヌス菌自体は熱に弱いため、加熱処理をすれば症状を起こすことはありません。しかし、真空パックしているからと安心してそのまま食事をするような場合には感染してしまう場合があり、注意が必要です。
乳児ボツリヌス症の特徴
ボツリヌス菌が作用すると症状が起こるのは分かりましたが、なぜ特に乳児で問題になるのでしょうか。
前述の通り、はちみつにはボツリヌス菌が少量ながら含まれています。1歳以上ではちみつを摂取したとしても、少量のボツリヌス菌であれば、体の中に入っても腸まで届くと腸内細菌叢によってボツリヌス菌は発芽し毒素を産生するようにはなりません。
しかし、1歳未満、とくに3か月から8か月程度の乳児の場合には、まだ腸内細菌叢が整っておらず、ボツリヌス菌が入ってきたとしても対抗できません。そのため、少量のボツリヌス菌が入ってきたとしてもボツリヌス毒素の産生が始まってしまい、症状が起こってしまうのです。
症状についても、成人のボツリヌス中毒とやや違いがあります。
まずおこってくるのが便秘です。腸内細菌叢のバランスの乱れを反映し、便が出にくくなります。その後、ボツリヌス毒素が全身に回っていった影響から、だんだんと鳴き声が弱くなったり、哺乳力が弱くなったりといった症状が見られるようになってきます。
さらに進行すると、表情が無力なものとなり、筋緊張の低下から手足が動かなくなります。
だんだんと呼吸も弱くなってきますので、この時点で適切に呼吸の補助をする治療を受けないと、突然死に至ってしまうこともあるので注意が必要です。
呼吸の補助を行えば、次第にボツリヌス毒素の影響は消失していき、後遺症を残すことはほとんどありません。
そのため、まずは乳児にははちみつを与えないこと、もし与えてしまって活気がなくなったり哺乳力がなくなったりした場合にはすぐに病院を受診することが大切です。
はちみつを与えてよいのは何歳から?
3か月から8か月程度の乳児に乳児ボツリヌス症が起こりやすいと言われています。そのため、だいたい1歳ぐらいまでははちみつを与えない方がいいと言われています。
1歳を過ぎると、腸内細菌叢のバランスも安定してきますから、少量のボツリヌス菌が入ってきても大丈夫ですので、はちみつを与えることができます。ただし、個人差はありますから少量から開始するのがよいでしょう。
授乳中の母親ははちみつを摂取しても大丈夫
前述の様に、乳児ボツリヌス症はボツリヌス菌が消化管に入ってくることで発症します。
一方で、授乳中の母親がはちみつを摂取したとしても、母乳中にはボツリヌス菌は移行しません。ボツリヌス毒素も移行しませんので、授乳中の母親の摂取には特に制限はありません。
授乳中の食生活で注意したいこと
授乳中ははちみつを摂取しても大丈夫ということですが、それ以外に授乳中の生活で気をつけた方が良いことについて簡単にまとめておきましょう。
まず注意したいのは、母親の体調管理です。母乳に悪影響のある生活習慣は避けた方がよいでしょう。
中でも授乳中に摂取を控えた方がいいものは、母乳に移行する物質です。このような物質は母乳を通して乳児が摂取してしまうことになりますから、乳児にとって危険な物質であれば授乳中は控えなければならないということになります。
出産直後は安静にする
出産直後は、生まれてきた赤ちゃんのために色々なことをしなければならないため、どうしても動かなくてはならないことが増えてきます。しかし、出産直後は、できる限り休むことが大事です。
出産直後というのは、長時間にわたる陣痛や、会陰の傷など、体に様々な疲労とダメージがかかっています。帝王切開であれば腹部に、経膣分娩の場合には会陰切開がされることから、傷口を回復させなければなりません。
また、産後は妊娠で大きくなった子宮が収縮しながら元に戻ろうとする運動もあります。全身の筋肉痛などもあるでしょう。
