腸炎の症状の特徴は?感染したときの過ごし方と薬による治療
腸炎とは主に小腸などに炎症が生じた状態であり、典型的な症状としては腹部の痛み、下痢、嘔気、嘔吐などが出現します。
腸炎の発症原因は、さまざまな細菌やウイルスによる感染性腸炎ですが、非感染性腸炎として、アレルギーによるもの、服用した薬によるもの、寄生虫によるものなどが存在します。
ここでは腸炎の症状の特徴と治療法について解説します。
目次
急性腸炎とは
急性腸炎には感染性腸炎と非感染性腸炎があります。
感染性腸炎
一般的に急性腸炎と言われるのは感染性腸炎を指しています。
感染性腸炎には、主に細菌性胃腸炎とウイルス性胃腸炎があります。
細菌性胃腸炎の原因となる細菌は数多く存在し、代表例は、腸炎ビブリオ、カンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などが挙げられます。病原性大腸菌のなかでは腸管出血性大腸菌の一種であるO157などは体内で増殖し食中毒を起こすため感染型と分類されています。
また、食品などに付着した細菌が毒素を合成して、その毒素がついた食品を摂取することによって発症する毒素型の腸炎もあり、その代表例が黄色ブドウ球菌です。
一方、ウイルス性胃腸炎の原因となるウイルスには、ノロウイルス、ロタウイルス、サポウイルス、アデノウイルスなどが挙げられます。
ウイルス性腸炎の感染経路としてはウイルスに汚染された飲み物や食べ物を介する場合と、人から人へと感染する場合があり、特にノロウイルスは食中毒のなかでももっとも発症数が多く、秋から冬の時期をピークにして一年中発生する懸念があります。
非感染性腸炎
非感染性腸炎の原因として、アレルギーや薬剤性、寄生虫によるもの、あるいは食べ過ぎや飲み過ぎで胃腸機能障害を引き起こしている場合などが挙げられますが、一般的には感染性腸炎よりも症状は軽度で経過することが多いと考えられます。
薬剤性の影響で腸炎が起こるなかで、もっとも代表的なのが抗生物質やNSAIDsと呼ばれる非ステロイド系鎮痛消炎薬の内服に伴う腸炎です。
アレルギーによるもので多く腸炎を引き起こすケースとしては、卵や牛乳などの食物アレルギーに伴う場合です。
そして、普段の生活で食べ過ぎや飲み過ぎで腸炎が起こるケースとしては、酒類の飲みすぎでおこる場合、あるいは冷たい飲み物や食べ物を摂取し過ぎて胃腸に関連する機能障害を引き起こす場合が想定されます。
急性腸炎の症状の特徴は?
一般的に、医療従事者が「急性腸炎」と呼ぶときには、基本的にはウイルスが原因の感染性腸炎を意味していることが多いです。
ウイルス性の感染性胃腸炎では、原因となるウイルスの病原性によって症状の強さが左右されることが知られていて、例えばノロウイルスの症状の方がロタウイルスの場合よりも通常重度になりやすいと伝えられています。
腸炎の種類や原因、発症者の体質や基礎疾患の有無などによって出現する症状はさまざまですが、一般的には腹痛、下痢、嘔吐などが認められます。
細菌性腸炎では、38℃以上の発熱と嘔吐より下痢が強い傾向があり、時に血便を合併することもある一方で、ウイルス性腸炎の場合には中程度の発熱があり、下痢より嘔吐症状のほうが強く自覚するケースも存在します。
非感染性腸炎の場合は、一般的に感染性腸炎例より症状が軽微であることが多く、発熱することもあまりありませんが、腹痛や下痢を呈する以外に、腸管粘膜の炎症が強い場合には出血が起こり吐血や下血を認めることもあります。
薬による急性腸炎の治療
急性腸炎に対しては、基本的に症状に応じて対症療法を実施することによって対処しながら、自然の免疫力や治癒力によって症状が改善することを期待します。
整腸剤や解熱剤による対症療法
急性腸炎のなかでも、その多くは軽症の感染性腸炎であり、特にウイルス性腸炎が最も多くの割合を占めます。
ウイルス性腸炎や消化不良、水分の摂取過剰による下痢や嘔吐症状を自覚している場合には、通常抗生剤は使用しませんが、嘔吐症状が強い場合は制吐薬を処方する、そして中等度以上の脱水所見があれば必要に応じて輸液を行います。
下痢症状を認める際に、下痢止めを服用すると、細菌が体内に滞留してしまい症状が長引く、あるいは治療期間が長期化すると考えられるため、原則的に下痢止めはあまり使用せずに、整腸薬や乳酸菌製剤などを処方して様子を観察をします。
腸炎の治療で重要なポイントは、悪い病原体を早期に体外に排出することです。下痢症状は人体の防御反応として生じているものですので、下痢止めは使用しないで済むならその方が結果としては早く体調が回復することに繋がります。
腸管で炎症が起きている場合は、同時に食欲不振に陥ることも多く、炎症が小康状態になるまでは無理に食事を摂る必要はありませんが、最低限の糖分や塩分を摂取してスポーツドリンクや経口輸液製品などの水分をいつも以上に摂取するように努めましょう。
