片方の耳だけが詰まった感じがする原因と耳抜きの方法

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人の話し声や音が聞こえにくい、片方の耳だけ詰まった感じがするという経験はありませんか?

片方の耳だけが詰まった感じがする原因はさまざまです。詳しくみていきましょう。

耳が詰まった感じがする原因

耳が詰まった感じがする原因としては次のものが挙げられます。

突発性難聴

成人がかかる耳の病気の中で最も多いものに突発性難聴があります。突発性難聴とは、突然発症する片耳の高度感音難聴のことです。原因は不明ですが、ウイルス感染や、内耳の血流の循環障害などが原因ではないかと言われています。

50〜60歳代の方に多く、突発性難聴の症状としては、突然発症する一側の高度感音難聴、耳鳴り、耳閉塞感があります。名前の通り、突然発症するのが特徴となります。

難聴の症状が出現したとき、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内にステロイド薬などを内服または点滴するなどの治療を開始すれば、ほとんどの人が完治します。

これは、音を感じる神経である有毛細胞が障害を受けた場合、10日から2週間の間に神経変性が起こってしまうからです。神経変性が起こってしまうと元に戻らず、聴力も戻りません。そのため、放置すると難聴が治らなくなる可能性が高くなります。

3人に1人は完治しますが、3分の1はある程度の改善まで、残りの3分の1は聴力の改善がみられない難治の疾患であるため、早い段階で受診することが重要です。

メニエール病

メニエール病は、内耳を満たしているリンパ液が過剰になって、耳の蝸牛と呼ばれる部分が膨れ上がってしまう内リンパ水腫となることで生じます。これによって、蝸牛や身体の平衡感覚を司る三半規管の機能が乱れて起こるといわれています。メニエール病の場合は数秒などでは終わらず、30分以上続きます。また、耳が詰まった感じや難聴、耳鳴りが同時に引き起こされます。

30〜50歳代の女性に多く、日常生活に支障をきたすほどの回転性のめまい発作が反復します。内耳に内リンパ水腫が起き、内耳神経を圧迫することでめまいや難聴が起こるとされています。

発作時には悪心、耳鳴、難聴、耳閉塞感を伴います。一時的に聴力も回復することは多いですが、同症状が繰り返すことで、低音部より徐々に難聴が進行していきます。

治療には、リンパ液の滞留を防ぐための利尿剤、めまいを抑えるための抗めまい薬、難聴に対するステロイドなどを使った治療が主となります。また、ストレスも発症や悪化と関係があるため、原因を取り除くことやしっかりと休養や睡眠の質を改善することも重要となります。

中耳炎

急性中耳炎や慢性中耳炎で中耳に膿がたまったり、鼓膜に穴が開くと、聴力がやや低下して、耳閉感が出てきます。

また、耳と鼻の奥をつないでいる耳管の機能不全や副鼻腔炎、アデノイド増殖症といった鼻の病気が原因で、鼓室(鼓膜の奥の空間)に滲出液が持続的に溜まる滲出性中耳炎という病気があります。

急性中耳炎とは異なり痛みがほとんどなく、多くは軽度の難聴や違和感、耳閉感を伴いますが、無症状の場合もあります。幼児期、学童期前半に多く、10歳を過ぎると自然に軽快することがほとんどですが、放置すると鼓膜が薄くなり、鼓室の壁と癒着性しまう癒着性中耳炎や、鼓膜が鼓室の奥に陥凹してできる真珠腫性中耳炎になる可能性があります。

治療は抗生剤の内服や粘液調整剤の投与や、耳管から鼓室に空気を送る通気療法が行われます。それでも改善しない場合には、鼓膜を切開して貯留液を吸引除去していきます。

アレルギー反応や喘息などに関わるといわれる白血球の一種である好酸球が多く含まれるにかわ状の液体が中耳内に溜まってしまう好酸球性中耳炎という病気があります。成人の喘息患者に併発することが多く、治療が難しい病気です。

症状としては、粘り気が高く固めの液体が中耳に溜まってしまうことで、耳鳴りや耳閉感をともなう伝音性の難聴を起こします。喘息の発作時に症状は増悪し、発作が軽快すると耳の症状も治まるケースが多いですが、進行して内耳にまで影響がおよび、治療が難しい感音性難聴を引き起こしてしまうことがあります。

