透明でネバネバの鼻水の原因は?色や粘り気の違いから分かること
花粉症の季節になると鼻水に苦しむ方も多いと思いますが、鼻水が出る疾患は花粉症だけではありません。病気によってさまざまな鼻水が出てきます。鼻水の種類から、どのような病気なのかを推定できるのでしょうか? ここでは鼻水の特徴と病気の関係について解説します。
鼻水が出るメカニズム
鼻の中は湿っている必要があります。
鼻は空気の通り道ですが、そのまま空気が肺に入ってしまうと肺の中が乾燥してしまいます。また冷たい空気を吸い込んでしまうと肺の中が冷えてしまいます。
さらに空気にはホコリをはじめとする異物が含まれ、そのまま肺に入ってしまうと肺炎を起こしてしまう可能性もありますから、なるべくきれいな空気を取り込むようにしなければなりません。
そのため、空気の入り口である鼻の部分で温度を調整し、さらに湿度を付加し、異物を可能な限り除去してから肺に入れるという機能を有しています。
この機能は、多くの体の機能によって達成されていますが、そのうちの1つの機構が鼻水です。
鼻の中の粘膜は少量ずつ粘液が分泌されています。これによって鼻の中の湿度が保たれているほか、異物を吸着する役割を担っています。異物が付着すると粘膜表面の繊毛という細い糸のような構造物が動いて異物を動かすことで鼻から排出しようとします。痰や鼻くそとして固められ排出されるというわけです。
この粘液が多くなったり、性状が変化したりしたものが鼻水になります。異物が正常な分量であれば様子見でかまいませんが、ウイルスなどの病原菌が付着したり、花粉が多く付着したりすると、体は様子見をしているわけにはいきません。必死で排出しようとするために、分泌液の量を増加させます。これが鼻水です。
鼻水は異物を含んでいますし、さらには鼻粘膜周囲の物質も含みます。特に感染症が侵入してきた場合には炎症を起こして対抗しますが、炎症に関わった白血球が含まれて出てくることもあります。このようなさまざまな物質が含まれてきますので、鼻水の性状は原因によって変化してくるのです。
鼻水の原因
では、鼻水が出てくる場合にはどのような病気が考えられるのでしょうか。
風邪
鼻水が出るよくある原因の1つが風邪です。
風邪は、風邪を引き起こすウイルスの感染症です。ウイルスが鼻から侵入してくると、鼻粘膜にウイルスが付着します。すると、ウイルスを排出しようとして鼻水の量が増えてきます。
また、それと同時にウイルスが体内に侵入してしまうと感染が悪化してしまいますから、体は免疫反応を増強します。それに伴って、白血球をはじめとした免疫担当の炎症細胞が多数鼻粘膜に集結します。
鼻粘膜では炎症細胞とウイルスの争いが起こります。死滅したウイルスや、役目を終えた炎症細胞は体にとって異物ですから、体外に排出させなければなりません。この役目を担うのも鼻水になります。
このように、風邪の時の鼻水は、最初はウイルスを排出するためだけの鼻水の増量になりますので、透明な鼻水です。しかしだんだんと炎症細胞が増えてくると、色や状態が変化してきて黄色い鼻水になるのが特徴です。
より感染が強くなり、白血球の量がさらに増えると緑色に近い鼻水になってくるのです。
アレルギー性鼻炎
花粉症をはじめとしたアレルギー性鼻炎の場合にも鼻水は増加します。ホコリなどのアレルギーの原因物質(アレルゲン)が鼻から侵入してくると、それらの物質を洗い流そうと鼻水が増加します。
しかし、体がアレルゲンに対して攻撃をしなくてはならないと思い込んでアレルギー反応を起こしてしまうようになると話しは変わってきます。
侵入してきたアレルゲンを異物として排除しようとして免疫系が活性化し、鼻粘膜に集合します。この刺激が鼻汁を産生する細胞にも影響し、鼻水がどんどん産生されるようになってくるのです。
アレルギー反応は他にもくしゃみや目のかゆみなどの原因にもなり、一般的な花粉症の症状となります。
このとき、感染症に見られるような激しい免疫反応は起こっていませんから、排出される鼻水にはあまり白血球などの免疫細胞は含まれていません。そのため、出てくる鼻水は異物を洗い流すだけで十分ですから、さらさらとした水のような鼻水です。色も透明なことが多いです。
ただし、アレルギー反応が強いと鼻粘膜が肥厚し、鼻汁の流れが悪くなります。このような場合には、停滞した鼻水がだんだんと粘稠性を増し、どろっとした鼻水となることもあります。
副鼻腔炎
