脂肪肝の原因と種類…アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝の違い

脂肪肝は放置すると肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと病状が悪化することが知られてます。ここでは脂肪肝の原因や種類、アルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪肝の違いについて見ていきましょう。
脂肪肝とは

肝臓に中性脂肪が貯留した状態を「脂肪肝」と言い、この疾患はメタボリック症候群に合併しやすいことが指摘されており、放置すると肝炎などを引き起こして重症化することが知られています。
一般的に、脂肪肝という病気には飲酒をしすぎる場合に発症するアルコール性、あるいはアルコールを多量に摂取していないけれども引き起こされる非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)に分類されます。
脂肪肝は基本的には無症状のままで経過することが多く、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありません。
脂肪肝の状態を放置すると約1~2割の頻度で肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと病状が悪化するケースも時に散見されます。
脂肪肝が疑われる血液検査の値
脂肪肝は、超音波検査やCTスキャンなどの画像検査と一般的な健診による血液検査をあわせて診断します。
血液検査では、ALT(GPT)、AST(GOT)の値が50~100前後に上昇する場合が多く、y-GTPやコリンエステラーゼなども高くなり、これらの検査項目は健康診断などで行われる一般的な血液検査にも含まれることが多いです。
AST (GOT)の基準値はおおむね7~38IU/Lで、肝細胞でつくられる酵素であり、肝臓や心筋、骨格筋、赤血球などに含まれています。
ALT (GPT)の基準値は、おおむね4~44IU/Lで、肝細胞でつくられる酵素であり、主に肝臓に存在しています。
γ-GTPの基準値は、男性でおおむね80IU/L以下、女性でおおむね30IU/L以下とされていて、たんぱく質を分解する酵素であり、肝臓や膵臓、腎臓などに含まれています。
特に、AST、ALTが高値の場合には、脂肪肝やアルコール性肝炎(アルコール性脂肪肝よりもさらに病状が進んだ肝障害)などの可能性がある一方で、γ-GTPが高値の場合はアルコール性肝障害や肝硬変(肝臓の炎症を修復する際にできるコラーゲンが増加し、肝臓の全体に広がっている状態)の可能性を考えます。
脂肪肝の段階であれば、カロリーコントロール、節酒や禁酒、軽い運動の習慣化など生活習慣の改善で解消することも可能であり、血液検査だけでは病気を発見できない場合もありますので、リスクが高い方は専門医療機関を受診して相談しましょう。
脂肪肝に症状はある?
脂肪肝の自覚症状として、疲労感や肩こりなどの体調不良を感じる場合があります。特に、肥満傾向にあり、普段から倦怠感(だるい、疲れやすい)などの自覚症状がある方は注意が必要です。
また、だるさや疲れやすさだけでなく、頭がぼーっとするといった症状が現れることがあります。
従来、脂肪肝は肝臓に中性脂肪が蓄積するだけで心配のない病気と考えられていましたが、狭心症や心筋梗塞など心疾患の合併率が高いことがわかってきました。
脂肪肝には痛みなどの自覚症状がありませんが、脂肪肝になると全身の血流が悪くなるため、全身の細胞に酸素と栄養分が補給されなくなります。倦怠感や頭がぼーっとするといった症状が出るのはそのためと考えられます。
肝臓は他の臓器と比較しても、症状がでにくい臓器であるとされており、脂肪肝についても、際立った症状が出ないことが多く、病状が進行するまで顕著な症状が出ないことも多いといわれています。
しかし、脂肪肝が悪化して、やがて肝炎を起こして肝硬変に進行すると、右上腹部痛、手足の浮腫所見や体が黄色く染まる黄疸、あるいは腹水貯留などの症状が出現しますし、仮に肝臓への血流が停滞して門脈圧が増えすぎる食道静脈瘤を形成して命にかかわる場合もあります。
脂肪肝の原因

