尿酸値とは?高尿酸血症が引き起こす病気

尿酸値
お悩み

健康診断が近づくと尿酸の値が気になるという人も多くいらっしゃるでしょう。しかし、そもそも尿酸とは何なのか、そして尿酸が高いとどのようなことが起きるのかをご存じでしょうか? ここでは尿酸値について詳しく解説します。

尿酸値とは

血液検査の項目をみると、血糖値やコレステロール値、赤血球や白血球、肝酵素などさまざまなものがあります。これらについては詳しく知っていなくても、血糖値であれば糖分を取り過ぎれば上昇する、コレステロール値はコレステロールを取り過ぎれば上昇する、と想像がつくでしょう。

一方で、健康診断で必ず検査を行う尿酸ですが、実際に尿酸は何からできていて、どのような働きをしているのかイメージがしにくいと思います。そこで、先ずは尿酸とは何なのかと言うところから解説をしていきましょう。

プリン体とは

尿酸の解説をする前に、プリン体という物質について解説しましょう。ビールなどに多く含まれており、CM等で「プリン体が含まれていないビール」などを見たことがある人も多いでしょう。

プリン体という名前を聞くと何やら甘そうなイメージがありますが、実際にはそう甘くはありません。プリン体というのは、アデニンやグアニンなどさまざまな物質の総称で、これらの物質は生体内で必要不可欠な構造・物質の原料となるのです。

生体内で主な用途としては二つあります。

1つ目は、エネルギーの原料となります。生体内ではブドウ糖を燃やしてエネルギーとしますが、そのまま分解して熱量を発生させても微々たるものです。そこで、糖を代謝することでATPという物質を作成します。ATPは非常にエネルギー源として有用で、体内のエネルギーが必要な部分に送られ、さまざまな体内活動のエネルギーとして活用されます。

このATPは、プリン体にリンが3つ結合した構造をしているのです。つまり、プリン体はエネルギー源の原料となる非常に重要な物質なのです。

2つ目の生体内での用途としては、核酸の構成単位となります。核酸というのはDNAと呼ばれる遺伝情報を保存するための構造で、細胞の核の中に存在します。DNAを構成するのは、アデニン、グアニンにあと2種類を加えた4種類の塩基で、これらの塩基の組み合わせで遺伝情報を記録しているのです。

前述の通り、プリン体はアデニンやグアニンなどを総称したものですから、DNAはプリン体からできていると言う事になります。

つまり、プリン体は生体内でエネルギー源として重要な役割を果たすとともに、遺伝情報を記録するために非常に重要な役割を果たしているのです。

プリン体と尿酸

プリン体は、前述の通りビールなどに含まれるため、食事によって体内に吸収されます。また、一方で必要に応じて肝臓でも生合成されます。

体内にあるプリン体は、核酸やATP等の物質の原料となって利用される一方、核酸やATPは使用されると分解されてまたプリン体が生成されます。

このままだと、プリン体は体の中に入ってくるばっかりで体の外に排出できません。非常に体外へ排出しにくい構造をしているのです。そのため、人の体の中ではプリン体を代謝して、排出しやすい形に分解します。このプリン体の代謝産物が尿酸なのです。

尿酸は排出しやすいと言いましたが、それでもなかなか排出されにくい物質で、プリン体を取り過ぎると体内に蓄積してしまいます。尿酸が血液中で少量であれば、尿酸塩という形で血液中に安定して存在しています。そして余剰分が、全体の7割程度が尿から排出され、残りの3割程度が腸管から排泄されます。

しかし、尿酸値の血中濃度が7.0mg/dLを超えてくると、溶解しきれなくなってしまい、結晶として析出(せきしゅつ)してしまいます。とくに温度が低下したり、体の体液が酸性に傾いたりすると析出しやすくなってしまいます。結晶として析出した尿酸が関節に貯留したり、血管に蓄積したりすることで、さまざまな症状が起こってくるのです。

尿酸値が高い場合と低い場合

前述のように、尿酸はプリン体の代謝産物として存在します。そして、食事などから摂取する一方、腎臓や腸管から排泄されることで体内の量を一定に保っています。

しかし、このバランスが何らかの原因で崩れてしまうと、血中の尿酸濃度が変化してしまいます。増加するのが高尿酸血症、低下するのが低尿酸血症です。

尿酸値が高い「高尿酸血症」とは

高尿酸血症は、血中の尿酸が高くなってしまう病気です。原因としては大きく3つに分かれます。

1つ目が、尿酸産生増加型です。何らかの原因で尿酸を合成する過程が強く働き過ぎてしまい、血中の尿酸値が上昇してしまいます。プリン体を代謝する酵素の異常や、核酸の分解が増加してしまう腫瘍ができる場合、あるいは一部の薬剤によって引き起こされます。

2つ目が、排泄低下型です。遺伝性に腎臓の機能が悪いことで尿酸が排出されない場合もありますし、腎臓への血流量が低下することで腎臓からの排泄が滞る場合、あるいは酸性物質が体内に蓄積してしまう場合などによって発症します。

3つ目が、混合型です。すなわち尿酸産生量も増加しますし、排泄も低下してしまいます。体に負担がかかったことによって起こってくる事が多く、過度に無酸素運動をしたり、アルコールを過剰摂取したり、心不全や呼吸不全など体調が著しく悪い場合におこってきます。

