下の血圧が高い場合と低い場合…考えられるリスクとは?

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血圧を測定した際には、上の血圧と下の血圧が出ます。上の血圧が高いと高血圧なのはわかるけれど、下の血圧が高かったり、低かったりした場合にはどのような意味があるのだろう? そんな疑問を持っている方もいるのではないでしょうか。ここでは下の血圧について詳しく見ていきましょう。

上の血圧と下の血圧

血圧には収縮期血圧と拡張期血圧があります。

収縮期血圧とは

上の血圧を正式には収縮期血圧といいます。収縮期血圧とは、心臓が血液を送り出した時に血管の壁が押される圧力のことです。心臓の近くにある太い血管に向けて血液が勢いよく押し出されるため、壁を押す力も強くなります。収縮期血圧が135mmHg以上の場合に高血圧といわれます。

拡張期血圧とは

下の血圧を正式には拡張期血圧と呼びます。拡張期血圧とは、心臓が太い血管に血液を送り込んでいない状態で血管の壁にかかる圧力のことを指します。上の血圧が135mmHg未満でも、拡張期血圧が85mmHg以上であれば高血圧となります。

下の血圧だけが高い場合

下の血圧、いわゆる心臓が拡張している間も、血液は全身を巡り続けています。その流れが滞ってしまっている状態、すなわち血流が悪くなっている場合に下の血圧が高くなります。

心臓から遠い場所にある手足の細い血管が硬くなると、それだけ血液が詰まりやすくなり、血流が悪くなります。その結果、心臓に近い太い血管が問題なくても、末梢血管が硬くなり血流が悪化することで下の血圧が高くなるのです。

血圧が高いのは高齢者というイメージを持ちがちですが、若年層の二次性高血圧症でも下の血圧だけが高いというのが目立つ場合もあります。

肥満や運動不足、アルコールの過剰摂取、喫煙者などは特に上下ともに血圧が上昇します。しかも若年層でこのような特徴を持つ人は、気づかないうちに末梢血管の動脈硬化が進み、下の血圧だけ高くなってしまいます。

また、更年期を迎えた女性にも同じような症状が見られることがあります。女性ホルモンの一つであるエストロゲンには、血管をしなやかに保ち、拡張させる作用があります。閉経するとともにこのエストロゲンが減少します。エストロゲンが減少することで血管の柔軟性が落ちてしまい、下の血圧が高くなってしまいます。

下の血圧が高い場合のリスク

下の血圧が高くても大丈夫と軽く考えてしまいがちですが、下の血圧だけ高い状態でも高血圧とみなされます。一般的にいわれている高血圧と同様に動脈硬化のリスクがあるため、油断はできません。

血管は本来弾力性に富んでいますが、高血圧によって血管に負担がかかり続けることで、徐々に厚みを増して硬くなり、動脈硬化へとつながっていきます。動脈硬化が起きても自覚症状はなく、気づかないうちに進行し、脳梗塞、脳出血、くも膜下出血、動脈硬化や、狭心症、心筋梗塞、不整脈、心不全、腎硬化症、大動脈瘤などの全身に関わるさまざまな病気を引き起こしてしまいます。

下の血圧が低い場合

下の血圧、いわゆる拡張期血圧が下がるのは、大きな血管が硬くなった場合です。心臓が拡張する時には末梢の動脈が収縮してプールされていた血液を全身の臓器に送り出します。

動脈硬化が起こると、心臓の収縮期に末梢血管が十分に拡張せずにプールできる血液量が減少してしまい、血液が末梢臓器を素通りしてしまいます。その結果、心臓拡張期にはプールされていた血液量が少ない上に、血管が硬くなり収縮性が低下しまうため、血管に加わる圧力が低下し、拡張期の血圧を低下させてしまいます。

理想的な血圧は120台/70台であり、拡張期血圧が60mmHgを下回る場合はある程度動脈硬化が進んでいる可能性があります。しかし、拡張期血圧が60mmHg以下でも、収縮期血圧も低い状態であれば、一旦様子をみてもよいでしょう。

下の血圧が低い場合のリスク

下の血圧が低い場合、動脈硬化が原因であるため、下の血圧が高い場合と同様に脳疾患(脳梗塞、脳出血)、心臓疾患(心筋梗塞、狭心症)、腎臓疾患(腎不全、腎硬化症、尿毒症)、下肢の疾患(閉塞性下肢動脈硬化症、壊疽)、眼の疾患(眼底出血、浮腫)などの異常を起こすリスクがあります。

収縮期血圧が高いまま、拡張期血圧のみが下がる場合は、動脈硬化で血液が溜められない状態になっている可能性があるため、収縮期血圧と拡張期血圧の差が70mmHg以上ある人は要注意です。

リスクを軽減するための生活習慣

動脈硬化を改善し、上に挙げたさまざまなリスクを軽減するには生活習慣の見直しが重要となります。

食生活の見直し

食塩摂取は1日6g未満にしましょう。また、海藻類、野菜類、きのこ類、こんにゃく、大豆製品、玄米、雑穀類などの食物繊維の多い食品を積極的に摂ることで血中コレステロール値を下げることも重要となります。

動脈硬化の原因となる活性酸素を抑えるために、かぼちゃ、いちご、さけ、キウイ、小松菜などのビタミンC、ビタミンEを多く含む食品を積極的に摂りましょう。反対に飽和脂肪酸、コレステロールを多く含む脂肪分が多い肉類(内臓含む)、卵黄、乳製品、加工食品、マヨネーズなどの摂取を控えましょう。

適度な運動

有酸素運動を1日30分程度継続して行うことで善玉コレステロールの増加や中性脂肪の減少が期待できます。

また、運動によりエネルギー消費ができるため、肥満の解消も期待でき、運動により筋肉量が増えることで基礎代謝が上がります。週に3〜4回を目標に継続していきましょう。

禁煙

喫煙は百害あって一利なしです。喫煙によって動脈硬化を発症するリスクが3倍になるともいわれています。自身がタバコを吸っていなくても、近親者が喫煙していれば副流煙の影響を受けます。

いかがでしたでしょうか。上の血圧は気になりますが、意外と下の血圧を気にしない人が多いです。今回は下の血圧に注目しましたが、上の血圧も下の血圧も両方とも大事です。どちらにも着目し、血圧が高い場合は一度医療機関を受診して相談してみましょう。

白水寛理

九州大学病院 脳神経外科 医師   九州大学大学院医学研究院脳神経外科にて脳神経学を研究、高血圧・頭痛・脳卒中など脳に関する疾患に精通。臨床の場でも高血圧、頭痛、脳卒中など脳に関する治療にあたる。 日本脳神経外科学会、日本脳卒中学会、日本小児神経学会、日本てんかん外科学会、日本脳神経血管内治療学会に所属。

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