胆のうポリープとは?できる原因と種類ごとの特徴
胆のう(たんのう)ポリープとは、胆のうの粘膜から胆のうの内側に発生した隆起のことで、検診や人間ドックなどの腹部超音波検査を行った際に偶然見つかることが多く、その大部分が良性の病変であり、ほとんどがん化することはないと言われています。ここでは胆のうポリープができる原因や胆のうポリープの種類について解説します。
胆のうポリープとは
胆のうポリープの形はキノコのような茎の部分があるものや、茎のないなだらかな盛り上がりのものがあって、茎の部分があるポリープを「有茎性ポリープ」、なだらかな盛り上がりのポリープを「無茎性ポリープ」と呼んでいます。
胆のうポリープは基本的には無症状のまま経過し、胆石症や胆のう炎を合併すると腹痛症状などを自覚します。
健康診断や別の理由で行われた超音波検査などを契機として発見されることが多いですが、まれに悪性の病変が存在するケースもあります。胆のうポリープはほとんどが健康診断や人間ドックの際にエコー検査で偶然見つかり、他の病気のために行ったCT検査やMRI検査でもたまたま発見されることもあります。
健診や人間ドックでの超音波検査の普及に伴って胆のうポリープの発見率は高くなっていて、その頻度は5~10%であり、良性の病変がほとんどです。
ポリープそのものは良性であることが多いですが、悪性の場合もときにあるため、慎重に経過を追うことが必要であるとともに、悪性度が高い場合には、手術治療が必要となることもあります。
胆のうポリープの病変が悪性であり、病気が進行した場合には、黄疸や発熱などの症状が出現します。
がんが疑われるケース
原則として、5mm以下の胆のうポリープ、5mm以上でも有茎性で10mm未満のポリープは「がんの疑いなし」と判断されますが、ごく早期の胆のうがんがこの中に紛れ込んでしまう可能性があるため、放置せず定期的にエコー検査を行うことが重要です。
実際に、胆のうポリープのサイズや形状に変化がないか経過観察して、5mm以下の胆のうポリープが多発している場合は1年ごとのエコー検査を行い、6~9mmの胆のうポリープが指摘されている場合には、最初の検査の3か月~6か月後にエコー検査を行うことが推奨されます。
胆のうにポリープができる原因は?
胆のうポリープのリスク因子としては、肥満、脂質代謝異常、耐糖能異常、胆のう炎などが報告されています。
胆のうポリープができる原因は、これまでの研究でも明確にはわかっていませんが、胆のうポリープが発症する要因として脂質異常症や糖尿病、メタボリックシンドロームなどの生活習慣病が関係していると考えられています。
胆のうポリープの種類
胆のうポリープには次に挙げるような種類があります。
コレステロールポリープ
胆のうポリープのほとんどはコレステロールを主成分とする良性のコレステロールポリープです。
コレストロールポリープは、胆のうポリープの約90%を占める、最も多い良性ポリープのタイプであり、基本的には胆のう内部に多発しやすく、大部分が数mm以内の小さいものであり、大きさが10mm以上となることはほとんどありません。
胆のうポリープの大半はコレステロールを主成分とする良性のコレステロールポリープと言われていて、病変部の大きさは10mm以下で桑の実様の形でポリープに茎があること(有茎性)が特徴的です。
一般的に、コレステロールポリープに伴って強い自覚症状を感じることは少なく、がん化のリスクもないため積極的に治療を行う必要はないと考えられてます。
コレステロールポリープは、大半が胆汁中のコレステロールが胆のう粘膜に付着したものであり、食生活の欧米化が発症原因のひとつとなっている可能性が指摘されています。
腺腫性ポリープ
腺腫性ポリープは、基本的には良性の病変と考えられていますが、一部に胆のうがんの発生源になる関係性が報告されています。
腺腫性ポリープは良性ポリープであり、通常10mm程度の大きさで単発に発生することが多いです。
過形成ポリープ
過形成ポリープとは、胆のうの粘膜表面の細胞が過剰に増殖したタイプのポリープ性病変です。
過形成ポリープは基本的には良性の病変であり、ほとんどが5mm未満の小さいポリープであると言われていて、胆のうポリープ全体のおよそ5%程度が過形成ポリープです。
炎症性ポリープ
炎症性ポリープは、慢性胆のう炎を引き起こしている患者さんなどに発症しやすい粘膜細胞の増殖が原因で発生するタイプであり、基本的には良性です。
胆のうポリープの約1%程度を占めるのが炎症性ポリープであり、その多くは5mm以下の有茎性ポリープです。
ときに、10mm以上のタイプもあり、大きい炎症性ポリープと胆のうがんを明確に見分けることは難しいと言われています。
胆のうがん
胆のうがんは、悪性の胆のうポリープであり、正確に胆のうがんを他の良性ポリープと見分けることは難しいですが、一般的に大きいポリープ、なだらかな盛り上がりの無茎性ポリープ、時間とともにサイズが大きくなるポリープは胆のうがんである可能性が高いです。
特に、胆のうポリープの大きさが20mm以上の場合、80%以上が胆のうがんと認識されていて、ポリープの段階で見つかる場合、比較的早期の病変が多く、迅速に適切な治療を実施することで根治も可能です。
胆のうポリープは、ほとんどの場合、症状が現れることはありませんが、腫瘍性のポリープでがん化して大きくなった胆のうがんの場合には、腹部の鈍痛や体重減少などの症状が出現することもあります。
胆のうがんでは、裾野が広い形(広基性)をしていて、胆のう壁が厚く以前と比較して明らかに病変サイズが大きくなってきたなどの所見が認められた際には、精密検査を実施する必要性が高いと考えられます。
良性のポリープと悪性のポリープの鑑別は、腹部エコー検査やCT、あるいはMRI検査などの画像検査で判明することが多いのですが、一部には鑑別が難しいものもあります。
特に、ポリープのサイズが大きくなってきている場合、あるいは採血検査で腫瘍マーカーが上昇している場合は胆のうがんを前向きに疑って手術で胆のうを摘出することがあります。
まとめ
これまで、胆のうポリープとはどのような病気か、病変ができる原因と種類ごとの特徴などを中心に解説してきました。
胆のうポリープは、胆のうの内面にできる、限局した隆起病変の総称であり、ポリープの大きさやポリープができた場所によって、腹痛などの症状がときにみられますが、ほとんどが無症状で経過することが多いです。
胆のうポリープ自体によって、胆のうの機能に大きな影響を及ぼすことはなく、基本的には良性のものがほとんどで長期間に渡っておとなしい病気ですが、胆のうポリープの中には悪性の胆のうがんが存在することがあります。
したがって、胆のうポリープと診断された場合は、専門の施設で精密検査を受けることをおすすめします。
良性の胆のうポリープと早期胆のうがんを正確に見分けることはとても難しく、検査で「明らかに胆のうがん」と判断できるまで病気が進行すると治療が困難になってしまいます。
そのため、「がんが疑わしい」と判断した場合は、「がん」の診断が確定できなくても、胆のうを手術で切除して、摘出した胆のうそのものを顕微鏡検査で詳しく調べる「診断的治療」が選択されることもあります。
実際に、胆のうポリープを診断して治療方針を決定する場合には、専門的な知識や医療技術が必要ですので、胆のうポリープが疑われたら、速やかに治療経験が豊富な専門医療施設を受診しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。