副鼻腔炎というのは、副鼻腔に何らかの感染症が感染する事によって起こってくる病気です。一般に蓄膿症と呼ばれています。
まず副鼻腔とは何なのかについてから解説しましょう。副鼻腔は、顔面を構成する頭蓋骨の中にあいた穴のことです。これらの穴は、全て鼻腔と交通しています。鼻という洞窟の奥に開いた広い空間と表現したらよいでしょうか。
人の顔面には複数の副鼻腔があります。副鼻腔がある理由ははっきりとはわかりませんが、鼻の機能を助けるため温度を一定に保つ為に存在しているとか、空気を含むことによって顔面の筋肉の保温に役立つとか、声を出すときに反響を起こして聞こえやすくするためだとかの理由が考えられています。
いずれにしても、鼻と副鼻腔は繋がっていて、副鼻腔の中も湿った空気で満たされています。副鼻腔の中も鼻粘膜と同じような粘膜構造があり、常に粘液で湿っているほか、異物がたまらないように繊毛構造があり、異物が侵入してくるとそれを排出するような運動が行われます。
しかし生まれつき繊毛の動きが悪い場合や、体調が悪くなって繊毛の動きが悪くなった場合、あるいは鼻中隔のゆがみや何らかの理由で鼻粘膜が肥厚して副鼻腔の出入り口が狭くなってしまった場合には、副鼻腔の中に液体が貯留してしまいます。さらに、細菌や真菌が入り込んでしまった状態で排出がうまくいかないようになると、その場所で感染が起こり、副鼻腔炎となります。
副鼻腔炎は、副鼻腔に細菌や真菌が入り込んで体の免疫が活発に活動する事で起こる急性副鼻腔炎と、急性副鼻腔炎が落ち着いた後もじわじわと炎症がくすぶり続けて、副鼻腔の中に液体が貯留し続け粘膜が肥厚してなかなか副鼻腔の中から異物を排出できないような状態となっている慢性副鼻腔炎に分けられます。
急性副鼻腔炎の場合は、活発な炎症を反映して白血球の多いどろっとした白から緑色の鼻水になります。一方で、慢性副鼻腔炎ではさらに色が濃く、粘り気の強い鼻水になります。急性副鼻腔炎であれば細菌を排除すれば改善してくるので抗生剤による治療が行われますが、慢性副鼻腔炎の場合、副鼻腔からの液体が流出しにくいという条件が加わりますので、抗生剤による治療に加えて、その他の薬物治療を行い、それでも不十分となれば手術が行われます。
鼻水の色や粘り気の違いから分かること
上記の様に、さまざまな病気で鼻水が出てくることが分かりました。ここからは鼻水の性状からどのような状態がおこっているのかを考えてみましょう。
サラサラで無色透明の鼻水
さらさらで無色透明の鼻水が出ているときには、鼻水の中に白血球が入っていないことが想定されます。ですので、このような場合にはアレルギー性鼻炎か、ウイルスなどの感染による風邪の初期である事が考えられます。
治療法としては抗アレルギー薬などを使用する事になります。抗アレルギー薬は免疫反応を抑えることで、鼻水が分泌されるのを抑制することを期待します。
ただし、風邪によるものであれば、鼻水の流出にアレルギーの機序は関わっていないか関わっていてもわずかですので、抗アレルギー薬の効果は限定的です。この場合、自分自身の免疫によって感染が落ち着くことで鼻水もおさまってきます。
ネバネバで透明・白っぽい鼻水
粘り気がある鼻水には、白血球や感染性微生物など、何らかのものが含まれているために粘性が上昇している事が考えられます。そのため、このような場合には基本的には何らかの感染の初期を想定します。
副鼻腔炎か一般的な風邪なのかの鑑別はなかなか難しいですが、鼻の横をトントンとたたいてみることである程度鑑別が可能です。痛みがある場合は副鼻腔に炎症がある事が想定されるので、急性副鼻腔炎による鼻水を考えます。一方で痛みがなければ一般的な鼻風邪を考えます。
鼻風邪であればウイルス性である事がほとんどですので、抗生剤の内服は必要ありません。鼻水は細菌や用済みになった免疫細胞が流れ出ている結果ですので、そのまま鼻をよくかんで排出を助けてあげましょう。
急性副鼻腔炎の場合は抗生剤による治療が必要となる場合があるので、耳鼻科の受診が必要になります。
ネバネバで黄色・緑色の鼻水
ネバネバで、さらに色がついてくると感染が本格化し、あるいは長期化している場合が考えられます。このような場合には、特に副鼻腔炎が悪化している可能性が考えられますので、耳鼻科を受診してください。
このように、鼻水の性状からある程度の原因が鑑別でき、適切な治療についても推定ができるようになります。鼻水でお困りの際は参考にしていただければ幸いです。