また、肥満の場合も混合型となります。プリン体の摂取量が増加することで血中のプリン体が増加してしまい、排出のために尿酸が多く生成されます。一方で腎臓では体全体への水分貯留を反映し、血流量が低下した結果、尿酸の排泄量が低下してしまうのです。

尿酸値が低い「低尿酸血症」とは

高尿酸血症はよくみる病態ですが、一方で血中尿酸値が2.0mg/dLを下回るのが低尿酸血症となります。この低尿酸血症は比較的少なく、珍しいと言えます。

尿酸値が高いと結晶化してしまい、さまざまな症状を引き起こします。低尿酸血症ではそのように症状が起こってくる事はあまりないのですが、一部の低尿酸血症では、無酸素運動を起こした後に急性腎不全を合併することがあると言われています。原因は分かっていませんが、腎臓での血液の流れが悪くなるためではないかと言われています。

低尿酸血症を指摘された場合は、日常の運動に注意が必要です。

高尿酸血症が引き起こす病気

では、高尿酸血症の場合にはどのような病気が起こり、どのような症状が起こってくるのでしょうか。

痛風・痛風結節

尿酸値が高いと痛風になる、というのはよく聞くことだと思います。

痛風というのは、前述の通り、血液中の尿酸値が上昇してしまい、血中に溶解しきれなくなってしまった尿酸が結晶になり、この結晶が関節内にできてしまう病気です。とくに足の第一中足趾節関節(親指の付け根)におこりやすいです。

症状としては非常に痛いのが特徴です。病気の名前も、風が当たるだけでも痛いという意味から、痛風という名前がつけられたほどです。関節内にある結晶が関節を内側から刺激することで強い痛みが起こる上に、炎症反応によってさらに痛みが増強してしまいます。また、炎症を反映して痛い関節の発赤や腫脹も診られます。

また、痛む関節は一つだけという特徴もあります。同時に複数の関節が痛風によって痛むという事はほとんどありません。

痛風は、特に炎症が起こって痛い時期を痛風発作と呼びます。一方で、放置しても1週間以内に症状は治まり、間欠期と呼ばれる症状がまったく無い時期に移行します。しかし、それでも関節内には尿酸の結晶がとどまり続けますから、しばらくすると再度発作が起こってきます。このように、発作と間欠期を繰り返すのも特徴です。

しかも、さらに無治療で経過すると、関節以外の部分にも尿酸の結晶が蓄積してきます。多いのは足指や手指、耳介などの場所に、痛風結節と呼ばれる塊が触れる様になってきます。痛風結節が骨にできてしまうと、関節が破壊されてしまうこともあります。

また、後述するように種々の臓器障害が起こってくることもあります。

尿路結石

尿路結石の多くは尿中のカルシウムが析出することで結石となって生成されますが、尿酸によってもおこってきます。血中の尿酸濃度が高くなりすぎたり、先天的に尿酸の排泄量が増加したりしている場合には尿中の尿酸濃度が上昇してしまいます。

尿酸自体は酸性の物質ですから、尿に酸性物質が増えることで尿のpHが酸性に傾いてしまいます。すると、前述のように尿酸は酸性の液体の中では析出しやすくなってしまいますから、あっという間に尿管の中で尿酸が析出し、塊となります。この塊が、尿路結石となります。

結石が尿管の広い場所にある間には症状はありませんが、結石が移動して狭い場所にはまり込んだり、尿管壁を刺激したりすると激しい痛みを感じる事が多いです。

腎障害

痛風腎と呼ばれる病気があります。

狭義には、前述のように尿が酸性になった結果、腎臓から尿管が出て行く前の、腎臓の中の尿管の部分で尿酸が結石となってしまい、腎臓の機能が落ちてしまう病態を言います。このように、痛風陣となると最初には尿の濃縮能力が低下し、薄い尿が多く出てきます。すなわち、尿量の上昇として自覚します。

そのまま進行すると、腎臓の機能全体が低下し、体内の電解質異常や貧血など、体のさまざまな異常につながります。

一方で、高尿酸血症になる人はメタボリックシンドロームをきたしていることも多く、高血圧や糖尿病を合併していることも非常に多いです。高血圧や糖尿病も、腎臓に対して悪影響を及ぼしますから、高尿酸血症を持っている人は尿酸血症以外の原因によっても腎臓がダメージを受けてしまいます。

このように、高尿酸血症がある人におこってきた腎障害も、広義の痛風腎と捉え、腎機能がこれ以上悪くならないようにするための治療が行われます。

心血管疾患・脳血管疾患

血液中に尿酸が増加すると、血液中でも尿酸が結晶化します。このような結晶は血流の阻害因子となるほか、結晶が血管壁を傷つけて、動脈硬化の原因になる事も多くあります。

これらの原因によって、突然心臓や脳の血管がつまったり、あるいは破れたりする事があります。つまり、痛風を放置すると心筋梗塞や脳梗塞、脳出血などのリスクが高まると言えるのです。

尿酸値が高くても痛風発作が起こらない事はありますが、血管に対するダメージは蓄積しているとも考えられます。健康診断で尿酸値が高いと指摘された場合は、症状が無くても病院を受診して相談するようにしましょう。

関連記事