脂肪肝の原因には肥満のほかにも、アルコールの摂りすぎや糖尿病があります。
肥満
生活習慣のなかでも、特に脂肪肝に関して最も重要な発症要因として注目されているのは偏った食生活や運動不足に伴う肥満です。
肥満になると、脂肪をエネルギーに変換する役割を持つインスリンの機能が低下して、体内のさまざまな部位にある脂肪が肝臓に運ばれて、肝臓でも中性脂肪を大量に合成するように促されるために、脂肪肝を発症しやすいと言われています。
また肥満体形の人においては、内臓全体の脂肪量および肝臓における脂肪量は最も密接に関連していると言われています。
肥満や内臓脂肪が原因で脂肪肝に罹患している場合には、適切に減量をして過度な食事を控え、適度な運動習慣を定期的に継続することが重要です。
アルコールの摂りすぎ
アルコールの飲み過ぎによって起こる肝臓の病気はさまざまにありますが、まず起こるのが脂肪肝です。
脂肪肝は肝臓に中性脂肪がたまっている状態のことで、放置すると時に肝硬変や肝炎、肝がんを招くことがあります。
アルコールの代謝に必要な酵素は脂肪酸(中性脂肪の構成成分)でもあり、アルコールの飲み過ぎによってアルコール代謝に使われる酵素が多くなるとアルコールの代謝や分解が優先される結果、中性脂肪の分解が抑制されてしまう状態になります。
そうすると、余った脂肪酸は中性脂肪の合成に使われるようになり、肝臓に中性脂肪が蓄積されてしまうことになります。
また、アルコールは肝臓にある酵素によってアセトアルデヒドに分解されますが、この酵素は中性脂肪の分解などに関わる酵素のはたらきを抑制するという点からも、アルコールの飲み過ぎによって、脂肪肝を招くと考えられます。
糖尿病
不規則な生活習慣によって引き起こされる2型糖尿病において、膵臓からインスリンというホルモンが分泌されているにもかかわらず、インスリンの効きが悪くなってインスリン抵抗性がある場合が見受けられます。
その際には、肝臓内の糖の量が増えて、血液中の糖を肝臓に取り込むことができなくなり、血液中の糖の量がコントロールできなくなりますし、過食や運動不足などによって食事で過剰に摂取した脂肪が肝臓に蓄積されます。
2型糖尿病では、インスリン抵抗性があると、肝臓で中性脂肪をたくさん作るように促進されて、食事で過剰に摂取した糖分が中性脂肪に変換されて肝臓にたまって脂肪肝を発症することに繋がります。
脂肪肝の種類

脂肪肝は、血液生化学診断マーカーがなく,ASTやALTの数値が正常である症例も少なくないため、超音波検査などの画像検査で診断され、その病因からアルコール性脂肪肝と非アルコール性脂肪性肝疾患に分類されています。
アルコール性脂肪肝
アルコール性の脂肪肝は過剰な飲酒習慣が継続されることによって発症すると考えられています。
アルコール性脂肪肝は、一般的に5年以上にわたって多量の飲酒(1日あたり純アルコールで約60g、日本酒で3合弱、ビールで中瓶3本程度)を続けると、約9割の人がアルコール性脂肪肝になると指摘されています。
アルコール性脂肪肝体内に入ったアルコールのほとんどは、肝臓で分解・処理されていますが、大量のアルコールを飲み続けると、肝臓内で中性脂肪の合成が高まり、蓄積してアルコール性脂肪肝と進展していきます。
さらに状態を放置して、飲酒を続けると、アルコール性肝炎、肝硬変、肝がんなどに進行することもあります。
非アルコール性脂肪肝
非アルコール性の脂肪肝ではその背景に肥満やメタボリックシンドロームなどが潜在して引き起こされることが通常です。
アルコールではなく過度の食事摂取などが原因で脂肪肝から肝炎や肝硬変に進展するタイプをNASH(非アルコール性脂肪肝)と呼称しており、近年では年々罹患率が増加していることから特に注目を浴びています。
近年の肥満人口の増加に伴って、過剰な栄養摂取による脂肪蓄積を原因とする非アルコール性脂肪肝の患者数が世界的に増加していると言われています。
非アルコール性脂肪性肝疾患は、さらに細かく分けると病状があまり進行しない種類の非アルコール性脂肪肝(NAFL)と、その逆に肝炎へ進展しやすいことが問題視されている非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に分類されます。
肝臓レベルでの炎症や線維化を主徴とする過度のアルコール摂取歴が関与しない脂肪性肝炎 (NASH)については肝硬変や肝細胞癌に進展するタイプであると考えられています。
非アルコール性脂肪肝は無症状のままで経過することが多く、健康診断などで初めて指摘される方も少なくありませんが、本疾患を放置してしまうと約1~2割の頻度で肝炎、肝硬変、肝細胞がんへと病状が悪化するケースも散見されます。
非アルコール性脂肪肝の初期にはほとんど自覚症状はなく、顕著な症状が現れにくい状態ですが、脂肪肝が悪化してやがて肝炎を起こし、肝硬変に進行して初めて食欲不振や倦怠感、右上腹部痛などの有意な症状が出現するようになります。
まとめ
これまで、脂肪肝とはどのような状態か、肥満だけではない肝臓に脂肪が溜まる原因などを中心に解説してきました。
脂肪肝は、肝臓内に中性脂肪を始めとした脂質成分などが異常蓄積する状態であり、通常では日々の生活習慣において栄養バランスの偏った食生活や慢性的な運動不足などが原因で引き起こされます。
健康診断や人間ドックで肝機能の数値の異常が発見されることが多く、初期の段階ではほとんど自覚症状が無いのが特徴的ですが、病状が進行すると倦怠感、腹部膨満感、食欲不振などの有意症状が出現する場合もあります。
この病気に対する基本的な治療策としては、主に生活習慣の改善、食事療法や運動療法になり、定期的に主治医やかかりつけ医と相談しながら肝機能の数値を検査して自分の状態を適切に把握していくことが大切です。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。