肝臓の主な機能とは?肝機能の低下に気づくきっかけと対処法
肝機能が低下すると肝硬変や肝臓癌を発症するリスクが高くなることが知られています。ここでは肝臓の主な機能や、肝機能の低下に気づくきっかけ、肝機能が低下したときの対処法について解説します。
肝臓の主な機能
肝臓の機能にはエネルギー代謝、解毒作用、胆汁の生成と分泌があります。
エネルギー代謝
通常、私たちが摂取したものは胃や腸で吸収されやすい形に変えられた後、肝臓へ送られて、いろいろな成分に加工されると、動脈などの血管を介して必要な部位に配分されていきます。
例えば、食事などから摂取した糖質成分は、グリコーゲンとして肝臓に蓄えられて、夜間にエネルギー源として血中に放出されるとともに、利用されて不要になった老廃物は肝臓へ戻されて胆汁へ排泄されたのち、その老廃物の一部は再吸収されて肝臓で再利用されます。
肝臓は、食べ物から摂取した栄養素を生体が吸収できるように変化させる役割を担っていて、骨髄で必要な赤血球をつくるための葉酸やビタミンB12を貯蔵して、必要なときに送り出す機能も有しています。
また、肝臓ではアミノ酸から、血液に必要なアルブミンとフィブリノゲンという物質を作って、血液の中に送り出す作用も発揮しています。
このように、肝臓は栄養素の生産、リサイクルの中心的な役割を担っていて、胃や腸で分解、吸収された栄養素を利用しやすい物質にして貯蔵し、必要に応じて、それらを分解してエネルギー源を作り出します。
栄養素を生体が利用しやすい形に分解して合成する機能を代謝と呼んでいて、何らかの病気で肝臓の機能が低下するとその代謝の働きも低下して、必要なエネルギーや物質に分解されにくくなり、代謝の異常所見が現れます。
解毒作用
肝臓は、摂取したアルコールや薬剤などの物質や代謝の際に生じた生体にとって有害な物質を、毒性の低い物質に変えて、尿や胆汁中に排泄するという解毒作用を有しています。
有毒な物質の代表例であるアンモニアは、腸管内の細菌によって食物中のタンパク質から合成されますが、アンモニア成分は健康な人では、肝臓の働きによって無毒化されて、尿と共に体外に排泄されます。
しかし、肝機能が低下すると、血液中にアンモニアが増えてしまい、脳が障害されるなど様々な症状が引き起こされる恐れがあります。
肝機能の低下が長期に続く慢性肝炎という状態から、肝硬変に進み肝臓がんが発生する、あるいは肝硬変で肝不全の状態になると、肝臓の解毒機能が働かずに肝性脳症を発症し、意識障害から肝性昏睡となり死亡する場合もあります。
胆汁の生成と分泌
胆汁(たんじゅう)は、肝臓の中で常に分泌されている物質であり、主に脂肪の乳化とタンパク質を分解しやすくする機能を有しています。
胆汁は、脂肪を消化するために必要な液体で、黄緑色をしていて、胆汁は肝細胞から四六時中絶えまなく分泌されています。
肝臓内部の肝細胞においては、脾臓から運搬されてきたビリルビンという黄色い色素を水に溶けやすいように変化させて胆汁の中に排出しています。
これらの働きによって脂肪は腸から吸収されやすくなりますし、胆汁はコレステロールを体外に排出する際にも必要な物質であり、胆汁内部には胆汁酸、ビリルビン、コレステロールが含有されています。
肝臓に障害が起こり胆汁の流れが悪くなると、血液中にビリルビンという色素が増加して、眼球や皮膚が黄色くなる「黄疸」と呼ばれる症状が出現することが知られています。
肝機能の低下に気づくきっかけ
肝臓はその一部が線維化して働けなくなってしまっても、残っている細胞が代わりに機能を受け持つことで、しばらくは自覚症状がほとんど出ないゆえに、肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれています。
健康診断で指摘されたり、病状が進行してから自覚症状が現れたりすることで肝機能の低下に気づくことがあります。
