敗血症の検査方法と、抗菌薬や輸液療法による治療

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敗血症は、何らかの細菌やウイルスに感染することによって全身にさまざまな影響がおよび、心臓、肺など体の重要な臓器の機能が障害される病気です。ここでは敗血症の検査と治療について解説します。

敗血症の検査

敗血症の検査には主に画像診断、血液検査、培養検査があります。

画像診断

敗血症の診療において、その原因となる感染症の診断は重要であり、個々の患者さんにおける病歴や身体所見、画像検査などから感染巣を絞り込む必要があります。

敗血症は全身の臓器にさまざまな影響を与えるため、それぞれの症状に応じてX線(レントゲン検査)、CTやMRIなどの精密な画像検査を用いて各臓器の状態を調べる検査を行うことがあります。

血液検査

敗血症とは本来無菌であるはずの血液中に病原細菌が侵入してしまう感染症であり、血流を介して病原細菌は全身に拡がり、炎症反応を引き起こします。

敗血症の多くは急性の経過をたどり、治療が遅くなると死に至ることもあるため、早期に検査をして診断することが極めて重要になります。

敗血症など体内の炎症を調べる臨床検査は主に血液中の白血球数、CRP(C反応性蛋白)、プロカルシトニン濃度などの項目が診療に利用されています。白血球数やCRP、プロカルシトニン濃度を測定することで炎症の有無や程度を知ることができます。
血液検査では、体内の炎症の程度、腎機能、肝機能などを調べることが可能となり、特に敗血症の症例では血液中の細胞である白血球が増加、あるいは減少するのが特徴です。

また、診断のためだけではなく、血液検査を実施することによって重症度を評価することもできるため、敗血症を発症した場合は治療効果を判定するためにも繰り返し血液検査を行います。

培養検査

感染症の特定において最も重要な検査は、血液培養検査(血液中から菌を検出する検査)です。

血液の培養検査とは、血液を採取して血液中に細菌が潜んでいるか、潜んでいる場合はどのような種類の細菌なのか調べる検査です。

敗血症では本来は無菌状態であるはずの血液に細菌が入り込んでいる場合が多く、敗血症を引き起こしている細菌の種類を特定することで適切な抗菌薬の選択をすることが可能になります。

敗血症は、肺炎であれ尿路感染症であれ、全身に細菌やウイルスが広がっている可能性が高くなりますし、特に敗血症ショックの重篤な状態になると、血液培養の陽性率が50%を超えると言われています。

血液から感染源を調べることによって、どんな細菌や真菌が体内に入っているかがわかるので、血液培養検査をすることが敗血症の診断のポイントになります。
感染症の原因菌や治療に使用すべき薬剤(抗菌薬)を知るために実施するのが血液培養であり、血液培養は採血した血液中に存在する菌を育てて、検出する検査です。
検出した細菌を明らかにすることは、感染症の全体像を知る手がかりになるだけでなく、治療に有効な抗菌薬を選択するための検査に進めることができます。

血液培養を実施するタイミング

通常、血液培養を実施するタイミングは、38℃以上の発熱や36℃以下の低体温を認める場合、患者さんが悪寒戦慄や意識障害といった重症な敗血症症状を認める場合、あるいは細菌を攻撃する好中球という白血球が顕著に増加している場合があげられます。

血液培養検査をする前に抗菌薬を先に投与してしまうと、場合によっては細菌が死滅して発育が抑制されるなどの理由で原因となる病原菌を捕まえることが困難になるので、抗菌薬を投与する前に血液培養の採血を実施することが重要です。

実際に血液培養を行う際には、培養液の入ったボトルを使用し、培養ボトルは酸素を含むボトル(好気ボトル)と含まないボトル(嫌気ボトル)それぞれ2本をセットで実施する事が多く、培養ボトル1本あたり約10mLの血液採取が必要です。

敗血症の治療

敗血症の治療としては、抗菌薬による治療や輸液療法などがあります。

抗菌薬による治療

敗血症の治療は、根本的な原因となっている感染症に対する治療と全身の状態を改善するための治療の二本立てで行っていくのが原則です。

感染症の根本的な治療としては、速やかに病原体に適した抗微生物薬(基本的には抗菌薬)の投与を行うことが重要です。

また、重大な感染症の場合は感染によってダメージを受けた部位や感染巣を直接的に取り除くドレナージ手術などが実施されるケースも少なくありません。

感染症そのものの治療には、原因となっている病原体が細菌であれば抗菌薬、ウイルスであれば抗ウイルス薬、真菌であれば抗真菌薬など、感染した微生物に応じて有効な薬物が適用されます。