加えて、産後は自律神経を整える女性ホルモンの分泌量が一気に減少するため、頭痛や冷え、抜け毛、疲労感、めまい、肩こりなどの、いわゆる不定愁訴が多く出ることもあります。
これらのことを認識した上で、出産後はしっかり休むようにしましょう。概ね1か月ぐらいは休んだ方がいいです。この期間は家事や仕事を減らし、体の回復を優先させましょう。
アルコールを控える
授乳中はアルコールを飲まない方が良いです。アルコールは母乳中に分泌されますから、アルコールが体内に残っているときに授乳をしてしまうと乳児にアルコールが移行してしまいます。アルコールの量が多い場合は急性アルコール中毒になってしまう場合があります。
この急性アルコール中毒は、母体では起こらない程度の分量でも乳児にとっては命に関わるほどの分量となる場合があります。乳児は元々小さい体ですから、少量のアルコールでも体に取っては非常に多い分量になってしまうという側面もあります。
また、アルコールが体内に入った場合には肝臓で代謝され無毒化されますが、乳児は肝臓が未発達ですからこの分解がなかなかなされず、有毒なアセトアルデヒドが体内に蓄積し、全身状態が急激に悪化する可能性があるのです。
そのため、授乳中はアルコールを一切飲まないか、飲むにしても少量にして飲酒後は少なくとも3時間以上経過し体内からアルコールがなくなったと思われる時間になってから授乳することが必要になります。
カフェインを摂り過ぎない
カフェインも、母乳に移行してしまう物質です。カフェイン自体が乳児に直接致死的な影響を与えることはほとんどありませんが、カフェインによって寝付きが悪くなったり、そのために情緒不安定になったりといった影響を受けることがあります。
そのため、少なくとも赤ちゃんを寝付かせるようなタイミングの前にはカフェインの摂取は避けた方が無難でしょう。また、分量も少なめを意識したほうが良いです。
どうしてもコーヒーなどが欲しい場合は、カフェインレスのものを選択して飲むと良いでしょう。
タバコ
そもそもタバコは体に悪いものですので、吸ってもいい時期というものはありません。しかしそんな中でも、妊娠中や、授乳中の喫煙は避けなければなりません。
授乳中に喫煙している場合、体の中のホルモンの分泌に変化があることがわかっています。通常、乳首を吸われた場合、プロラクチンというホルモンが分泌されます。このホルモンは、子宮を収縮させて元通りにさせる効果がありますが、このホルモンの分泌が喫煙によって減少するということがわかっています。
また喫煙をしていると、母乳の分泌量も低下すると言われています。さらに、母乳中にはタバコの成分であるニコチンが分泌されます。ニコチンを乳幼児が摂取すると、嘔吐や下痢、脈拍増加、落ち着きがないといった症状が現れてきます。
授乳中は喫煙をしてはいけません。
高脂質の乳製品やお菓子
授乳中は普段に比べてお腹が空きます。というのも、約350kcalも必要なエネルギー量が増加するからです。
しかし、お腹が空いたからと言って、糖質や脂質が多いものを摂取してしまうのはよくありません。特に脂肪分が高いものを摂取すると、乳汁の粘度が高くなり、乳腺が詰まる可能性があります。
ファーストフードやインスタント食品中心の食事は糖質や脂質が多いだけではなく、必要なたんぱく質やミネラル分の不足につながります。できるだけ健康的でバランスの取れた食事を心がけましょう。
薬の使用は医師に相談を
母体が飲んだ薬は、いくらかは母乳中に移行します。ほとんどの薬はそれでも影響がないことが多いですし、そもそも母乳中に移行する量はほとんど無視できるぐらいの量ですから、授乳中でも薬は飲んでも大丈夫なことが多いです。
しかし、一部の薬は、乳児に移行することによって重篤な結果をもたらすこともあります。薬を使用する時には、必ず医師に一度相談してから使用するようにしましょう。