自覚症状
肝臓は初期段階では自覚症状がでないことがほとんどですが、いったん進行すると、全身倦怠感、食欲低下、嘔気、黄疸、皮膚のかゆみ、浮腫、腹水などの症状が出現します。
これらの明確な症状が出現している場合は、肝機能障害がかなり進行している可能性があるため、症状が乏しい段階から定期的に健康診断や人間ドックなどで定期観察することが重要です。
一般的に自覚症状が出にくく、症状の出現に気づいたときには肝臓の機能障害がかなり進行していたという場合も決して珍しくありませんので、健康診断などで肝臓の数値に異常があった場合には放置しないようにしましょう。
健康診断で指摘される
毎年受ける健康診断などで肝臓の数値が悪い、あるいは肝臓の機能が低下していると指摘された人は少なからずいらっしゃるでしょう。
日本人間ドック学会によると、ドック受診者のなかでおよそ3割の方が肝機能の障害や肝臓数値の異常を指摘されていると報告されています。
肝臓の機能障害が引き起こされると、肝臓の細胞内に含まれるALTやASTといった酵素が血液中に漏れ出すために健診の血液検査項目で肝臓数値の異常として認識されることになります。
肝機能障害とは、何らかの原因によって肝臓にある細胞が障害を受けて炎症が起こることで細胞破壊されてしまう病態のことを意味します。
肝臓の機能障害を引き起こす原因は、B型やC型の肝炎ウイルス感染、アルコールの多飲、過剰な脂質の摂取や肥満、そして自己免疫の異常など非常に多岐にわたります。
肝機能が著しく低下する状態が継続されると、肝硬変や肝臓癌を発症するリスクも高くなりますし、顕著な肝障害を呈する場合には食道静脈瘤や肝性脳症など命に関わる重篤な合併症を併存しやすくなることが知られています。
肝機能が低下したときの対処法
肝機能障害や肝機能異常の初期の段階では症状がほとんどありませんが、無治療で状態を放置すると、肝機能障害から慢性肝炎へ進行し、さらには肝硬変や肝細胞癌を患う場合もあります。
いったん肝硬変に至ると元の状態には戻らないため、肝不全や肝臓がんが発生していきますので、肝硬変に罹患する前に早期発見して治療を実践することが重要です。
まずは、健康診断や人間ドックで肝機能の異常や障害を指摘された場合は、自覚的な症状が無いからといって決して放置をしないようにすることが大切です。
肝機能障害に対する治療はその発症原因によって異なり、肝炎であればその8割がウイルス性肝炎と言われていて、ほとんどがB型肝炎、C型肝炎でありますので、肝臓専門医によるインターフェロン治療など抗ウイルス治療が有効的です。
ウイルス性肝炎や自己免疫性肝炎によって肝機能障害をきたしている可能性がある場合には、肝臓専門医を受診することが重要です。
それ以外にも、脂肪肝であれば食事運動療法にて体重の減量を図る、あるいはアルコール性肝障害であればまずは禁酒をして、高蛋白食や野菜などのビタミンを摂取しますし、場合によっては肝庇護薬の内服を実行することもあります。
まとめ
これまで、肝機能の低下に気づくきっかけと改善方法などを中心に解説してきました。
肝臓は右の肋骨に守られるようにして存在するヒトの体で最も大きい臓器であり、体重の約50分の1を占めています。
肝臓の主な働きは3つあって、1つ目は、私たちの体に必要な蛋白の合成・栄養の貯蔵。2つ目は、有害物質の解毒・分解。そして3つ目が、食べ物の消化に必要な胆汁の合成・分泌です。
肝臓の機能障害は、肝臓の様々な病気や過剰な飲酒習慣などによって肝臓の細胞が破壊され続けることでも引き起こされます。
肝臓に不安がある人、自覚症状がある人、あるいは健診などで肝機能の低下を指摘された人は、最寄りの内科クリニックや消化器内科、肝臓専門医などを受診してみることも検討しましょう。
今回の記事が少しでも参考になれば幸いです。