輸液療法

敗血症を疑った際には、敗血症の処置開始が一時間遅れる度に、救命率が低下するといわれているため、早期に診断をすすめて、迅速に治療介入を行うことが重要になります。

敗血症の診療ガイドラインでは、3時間以内に積極的に行うべき治療内容が定められていて、治療の根本は、十分な輸液と、感染症に対する治療としての抗菌薬の投与であると考えられています。

敗血症の治療では、敗血症そのものの病態が末梢血管の拡張や血管透過性亢進(血管内の水分や栄養が外に漏れ出る状態)を引き起こすことが多いため、生理食塩水や乳酸リンゲル液などの輸液を十分に投与することが必要になります。

その他の治療

敗血症では、有効な抗菌薬を投与して十分な輸液療法を行う以外にも、全身の状態を改善するために血圧を上昇させるための点滴治療、呼吸状態を改善するための酸素投与や人工呼吸器装着などが行われます。

また、腎機能が著しく悪化している場合には人工透析が必要になることもありますし、貧血や血小板の減少など血液の細胞数にも異常をきたしているような場合には輸血治療が必要になります。

敗血症による全身の症状の現れ方は個々のケースによって様々な様式であるため、個々の症状に合った治療を行っていくことが重要です。

病状が重篤で重症敗血症や敗血症性ショックを呈している場合には、昇圧薬と呼ばれる循環作動薬の投与、人工呼吸器の装着、急性血液浄化法、人工心肺装置での管理など特殊で高度な治療を集中治療室で実施することがあります。

多くの敗血症は保存的加療(手術の必要性がなく薬物だけの治療)で治療を行いますが、敗血症の原因が腹腔内膿瘍、消化管穿孔などの場合には緊急手術が必要となることもありす。

まとめ

これまで、敗血症の検査方法と、抗菌薬や輸液療法による治療などを中心に解説してきました。

敗血症とは、感染症によって重篤な臓器障害が引き起こされる状態であり、代表的な感染症としては、肺炎などの呼吸器感染症、腎盂腎炎といった尿路感染症、腹膜炎などが挙げられます。

特に高齢者や新生児、ステロイドや免疫抑制剤などを服用中の患者さんや、悪性腫瘍や糖尿病、肝硬変、自己免疫性疾患といった特定の慢性疾患がある場合など免疫力が低下している人は敗血症に陥るリスクが通常よりも高くなります。

通常の感染症は、喉、鼻、気管、腎盂など病原体の感染が生じた一部の臓器に症状が引き起こされますが、敗血症においては、炎症が全身に広がることで局所的な症状のみではなく、体温の異常な上昇や低下、心拍数の上昇、呼吸数の増加など全身症状が現れます。

敗血症では、全身の主要な臓器機能が低下していき、生命を脅かすような低血圧に陥る敗血症性ショックという重篤な状態に進行していくこともあり、早急に適切な検査や治療を行わなければ命を落とすケースも少なくありません。

敗血症は軽度な感染症から進行することもあるため、特に基礎疾患を有する方や免疫機能が低下している場合にはできるだけ早く専門医療機関を受診することが重要です。

今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。

甲斐沼孟

産業医 甲斐沼孟医師。大阪市立大学(現:大阪公立大学)医学部を卒業後、大阪急性期総合医療センター、大阪労災病院、国立病院機構大阪医療センター、大阪大学医学部付属病院、国家公務員共済組合連合会大手前病院を経て、令和5年4月よりTOTO関西支社健康管理室室長。消化器外科や心臓血管外科領域、地域における救急診療に関する幅広い修練経験を持ち、学会発表や論文執筆など学術活動にも積極的に取り組む。 日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医・指導医、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医、大阪府知事認定難病指定医、大阪府医師会指定学校医、厚生労働省認定臨床研修指導医、日本職業・災害医学会認定労災補償指導医ほか。 「さまざまな病気や健康課題に関する悩みに対して、これまで培ってきた豊富な経験と専門知識を活かして貢献できれば幸いです」

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