腸炎に罹患した際には、脱水対策は大切であり、症状がひどい場合や幼児や高齢者の場合は脱水を事前に予防するため、入院のうえで点滴加療することもあります。
非感染性腸炎の場合には、発症原因となっている薬剤を別に変更する、あるいはアレルギー物質などをできる限り摂取しないように食生活を改善する、そして炎症所見に対しては整腸剤や解熱剤を内服して経過を観察することが多いです。
漢方薬の活用
漢方による治療のなかで、特に下痢や嘔吐症状を呈する腸炎に最も活用されている種類は五苓散(ゴレイサン)です。五苓散は、消化器症状に伴って喉の渇きを自覚している患者例には特に有効的に働きます。
万が一、薬剤効果が乏しい場合や発症して数日経過しても症状が改善しない場合には五苓散に小柴胡湯(ショウサイコトウ)を加えた柴苓湯(サイレイトウ)が役立つこともあります。
脱水所見が重なって、口渇感がなくなり、水様性下痢が出現して手足が冷えてくるようなケースでは、輸液を投与するとともに真武湯(シンブトウ)や人参湯(ニンジントウ)を服用すると効果的と考えられています。
また、腸炎に伴って腹痛や嘔気症状に適する漢方薬として、柴胡桂枝湯(サイコケイシトウ)が挙げられます。この薬は体内の炎症を鎮めながら、胃腸を元気にして体力を補助する役割を発揮する漢方治療薬であり、発熱、腹痛、嘔気を伴う風邪の中期から後期の症状にも一定の効果が期待できると言われています。
柴胡桂枝湯は、小柴胡湯と桂枝湯(ケイシトウ) を合わせた漢方薬であり、薬効の応用がたいへん幅広いことで知られています。中でも、特に腹部の炎症を鎮める作用があり、小児の虚弱体質に対して虚弱を克服する作用が期待されています。
急性腸炎にかかったときの過ごし方
急性腸炎にかかったときに、できるだけ早く回復するための過ごし方を確認しましょう。
水分を摂取する
嘔吐や下痢症状がひどい際には脱水にならないように水分摂取を促すことが重要です。
急性腸炎の治療では、適切な水分補給が非常に重要になります。
糖分と電解質をバランスよく含んだ経口補水液が理想的ですが、スポーツドリンクでも構いませんので、嘔吐しないよう、少量ずつ、こまめに摂取しましょう。
口からの水分摂取ができない場合には、点滴が必要になり、飲水も十分にできない状態であれば病院で点滴を投与することもあります。
しっかり休養をとる
急性腸炎は適切な治療を行えば、1~3日程度で回復します。
嘔吐、下痢、発熱などが見られる場合には、脱水症状にも十分注意しなければなりません。
腸を休ませるため、絶食し安静にした後、治療によって症状が和らいできたら、バナナやおかゆなどから少しずつ食事を再開します。
消化のよい食事をとる
経口での水分補給が問題なくできるようであれば、少しずつ食事を再開できます。
バナナやおかゆ、煮込みうどん、豆腐など、消化のよいものから食べるようにしましょう。プリンやヨーグルトなどでも構いません。
急性腸炎の際に避けるべき食べ物としては、刺激の強いもの、塩分の多いもの、酸味・甘味の強いもの、アルコール、コーヒーなどが挙げられます。
家族への感染を防ぐ
ウイルス、細菌、寄生虫の感染を原因として起こる腸炎の原因としては、ウイルスのなかではノロウイルス、アデノウイルス、ロタウイルスなどがありますし、細菌としてはサルモネラ菌、病原性大腸菌、赤痢菌、コレラ菌、カンピロバクターなどが挙げられます。
これらが、水・食べ物、人、糞便、動物(ペット)などを介して感染して、家族間でも発症することがあります。
ウイルス性でも細菌性でも、家族への感染を防ぐために、手洗いや消毒をこまめに実行し、食事前や調理する際中、トイレをした後などはしっかりと手洗いを行うように心がけましょう。
急性腸炎を罹患した家族の人の便や嘔吐物など汚染処理を実施する場合には換気を十分に行ったうえで、使い捨て手袋やマスクを着用して病原体が舞い上がらないように注意しながら対応しましょう。
ウイルスが原因となる場合はアルコール消毒が無効ですので、次亜塩素酸ナトリウムが含まれた消毒液や市販されている家庭用の漂白剤を希釈したものを使用しましょう。
また、生肉や二枚貝などに付着した細菌やウイルスを口にすることでも急性腸炎を発症するため、生鮮食品はよく加熱してから食べることをお勧めします。細菌は高温多湿の環境では活発に増殖するため食品購入後はすぐに冷蔵庫に入れて適切に保存しましょう。
まとめ
これまで腸炎の症状や薬による治療などを中心に解説してきました。
感染性腸炎は、原因となるウイルスや細菌が、体外に出てしまえば自然に治癒すると考えられるため、特別な治療を必要としないことも多く、基本的には自覚症状に応じた対症療法が行われます。
急性腸炎の症状が長引いたり悪化したりする場合、あるいは脱水所見が重なって不安を感じる際には、適切なタイミングで消化器内科など専門医療機関を受診するように心がけましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。