耳管開放症・耳管狭窄症

耳と鼻をつなぐ細い管状の通路を耳管と言います。耳管は平常時には閉じた状態を保持し、唾液を飲み込んだりあくびをした際に一時的に開くことで中耳内の気圧を調整するなどの役割を果たしています。

耳管開放症とは、急な体重減少や妊娠、体調不良が原因となって耳管が開いたままになる疾患です。運動や汗をかいたりすると病状が悪化することがあります。耳管が開きっぱなしだと耳管経由で音が伝わって、内側から鼓膜を振動させます。そのため、耳閉感、自分の声・自分の呼吸音が耳に響く、自声強聴・自己呼吸音聴取がみられます。

治療には、生理食塩水を点鼻にて耳管咽頭口を塞ぐ治療、漢方薬などを使用します。症状が強い場合には、自声強調の原因である鼓膜の過振動を抑えるために鼓膜に3Mテープを貼るという治療を行うこともあります。

耳管狭窄症は、風邪やアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、咽頭炎、扁桃炎などの鼻やのどの炎症や飛行機に乗った際の急な気圧変化により鼻の奥にある耳管開口部周囲の炎症が原因となって、耳管が塞がれたり狭くなったりする病気です。

治療としては、原因となっている鼻やのどの炎症に対する治療と、鼻から耳管の入り口まで器具を入れ、直接耳管に空気を送り込む耳管通気を行います。

急性低音障害型感音難聴

低音障害型感音難聴とは、低音だけに対して起こる感音難聴となります。メニエール病と同じように20〜40代の女性に多く発症し、めまいのないメニエール病と表現されることもあります。

蝸牛に内リンパ液が滞留することで起こると言われており、難聴の他、耳閉感、低音の耳鳴りなどの症状を伴います。はっきりとした原因は不明ですが、大きなストレスを感じたり、睡眠不足や疲れ、体調不良などが続く度に何度も起こるようになります。

治療せずとも半日程度で症状が収まることもありますが、症状が2〜3日以上続く場合にはステロイドや、ビタミンB12の内服といった治療を行います。

聴神経腫瘍

脳神経は神経鞘細胞で覆われています。名前の通り鞘の部分です。神経鞘腫は、その鞘の部分が腫瘍になったものです。原発性脳腫瘍の10%程度を占め、聴神経、三叉神経などに主にできます。

聴神経腫瘍とは耳の奥になる小脳橋角部というところにできる良性腫瘍です。聴神経がこの腫瘍に圧迫されて、はじめは軽い耳鳴りなどから始まり、だんだんと腫瘍が大きくなるにしたがって、聴力障害や顔面神経麻痺が起こります。

良性ですが、腫瘍が大きくなって症状をきたしているのであれば、基本的には手術による摘出になります。腫瘍化した神経は、腫瘍の塊によって紙切れのように薄く押しつぶされてしまった状態で腫瘍の表面にはりついています。

この薄くなった神経は非常に弱くて手術操作によるダメージを受けやすくなっています。この薄くなった神経だけを残し、その他の腫瘍を取り除くという手術は高度な摘出技術が必要となってきます。癒着が強くて全摘出できなかった場合や、再発が予測される場合などは、術後にガンマナイフやサイバーナイフといった放射線治療を追加することがあります。

耳抜きの方法

耳抜きは鼓膜に加わる圧力を逃すために行います。耳抜きには、次の3種類の方法があります。

バルサルバ法

最も一般的な耳抜きの方法であり、鼻をつまんで、口を閉じ、鼻をかむようにして空気を送ります。

フレンチェル法

鼻をつまみ、舌根(舌の奥の部分)を持ち上げるだけでできる耳抜きの方法です。この方法が一番耳に優しい耳抜きです。

トインビー法

鼻をつまんでつばを飲み込む方法で、簡単に耳抜きができます。

耳抜きがうまくできない場合は、飴やガムを食べたり、抜きたい方の耳を上にするように首を傾けて耳抜きをすることでうまくいくことがあります。それでも耳抜きがうまくできない場合には、耳管が細くなってしまっている可能性があります。

原因としては上記に挙げたようなものが隠れている場合があります。耳抜きをしても改善しない場合には、一度耳鼻科を受診して詳しく検査をしてみることをお勧めします。

いかがでしたでしょうか。片方の耳がこもった感じになると不快ですよね。片方の耳がこもっても、もう片方の耳で聴くことができるため、様子をみる方で多いです。しかし、耳抜きをしても改善せず、数日その状態が続くようであれば一度医療機関を受診してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

プロフィール

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